現在、日本では偏頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛といった慢性頭痛患者が約4000万人いるといわれています。
そのうちの7割以上の方は生活に支障が出るほど辛い症状に悩まされ、いつまた発症するかといった不安を抱えたまま暮らしているのです。
そこで今回は、慢性頭痛を徹底解剖!
偏頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛それぞれの特徴や治療法のほか、日常生活に潜む頭痛を悪化させる要因について詳しくご紹介します。
目次
-
偏頭痛:「動くと悪化」がキーワード
偏頭痛の症状
偏頭痛の前兆
偏頭痛の治療薬 -
緊張型頭痛:「こりの解消で頭痛が軽減」
緊張型頭痛の症状
緊張型頭痛の治療薬と物理療法 -
群発頭痛:「男性に多い激しい頭痛」
群発頭痛の症状
群発頭痛の治療薬 -
日常生活に潜む、頭痛を誘発・悪化させる要因
「赤ワインが片頭痛を悪化させる!」は紀元前からの常識
頭痛薬が原因で頭痛に?!「薬物乱用頭痛」にご注意を - 頭痛の診断と的確な治療に役立つ「頭痛ダイアリー」
- おわりに:頭痛の治療は「頭痛外来」で
1.偏頭痛:「動くと悪化」がキーワード
偏頭痛は、一般的には20代~40代の女性に多くみられる頭痛です。
偏頭痛の直接的な原因は、脳血管の拡張。
脳血管の拡張が、周囲をとりまく三叉神経を刺激した結果、痛みの原因物質・ペプチドが放出されるのです。
これにより、血管が炎症を起こしてさらに拡張。同時に痛みに原因物質が大脳にも伝わることで偏頭痛が起こります。
ただし「何が原因で脳血管が拡張したのか?」という点は、未だにはっきりしていません。
名称から「片側の頭(こめかみ部分など)が痛む」と思われがちですが、それに当てはまるのは約6割にすぎません。
偏頭痛の症状
- ズキンズキンという拍動性の強い痛み
- 歩いたり体を動かすと痛みが増悪する
- 吐き気を伴うことがある
- 光や音に過敏になる
- 2~3割の人に頭痛前に前兆がある
拍動性の痛みで人によっては動けなくなったり、寝込むほど強いことがあります。
前兆がない偏頭痛の場合は痛みが4~72時間続くため、生活に支障が出ることが多いとされています。
偏頭痛の前兆
- 視覚症状:キラキラ、チカチカ、視覚の一部が欠けるなど
- 感覚症状:チクチク感、感覚の麻痺
- 言語障害:言葉が出にくくなる失語性言語障害
このような前兆が15~30分続き、消失したあとに頭痛が発症。
前兆があるタイプの偏頭痛は、60分未満の頭痛発作を繰り返します。
前兆なしの偏頭痛:痛みが4~72時間持続
前兆ありの偏頭痛:60分未満の頭痛発作を繰り返す
偏頭痛の治療薬
偏頭痛は、発作時の重症度によって治療薬を使い分けます。
軽度~中等度:非ステロイド系抗炎症薬(アスピリン、ナプロキセンなど)
中等~重度:トリプタン系薬剤
症状が軽い場合は市販の鎮痛薬でも問題ありませんが、中等以上の場合はトリプタン系薬剤が推奨されています。
トリプタン系薬剤は頭痛を引き起こす脳血管と三叉神経の両方に作用する薬で、血管の拡張や炎症を鎮め、痛みの原因物質が大脳に伝わるのを抑える作用があります。
尚、トリプタン系薬剤の使用にあたっては医師・薬剤師の処方のもと、用法容量を守り、作用時間や副作用などについても知ったうえでお使いください。
漢方薬:
・呉茱萸湯(ごしゅゆとう)体力は中程度以下、手足の冷えと習慣性偏頭痛がある人
・桂枝人参湯(けいしにんじんどう)体力があまりなく胃腸が弱い人の頭痛に
・五苓散料(ごれいさんりょう)体力に関わらず喉が渇いて尿が少ない人の頭痛に
2.緊張型頭痛:「こりの解消で頭痛が軽減」
緊張型頭痛は、身体的・精神的ストレスが原因で頭・首・肩にかけての筋肉が緊張し、血流が悪化することで起こるとされています。
このため首の細い女性や、長時間パソコン作業などをする人に多くみられ、歩いたり体を動かしても頭痛が悪化しないのが、偏頭痛との大きな違いです。
