はじめに

頭痛に使われる医療費は莫大で、頭痛持ちの人はQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が低く、仕事を休む日数も多いというデータもあります。

これまでの研究により高血圧と頭痛が結び付けられてきましたが、アメリカで行われた実験により、塩分摂取量が頭痛の発生頻度に関係することが明らかになりました。
頭痛予防の新たなアプローチとなることが期待されています。

塩分控えめな食生活で頭痛発生率が低下

今回紹介するのは、ジョンズ・ホプキンス大学医学校付属ウェルチ研究所のLawrence Appel博士らの研究です。

22歳以上で収縮期血圧120-159mmHg・拡張期血圧80-95mmHg(I度の高血圧に該当)の男女412人を無作為にDASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)という食事法と対照群に分け、30日間×3回、それぞれの食事法の枠組のなかで高塩分(ナトリウム摂取量1日あたり150mmol)、中塩分(100mmol)、低塩分(50mmol)の食生活を送ってもらいました。

ナトリウムのモル質量は約23g/molなので、重量でいえばナトリウム摂取量はそれぞれ1日約3.5g・2.3g・1.2gとなります。

DASHは高血圧予防のために開発された食事法で、果物・野菜・低脂肪の乳製品を積極的にとり、食物繊維・カリウム・カルシウム・マグネシウムに富み、飽和脂肪酸とコレステロール、総脂肪分が低いのが特徴です。

対照群の食事は、塩分以外は典型的な欧米型の食生活とのこと。

食事量はそれぞれの被験者の体重維持に必要なエネルギー量に調整され、被験者たちは期間中週5日センターに通い、1食はセンターで食べ、残りの食事を持ち帰って食べ、もし残した場合は残した食べ物を記録してもらいました。

体重や血圧などのデータも採取し、尿検査により決められた食事をとっているかをチェックしたとのことです。

被験者たちには自分がどちらの食事群に割り振られたかも、どの期間が高塩分・中塩分・低塩分にあたるかも知らされず、それぞれ30日のうち最後の7日間の健康状態のアンケート調査(頭痛に関する質問を含む)に答えてもらいました。

最終的に使用可能なデータのとれた390人(DASH198人、対照群192人)について分析した結果、高塩分食の期間と比べ低塩分食では頭痛の発生率が有意に低かったとのこと。

なお、食事法についてはDASHと対照群で頭痛の発生率に有意な差は見られませんでした。

この結果は、血圧とは関係なくナトリウム摂取が頭痛につながるプロセスの存在を示唆するものだとAppel博士らは述べています。

現代人の食生活は塩分過多になりがち

塩(NaCl:塩化ナトリウム)として摂取されるナトリウムは、神経や筋肉の正常な働きや身体の水分調節に欠かせず、人間が生きるうえで不可欠なミネラルです。

不足すると低ナトリウム血症となり、吐き気や頭痛、記憶障害、痙攣、意識混濁などの症状が起きます。放置すると脳細胞に水分が入り頭蓋内圧が上がることにより脳ヘルニアを起こし、最悪の場合肺水腫や呼吸停止により死に至ります。

しかし現代人の生活では、遭難などの特殊な状況以外で塩分不足になることは少なく、普段の食生活では塩分過多になりがちです。

塩分のとりすぎは高血圧や心臓病、脳卒中、腎臓病などのリスクと結び付けられていますが、頭痛とも関係する可能性が高いということで、塩分控えめな食生活のメリットは多そうです。

WHO(世界保健機構)では成人の1日のナトリウム摂取量は87mmol(2000mg)未満とすべきとしています。塩化ナトリウムの質量の約40%がナトリウムなので、これは塩分にすると、1日5g未満ということになります。

また、日本高血圧学会のガイドラインでは1日の塩分摂取量6g未満を推奨しています。

おわりに

健康のためにも、塩分を摂りすぎないことは大切です。

塩分量を減らすのはなかなか難しいかもしれませんが、ラーメン1杯で塩分5gといわれている麺類の汁は残す、インスタント食品やスナック菓子を控える、家で使う醤油を減塩しょうゆにするなどして、少しずつ減塩を意識しましょう。