勃起不全(ぼっきふぜん)は、性交のチャンスがあっても、その75%以上で性交・セックスが行えない状態を指します(日本性機能学会より)。

勃起不全は、かつてはインポテンツ(略称:インポ)と呼ばれていましたが、「インポ」は侮辱的な意味を含んでいると取られることもあり、現在ではその正確な表現として勃起不全、またはED(erectile dysfunction)と略称で呼ばれています。

性交・セックスに関する訴えのうち、勃起障害・勃起不全が全体の70〜80%を占め、最も多い病態です 。
また、性行為中に立ち上がれなくなるいわゆる「中折れ」もEDで、勃起不全の中でもっとも多い症状と言われています。

わが国のED患者は、 1000万人以上といわれています。 40歳代で約20%、 50歳代で約40%、 60歳代で約60%と、年齢とともにEDの有病率は上昇しますが、 30歳代でもEDで悩む方が多数います。

2010年現在、日本を始めとする先進国では健康寿命が長い傾向があり、永く性生活を楽しみたいと考える老年者が増えてきたことも、近年EDが注目される要因とも考えられます。
かつては患者が言い出しにくい症状であり、治療も困難でしたが、バイアグラ等の治療薬の出現以降、特にパートナー(妻)の助けも必要とせず、患者単体で治療に当たれることから、患者もより積極的に治療に当たれる体勢が整いつつあります。

 

勃起不全(ED)の原因

EDは原因別に分けると機能性のものと、器質性のものとがあります。

機能性勃起障害

心因性EDとも呼ばれ、主に心因性だと考えられています。新婚EDに象徴されるように最近、若い人に増加がみられます。

特に若い人のEDの原因となっているのが心因性EDといえるでしょう。
 

器質性勃起障害

からだに障害があるもので、陰茎そのものの異常や、脳や脊髄、末しょう神経など、さらには血管の障害や内分泌性の障害などが原因としてあります。


また、器質的障害と機能的障害を合わせもつ混合型障害もあり、代表的なものは加齢や糖尿病によるもので、生活習慣病と密接な関連があります。

つまり、降圧薬・抗うつ薬などの薬剤の内服、喫煙、飲酒、職場などでのストレス、睡眠不足、運動不足など毎日の生活パターンが原因となることが多いのです。

従来、EDの大半が機能的(心因性)EDと考えられていましたが、鑑別診断法の進歩により、現在では約70%が器質的なものと考えられています。
 

また、EDは器質的ED、機能的ED、混合型という分類に分けることもできます。 

器質的勃起不全(ED)

器質的EDは、内分泌疾患、神経疾患あるいは骨盤のがんの手術後などのように、なんらかの身体的な原因によってEDになっているものです。

EDの程度にもよりますが、「朝勃ち」は認められず、自慰を試みても勃起が困難なケースが多く認められます。
 

機能的勃起不全(ED)

機能的EDは、勃起機能を持っているにもかかわらず、EDである場合で、精神的ショックなどの心因性の原因によるものです。

立派に朝勃ちし、自慰では勃起するものの、いざ相手を前にするとダメになるのがこのタイプの典型的な特徴で、初めは勃っていても性交中の「中折れ」やコンドーム装着で萎えるといった症状がみられます。
 

混合型勃起不全(ED)

糖尿病や高齢者のEDのように器質的と機能的の両方の要素を含んでいるものの総称です。従来、EDの大半が機能的(心因性)EDと考えられていましたが、鑑別診断法の進歩により、現在では約70%が器質的なものと考えられています。

基本的な機序は以下の3つです。

  1. 勃起を開始できないこと(心因性、内分泌性、神経性)
  2. 充満できないこと(動脈性)
  3. 海綿体洞の血管網に十分な血液量を蓄積できないこと(静脈閉鎖機能不全)です。

それぞれの原因は相反するものではなく、複数の原因が関与している場合が多くあります。

 

勃起不全(ED)の症状

「ペニスが十分にかたくならない」、「膣内へ挿入できない」、「性行為の途中でグニャグニャになってしまう」「最近性行為に自信がもてない」などにより、満足な性交が行えないというのが特徴です。

