痔には痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)などさまざまな種類がありますが、すべてに手術が必要なわけではありません。

痔の手術が必要かどうかは、痔の種類と程度によります。

痔瘻(ぢろう:あな痔) 塗り薬や注射などでは治らず、癌化する可能性があるためすみやかな手術が必要。
痔核(いぼ痔) 日常生活に支障があったり、出血が治らない場合に手術を選択
裂肛(切れ痔) 慢性的になり、裂肛部分が潰瘍状になったり、潰瘍の周囲に肛門ポリープや腫れが生じてきた場合に手術を選択

今回は、痔の中でも必ず手術をおこなう「痔瘻」について詳しく解説します。痔瘻は進行度やタイプごとに手術方法が異なり、術後もケアが必要です。手術費用の目安も確認しましょう。

痔瘻の手術の種類

痔瘻(あな痔)は肛門の周囲に膿がたまりトンネルを作るものです。痔瘻は、基本的には自然治癒せずに癌化する可能性があるため、必ず手術をして治療することになっています。

慎重に検査をした上で診断をおこなうので、診察してすぐに手術というケースはあまりありません。経過を観察してから痔瘻の進行度やタイプに合わせて手術をします。

瘻管切開解放術式:従来の痔瘻手術

これまでは痔瘻の進行度やタイプに関係なく「瘻管切開解放術式」という手術がメインにおこなわれていました。

原発口・原発巣・痔瘻の管のすべてを切り取る方法で、膿の管の屋根にあたる部分(皮膚など)を切り取って、管の下の方から肉を盛り上げるように処置をします。

浅い痔瘻や単純な痔瘻では、確実に早く治す方法として現在もごく一般的におこなわれている手術法ですが、痔瘻の管が深く入り込んでいるようなタイプでは患部と一緒に肛門括約筋も切ってしまうことがあるため、肛門の締りが悪くなるなどの後遺症が大きな問題でした。

最近では後遺症を減らし、術後の生活に影響を与えないようにと、肛門括約筋を残して痔瘻を切る手術(肛門括約筋温存手術)に移行してきています。

痔瘻Ⅰ型・Ⅱ型の手術

【肛門括約筋温存手術(くり抜き法)】

痔瘻の管の入り口と出口を取り除く手術です。まず、皮膚にある膿の出口から外肛門括約筋までの部分で痔瘻の管を取り除きます。そして、原発口から原発巣までの膿の管をくりぬいて切開します。

痔瘻の部分のみをトンネル状にくりぬいて肛門括約筋を傷つけることがないので、肛門機能への後遺症の心配がありません。

肛門括約筋温存手術は、約10日の入院でおこないます。

【シートン法】

Ⅱ型でも痔瘻が進行・複雑化してくり抜き法ができない場合や、再発の危険性がある場合におこなわれます。糸やゴムの弾力を利用して、瘻管を数週間から数か月かけて徐々に切除していく方法です。

最終的には肛門括約筋は切られてしまいますが、時間をかけて切っていくため、切られた側から組織が少しずつ回復していきます。このため肛門括約筋が受けるダメージは軽く済むとされています。

治癒に数か月ほど時間がかかりますが根治性が高く、肛門機能も温存されます。

痔瘻Ⅲ型・Ⅳ型の手術

瘻管が肛門括約筋のより深い部分まで入り込んでいるので、難しく注意が必要な手術となります。

【肛門括約筋温存手術(くり抜き法)+筋肉充填法】

従来は瘻管切開解放術式が多かったのですが、肛門括約筋を傷つけない温存手術が主流になってきました。

Ⅰ型・Ⅱ型と同じように、原発口から原発巣までの膿の管をくりぬいて、病巣を確実に取り除きます。ただし、Ⅲ型・Ⅳ型ではⅠ型・Ⅱ型よりもくり抜いた穴が大きく残るため、お尻など同じ組織から持ってきた筋肉を充填して丁寧に縫い合わせていきます。

縫合に使用する糸は時間とともに溶けて体内に吸収される特殊なものを使用するため、傷が残りません。

Ⅳ型の痔瘻は重症とされ、複数の痔瘻が合併したり、瘻管が絡み合っていることがあります。このため肛門括約筋温存手術+筋肉充填法でもⅢ型より大掛かりで、より慎重におこないます。

入院期間はⅢ型で約2週間、Ⅳ型ではそれ以上が目安です。

痔瘻の手術費用の目安

痔瘻の手術は健康保険・国民健康保険の対象となっています。症状の進行度や手術方法により費用がかわりますが、おおよその目安として

・単純痔瘻の場合・・・3割負担で約2~4万円
・複雑痔瘻の場合・・・3割負担で約3~6万円
・入院1泊あたり(大部屋の場合)・・・8000円~1万円

外来診療費(保険適用)が以下になります。

・初診の場合・・・約1000~1500円
・再診の場合・・・約400円

このほか、検査や薬などの処置が加われば、その分も加算されます。

月の医療費が高額になった場合は、高額療養費制度の申請をすると一部返金される場合があります。

痔瘻の手術後ケア

痛みには痛み止めを

痔瘻は、手術中は麻酔をするので痛くありません。しかし患部を切除しているため麻酔がきれれば痛くなります。

排便時の痛みを軽くするためにも痛み止めが使用されます。飲み薬で効かないときは神経ブロック注射をすることもあります。

肛門に負担をかけない生活を

傷口から血と膿が出てくるため、定期的にガーゼを交換するなどの処置をおこないます。

痛みや出血、膿が出なくなるまでの期間には個人差があり、入院中に良くなる方もいれば数か月続くケースもあります。まずは安静に過ごすことが大切で、肛門に負担をかけない生活を心がけましょう。

痛みの軽減や傷の治りを早めるには座浴や入浴が効果的です。肛門付近の血行をよくするとともに患部を清潔にしますし、温めることで痛みが和らぎます。冬場は湯たんぽなどでお尻付近を温めるのもいいでしょう。

おしり洗浄器の活用

術後はトイレットペーパーの刺激も痛いため排便後のケアがいい加減になりがちですが、患部が不潔だと傷が悪化してしまいます。携帯用のおしり洗浄器を利用し、外出先でもケアしましょう。日頃から肛門に負担をかけない配慮は、痔の予防にも繋がります。 

新型 Viaes(ビアエス) 携帯おしり洗浄器

痔瘻の手術は肛門科で

痔瘻は痔の中でもやっかいなもので、悪化すると治るのにも時間がかかります。よい肛門医を選ぶのは難しいことですが、できれば肛門科を専門にしている医院で手術を受けるのがおすすめです。

また、何科でもいいので日頃からお世話になっているかかりつけ医に、おすすめの肛門医を聞いてみるのもいいでしょう。恥ずかしがらずに軽症のうちに治療を進めてください。

いぼ痔・切れ痔には市販薬

いぼ痔や切れ痔の軽度な症状には市販薬も有効です。自分の症状に合わせて薬を選びましょう。