肛門のかゆみのメカニズム

肛門のかゆみの総称を、医学用語で肛門掻痒症(こうもんそうようしょう)といいます。皮膚を傷つけてしまってかゆみやかぶれがでたり、痔や隠れた病気の症状の中でかゆみが現れることがあります。

夜はかゆみが強くなることも

かゆみは、夜寝る前になると強くなることがあります。それは、交感神経と副交感神経の活動が深く関わっています。

交感神経の活動にはかゆみを抑制する働きがあり、日中はかゆみを感じにくくなっています。そして、夜になると交感神経より副交感神経の働きが活発になり、日中はおさえられていたかゆみがおさえられなくなり、かゆみを感じやすくなります。

また、私たちの体は寝る前にメラトニンと呼ばれる物質が分泌され、その作用によって体温が下がり、眠りにつくことができます。寝る前に、スマートフォン・PC・TVなどの光が目に入ることでメラトニンの分泌はおさえられ、体温が下がりにくくなり眠れなくなることがあります。

これによって交感神経と副交感神経の働きのバランスが崩れ、かゆみの誘発や増強に繋がっていくおそれがあります。

肛門のかゆみの原因1:生活習慣

肛門のかゆみで最も多いのが、生活の動作が原因で引き起こされる皮膚炎です。

肛門周辺の肌はとてもデリケートで、傷つきやすくなっています。ちょっとした刺激を与えてしまうだけで、かぶれてしまうおそれもあり、かゆみやかぶれの原因になります。また、座薬や軟膏によって炎症を起こしてしまい、かゆみやかぶれを引き起こすことがあります。

下着の締め付け

下着の締め付けは、肛門のムレ・擦れに繋がり、かゆみの原因になります。

ゴシゴシ拭く・洗う

排便後、肛門をゴシゴシ拭いてしまう、入浴時にボディタオルでゴシゴシ洗うことで肛門に傷がついたり、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを引き起こすことがあります。

生理用品の使用

生理用品によって、ムレたり擦れたりすることで、かゆみやかぶれを引き起こすことがあります。

食べ物

香辛料・アルコール・カフェインなどが、かゆみの原因になるおそれがあります。香辛料は、排便のときに消化しきれなかった成分が肛門に付着し、かゆみやかぶれを引き起こすおそれがあります。アルコール・カフェインは、かゆみを強めるおそれがあります。

ウォシュレット症候群(温水便座症候群)

ウォシュレット症候群とは、ウォシュレットで肛門を洗いすぎてしまうことでさまざまな支障をきたすことをさします。
ウォシュレットを長時間使用したり、強い水圧で使用したりしていると、肛門の皮膚を傷つけたり、皮膚のバリア機能が低下しかゆみを引き起こすおそれがあります。

肛門のかゆみの原因2:寄生虫・真菌(カビ)

体内や皮膚に常在している、寄生虫や細菌、真菌(カビ)がかゆみの原因になることがあります。

ギョウ虫

ギョウ虫は、人間の大腸や直腸に住み着きます。体内に住み着いたギョウ虫が成虫になると、肛門周辺の皮膚に粘り気のある卵を産みつけます。

粘り気のある卵と、卵を産むために肛門周辺を動き回っているギョウ虫が肛門のかゆみを引き起こします。

ギョウ虫の卵は、食べ物や衣類などに付着し、他の人の口の中に入ることで感染が広がります。また、カーテンなどに卵が付着すると、風に乗って口に入ることもあります。

ギョウ虫による肛門のかゆみは比較的弱いため、大半の人はギョウ虫によるかゆみであることに気がつきません。

カンジダ症

真菌(カビ)の一種であるカンジダが、ストレス・寝不足などで免疫が落ちてくると異常増殖し、かゆみの原因になります。また、排便後の拭き残しなどによって、汚れが付着しているとカンジダが増殖しやすくなり、かゆみの原因に繋がります。