緊張型頭痛の症状
- 圧迫感や締めつけ感のある痛みが30分~7日間持続
- 頭の両側が痛む
- 歩いたり体を動かしても痛みは増悪しない
- 吐き気はない
緊張型頭痛の治療薬と物理療法
緊張型頭痛は、頭から肩にかけての筋肉の緊張が原因のため、こりをほぐすことで頭痛が軽減するケースがほとんどです。
薬は、痛みに対する対症療法としてや、ストレスや筋肉の緊張緩和など予防的措置として使用します。
痛みに対して:非ステロイド系抗炎症薬(アスピリン、ナプロキセンなど)
予防薬:三環系抗うつ剤、抗不安薬、筋弛緩薬
物理療法:温める(温熱療法)、電気で刺激、首の牽引など
物理療法では首から肩、背中などの深部にある筋肉に働きかけて、筋肉の緊張をとり血行を良くすることではりや痛みを軽減させます。
漢方薬:
・苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)立ちくらみ、耳鳴り、動悸もある頭痛に
・釣藤散(ちょうとうさん)慢性頭痛、神経痛、高血圧傾向にある人
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)体力ある方の頭痛、肩こり、のぼせ、めまい
3.群発頭痛:「男性に多い激しい頭痛」
群発頭痛は、疲労やストレスをひたすら溜め込んだ結果、ある日突然発症する激しい頭痛といわれています。
偏頭痛が比較的若い女性に多いのに対し、群発頭痛は20代~40代の男性に多くみられる傾向にあります。
群発頭痛の症状
- 一日のうちほぼ決まった時間に、連日起こる
- ある期間に集中して起こる
- 痛みの持続時間は15~180分
- 頭痛に加えて、片目の周りと目の奥がえぐり取られるような激しい痛みがある
- 頭痛と同時に涙・鼻水・目の充血・まぶたが腫れて垂れ下るなどの症状がみられる
- 発作中はじっとしていられなくなり、頭を殴る、壁を蹴とばす、うとうろ動き回るなどの衝動が強まる
群発頭痛は午前1時~3時といった深夜に発症することが多く、一度発症すると一定の期間に渡り連日起こるため、寝不足に悩まされる人も多いようです。
群発頭痛の治療薬
群発頭痛の発作は突然激烈に始まるため、内服薬では効果が感じられないことが多いのが難しいところです。
皮下注射:スマトリプタン(ペン型の専用注入器で、太ももに注射)
純酸素吸入法:純度100%の酸素を15分吸入する(医療機関にて申し込む)
予防薬:ベラパミル(カルシウム拮抗薬で、心臓や全身に流れる血液の量を調節)
皮下注射と純酸素吸入法は常用性があり、続けて使用していると効果が出にくくなることがあります。
ベラパミルは本来不整脈や狭心症の薬ですが、群発頭痛の頻度を減らす(予防)効果があるとして使用されています。
4.日常生活に潜む、頭痛を誘発・悪化させる要因
偏頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛といった慢性頭痛を抱える患者の約75%は、何らかの要因で頭痛が誘発されたり、悪化するといわれています。
具体的にみてみましょう。
- 精神的因子:ストレス、精神的緊張、疲れ、睡眠
- 内因性因子:月経周期(月経の前~月経期間)
- 環境因子:天候の変化、温度差、におい、頻繁に旅行に行く
- 食事性因子:空腹、アルコール
ストレスは、ストレスがあるときだけではなく、ストレスから解放された時も頭痛が起こりやすく、旅行という楽しみまで人によっては頭痛の原因になってしまいます。
精神状態が自律神経に大きな影響を与えて頭痛を引き起こしているのがわかりますね。
睡眠の場合は、睡眠不足だけでなく「寝過ぎ」が原因で頭痛が起こることもあります。
特に偏頭痛と群発頭痛は自律神経の乱れが大きく関係しているといわれていますので、規則正しい生活を心がけてください。
突如激しい頭痛を引き起こす群発頭痛ではアルコールとタバコは絶対にNGです。
一定期間は禁酒・禁煙生活を!