性的刺激が脳からの信号により、神経を介して陰茎に伝わると、陰茎海綿体の動脈が大きく拡がり血液が流れ込みます。これが正常に勃起している状態です。

からだになんらかの障害があると、陰茎海綿体の動脈が拡がらないため、十分な量の血液が流れ込まず、前述のような症状をもたらします。

 

勃起不全(ED)の検査方法

まずは器質的障害なのか機能的障害なのかを見分けることが必要です。

自分で調べることのできる手段としてはまず、睡眠中の勃起を知ることです。最も浅い睡眠であるレム期に勃起がおこるといわれていますので、ふと目が覚めたときに勃起がおこっていれば、勃起能力があることになります。このような場合は、器質的障害ではないので、機能的障害であると診断できます。

また、以下のような「国際勃起機能スコア(IIEF5)」を回答するだけでもEDの疑いがあるかどうか判断することができます。

国際勃起機能スコア5(※項目の右の数字が点数)

25点満点中21点以上が正常範囲といわれます。

勃起を持続する自信はどれくらい?

5点:非常に高い
4点:高い
3点:低い
2点:低い
1点:非常に低い

性交前に性的刺激を受けると、どのくらいの頻度で挿入可能な勃起の硬さになる?

5点:毎回
4点:ほぼ毎回(半分より多い)
3点:半々くらい
2点:たまに(半分より少ない)
1点:ほぼなし

性交中、どのくらいの頻度で勃起を維持できる?

5点:毎回
4点:ほぼ毎回(半分より多い)
3点:半々くらい
2点:たまに(半分より少ない)
1点:ほぼなし

性交において最後まで勃起を維持するのは困難ですか?

5点:難しくない
4点:半数以上はできる
3点:半々くらい
2点:かなり困難(半分より少ない)
1点:まず無理

満足に性交できるのはどの程度の頻度ですか?

5点:毎回
4点:ほぼ毎回(半分より多い)
3点:半々くらい
2点:たまに(半分より少ない)
1点:ほぼない

 

病院においては、問診、具体的には既往歴、内服中の薬剤、ライフスタイルなどを聴取します。

また、ED問診票を記入することで、より具体的な症状が明確になり、重症度も判明します。陰茎、陰嚢、睾丸などの触診検査も大切です。

一般の診療では血管を拡張させる作用を持った薬剤を直接陰茎海綿体に注射して、勃起を得られるかで判断します。

もし勃起を得られなければ、陰茎の血管系の異常を考え、特殊な陰茎の画像診断や、陰茎の血圧、血流のテストをして、詳しく調べます。
 

EDは何科にいけばいい? 勃起不全(ED)の治療は内科・泌尿器科のほか専門外来へ

勃起不全(ED)は内科や泌尿器科など身近な病院・クリニックで診察が受けられますが、勃起不全(ED)専門外来を設置している病院・クリニックも存在するため、そういった病院・クリニックはより相談しやすいといえるでしょう。

 

勃起不全(ED)の治療法・治療薬(バイアグラなど) 

治療は原因が多岐にわたるため、原因により変わります。主治医と相談しながら自分に合った治療法を選ぶことが大切です。
 

機能的障害の場合

機能的障害に対しては、まずカウンセリングによる助言、指導が行われます。心理療法、精神療法のほか、薬物治療や勃起を補助する器具を用いて治療を行うこともあります。
 

EDの薬物治療

一般に最初の治療として選択されるのは、PDE5阻害薬(バイアグラ、レビトラ、シアリスなど)と呼ばれる治療薬の処方で、これにより、陰茎内の血管が拡張するため、勃起能力が高められます。

特に、シアリスは有効時間が36時間と長く、食事の影響を受けにくいという長所を持っています。

ただ、これらの薬剤は健康保険が適用されないので、自費で購入しなければなりません。(1,200〜2,200円/錠ほどが相場です)