肛門のかゆみの原因3:肛門の病気

肛門のかゆみには、出血をともなうかゆみが現れることがあります。出血をともなったかゆみは、痔・ポリープ・がんが原因であるおそれがあります。

心配な症状がある場合は、速やかに病院を受診してください。

出血をともなった肛門のかゆみの原因には、痔のおそれがあります。痔になると出血のほか、膿(うみ)がでることもあり、皮膚がかぶれてかゆみが現れることがあります。

ポリープ・がん

肛門ポリープは、ポリープとよばれるこりこりした突起物が肛門にできる病気です。

ポリープが大きくなると排便時に肛門の外に出てしまうため、排便後に手で押し込める必要があります。この動作を繰り返すことで、肛門周辺の皮膚を傷つけてしまい、かゆみを引き起こす原因になります。

肛門がん・直腸がんの場合は、自覚症状があまりない病気ですが、出血をともなうかゆみがあります。痔の症状によく似ているため軽視しがちですが、肛門がん・直腸がんのおそれがあるので、検診を受けたり、気になる症状があれば自己判断せずに早めに病院を受診しましょう。

家庭でできる対策方法とは?

肛門のかゆみは、日常の何気ない動作が原因となることがあります。家庭でできる対策を紹介します。

肛門の拭き方

排便後の拭き取り方を見直し、やさしく拭き取るよう心がけましょう。

肛門をゴシゴシ拭き取ると、肛門に傷がつくことがあります。肛門に傷がつくと、かゆみを引き起こすおそれがあります。

肛門の洗い方

洗うときはボディタオルでゴシゴシせず、せっけんの成分を弱酸性などの肌に優しい成分にしたり、せっけんを使用せずにお湯やぬるま湯でやさしく洗うことを心がけましょう。

ボディタオルでゴシゴシ強く洗うことで、肛門に傷がつくことがあります。また、せっけんの成分が刺激になってかぶれ、かゆみを引き起こすおそれがあります。

また、入浴後もタオルで肛門周辺を強く拭かないようにしましょう。

ウォシュレットの使いすぎ

ウォシュレットを使用したい場合は、水圧を弱めに設定し、流す時間も短めにしましょう。

ウォシュレットは強い水流で洗い流すため、肛門に傷がついたり、皮膚のバリア機能が低下するおそれがあります。また、洗浄器の貯水タンク・洗浄ノズルに細菌が増殖しているおそれがあるので、肛門にできた傷に細菌を付着させるおそれがあります。

また、すでにかゆみがある場合は使用を控えることをおすすめします。

食事の見直し

からいものなどの刺激物やアルコール・カフェイン類の摂取は控えましょう。排便時に刺激成分が肛門へ付き、かゆみの原因になるおそれがあります。また、緑黄野菜などを多く摂り、便秘や下痢を起こさないように心がけましょう。

リラクゼーションでかゆみをおさえる

精神的ストレスは免疫力を低下させ、かゆみの症状を引き起こしやすくなります。気分転換に出かけてみたり、好きなことをやってみたり、アロマを使ってリラックスしてみたりと、ストレスを発散しリラックスする時間を増やすことで、かゆみの症状を発症をおさえることにつながります。

おすすめの市販薬

オシリア

軟膏タイプの塗り薬、ベタつきが少なく塗りやすいタイプです。使用は1日3回までにしてください。肛門部にのみ使用に限ります。また小児にも使用ができますが、保護者の指導監督のもと使用してください。

ステロイド剤を液化し、溶かしてから軟膏配合されているため、浸透性が高いのも特徴。溶けにくい成分を、浸透しやすくなっています。ただし、ステロイド剤配合なので、長期使用は控えてください。

子どもの肛門のかゆみに使える市販薬

コーフル

子供の肛門のかゆみに使用できる、軟膏タイプのかゆみ止めです。小児に使用する際は、保護者監修のもと使用してください。

肛門周囲炎以外にも、あせも・湿疹・やけどにも使用できます。

おわりに

肛門のかゆみは日常生活の何気ない行動によって発症し、場合によっては病気が隠れているおそれもあります。かゆいからといって掻きむしってしまうのも、悪化の原因です。しっかりと対策をしていきましょう。

かゆみが強くなったり、おさまらない場合は、近くの病院を受診し医師指導のもと正しく治療を行いましょう。