「赤ワインが偏頭痛を悪化させる!」は紀元前からの常識
これまでの研究で、偏頭痛を誘発・悪化させる食べ物がいくつか具体的にわかってきました。
とくにアルコールの中でも赤ワインは、血管を拡張させる作用があるヒスタミンが多いので要注意!
血流を促進させるアルコール分やポリフェノールも、頭痛に関しては嬉しくない成分なのです。
紀元前の書物にも記されている「ぶどう酒を飲むと頭が痛くなり・・・」の原因は、これらの成分が関係していたんですね。
その他の食べ物ではチーズ、チョコレート、柑橘類、ナッツ類も頭痛の誘発因子。
胎児期における母親の飲酒や喫煙によって子どもの偏頭痛リスクが高まるというデータもあります。
もちろん食べ物から受ける影響には個人差があります。
しかし、片頭痛の慢性化には肥満も関わっていることがわかっていますので、頭痛に悩んでいる方は食生活にも気を配るようにしてください。
頭痛薬が原因で頭痛に?!「薬物乱用頭痛」にご注意を
頭が痛い時に頭痛薬(消炎鎮痛剤)を服用するのは当たり前。
しかし頭痛薬を頻繁に服用したり、長期間にわたって服用し続ければ、頭痛薬によって頭痛が引き起こされてしまう可能性があります。
それが「薬物乱用頭痛」です。
こうなると・・
頭痛があるから薬を服用→薬が原因で次の頭痛が起きる→再び薬を服用
→さらに頭痛が・・・と悪循環から抜け出せなくなってしまいます。
日本頭痛学会によりますと
- 単一成分の鎮痛薬では3ヶ月以上にわたり、月15日以上の服用
- 複合鎮痛薬では月10日以上の服用を続ければ、薬物乱用頭痛をきたす、とされています。
週に3日以上の頻度で起きる頭痛の場合、薬物乱用頭痛の可能性があります。
そうならないためにも、頭痛は市販薬でまぎらすのではなく、専門医の診断・指導のもと症状に合った薬を適量服用することが大切です。
5.頭痛の診断と的確な治療に役立つ「頭痛ダイアリー」
自分の頭痛がどんなタイプなのか、薬は合っているのかなどを知る手がかりになるのが「頭痛ダイアリー」です。
具体的にメモしよう「頭痛ダイアリー」
- 頭痛が起きた日付
- どんなときに頭痛が起きたか(誘発因子)
- 具体的な症状
- 痛みの強さと持続時間
- 服用した薬(薬剤名と服用数、効果の有無など)
- 生活にどの程度支障をきたしたか
医師の問診の際に症状を正しく伝えることは、的確な治療を受けるために重要なことです。
薬は合っているのか、量や服用のタイミングはどうかなど細かく改善し、薬物乱用頭痛を防ぐためにも頭痛ダイアリーを書くことをお勧めします。
6.おわりに:頭痛の治療は「頭痛外来」で
頭痛とひと言でいっても、痛みの強さや頻度は人それぞれです。
中には命にかかわる病気が隠れていることもありますので、あまりに痛みが強かったり頻発する場合は、頭痛外来で専門医の診察を受けてください。
頭痛薬の飲み過ぎを防ぐためにも、医師による診断を受けて、症状に合わせて薬の量を調節するようにしましょう。
(image by photo-ac)
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