また、原因がテストステロンという男性ホルモンの低下によるものである場合は、直接テストステロンを補います。

有効率は、EDの原因に応じて異なりますが、一般的には50〜70%といわれています。

高血圧・腎不全の患者でも50〜60%の有効率が報告されています。

ただ、糖尿病の場合は、高齢者、罹病期間が長い患者、血糖コントロール不良例などでは有効率が下がります。

副作用は、25%の患者で発生します。

主な症状としては、顔面の火照り、頭痛、鼻閉感、動悸など。重篤になると、まれに死亡するに至ることもあります。(1998年時点で、日本では5例、米国では16名が死亡しました)
医療用医薬品ですので、必ず医師に相談しながら処方してもらうようにしましょう。

<禁忌>

  • 心筋梗塞・狭心症のために、亜硝酸薬を使用中の患者がPDE5阻害薬を内服すると死亡します。
  • レビトラは、前立腺肥大症の薬(ハルナール、フリバス)と併用できません。
     

薬剤注射法

また、バイアグラなどの医薬品による治療以外に、陰茎海綿体への薬剤注射法(ICI)があります。 

性行為の直前にプロスタグランディン(またはパパベリン)をペニス側面(陰茎海綿体)へ自分で注射するもので、10分後には勃起します。

ただ、厚生労働省の認可がおらず、国内の限られた病院でしかこの治療法を受けることができません。
また、2008年時点で、日本国では自己注射は未承認であります。有効率は疾患によって異なりますが、60〜80%といわれています。

* 陰茎持続勃起症(プリアピズム)などの重篤な合併症が生じる危険性があるので、必ず詳細は主治医と相談しながら治療を進めましょう。

 

器質性障害の場合

器質性障害の場合は、原因別に治療が行われます。

内分泌系の腫瘍の摘出などで回復することもありますが、一般的には治療は困難だといえます。

原因を取り除く治療ができない場合は、外科的手術も選択としてあり得るでしょう。
 

陰茎形成術

陰茎形成術は、勃起するが、ペニスの方向がまっすぐでないため、膣内へスムーズに挿入できない、または疼痛を伴うために性交が継続できない方が対象です。

ペーロニー病はこのような病態を発生させるので、専門医の診断と手術が必要になり、治療の有効率は70〜80%程度となっています。
 

陰茎血管手術

陰茎血管手術は陰茎の動脈が損傷した場合に、別の部位から血管を移植して血行を回復・改善するものですこちらの有効率は50〜70%程度となっています。
 

陰茎プロステーシスの埋込術

陰茎プロステーシスの埋込術は、最終的な治療法となります。

血液で陰茎を充満できないため、シリコンなどでつくられた人工支持棒(プロステーシス)を陰茎海綿体内へ支柱として挿入する方法です。プロステーシスは曲げたり、のばしたりすることができます。

有効率は80%前後ですが、勃起したペニスが冷たい、細い、ごつごつした感じがするなどの不満が聞かれることがあります。固定式のものであれば、場合によっては日帰りでの手術も可能です。

性交は術後4〜6週間後から可能ですが、症状や術後の状態や医師の判断によって2ヵ月後からとなることもあります。

* ただしいずれのものも手術によって体内に異物を挿入することに伴うリスクやその挿入によって陰茎海綿体が破壊されるリスクがあり、海外では使われているものの、日本ではあまり普及していないため、まずは専門医に相談する必要があります。

 

おわりに

勃起不全・勃起障害(ED)は、男性にとっては医療機関の受診も含めてなかなか相談しにくく、一人で悩みがちなものかと思います。

しかし、実際には1000万人以上もの多くの方が悩まれる非常に身近な症状でもあります。

最近は専門医も増え、ネットで案内をしている病院・クリニックも多くあります。こういった病院・クリニックでは日々多くの悩まれる方の相談に乗っていますので、悩まずまずは気軽に相談するところから始めてみると良いでしょう。

 

参考文献

『家庭の医学』【新赤本】第6版 保健同人社
『家庭の医学』オールカラー版【第2版】 成美堂出版
『からだと心の医学事典』法研
『家庭医学大事典』新版ホームメディカ 小学館
『性なる医療』 大西正夫 牧野出版
『EDと不妊治療の最前線』 郡健二郎、菅原信彦 昭和堂
『不妊と男性』 青弓社
『看護のための最新医学講座 第2版』 中山書店
『ハリソン内科学』第4版 MEDSi