フェニルケトン尿症(PKU)とは

フェニルケトン尿症(Phenylketonuria:PKU)とは、アミノ酸の一種「フェニルアラニン」を分解できない先天的(遺伝的)な代謝異常疾患です。

フェニルアラニンはタンパク質に含まれている必須アミノ酸です。
フェニルアラニンは、代謝酵素(フェニルアラニン水酸化酵素)の働きによって代謝され、チロシンという非必須アミノ酸に変換されます。
チロシンは神経伝達物質を作るために必要な成分ですが、フェニルケトン尿症は代謝酵素の働きが生まれつき低いため、フェニルアラニンが代謝されずに体内蓄積してしまう疾患です。
血液中のフェニルアラニン濃度が高いと、脳や神経系に損傷を引き起こしてしまいます。

フェニルケトン尿症は、生後4~5日の赤ちゃんに行われる「新生児マススクリーニング検査」の対象疾患の一つになっています。

フェニルケトン尿症の主な症状

◇精神発達の遅滞や知的障害
◇運動発達の遅延
◇けいれんやひきつけ発作
◇発疹
◇皮膚、毛髪、目の色の色素が薄い
◇呼吸や皮膚、尿のカビ臭

新生児は何の症状もなく、数ヶ月以内に徴候があらわれはじめます。
フェニルケトン尿症が出生時に診断されず治療が開始されない場合は、上記のような症状や障害が起こってくるため、早期の診断と治療が大変重要になります。

フェニルケトン尿症の治療法:食事療法

治療法はタンパク質制限の食事療法が基本になります。
フェニルケトン尿症は、フェニルアラニンを代謝することができないため、食事からフェニルアラニンの摂取量を減らして蓄積を防ぐことが重要です。フェニルアラニンはタンパク質に含まれているため、タンパク質の摂取制限を行います。

乳幼児の場合

治療用のフェニルアラニン除去ミルクをベースにして、必要量のフェニルアラニンは母乳や調整粉乳から摂取します。フェニルアラニンの数値により、治療用の除去ミルクと母乳などの割合を調整します。
乳幼児期にきちんとした食事療法ができるかどうかでその後の経過が大きく変わるため、早い時期からの食事療法が大切な事を覚えておきましょう。家族をはじめ主治医や栄養士と共に管理していくことになります。

学童期の場合

乳幼児期が過ぎても、タンパク質を多く含むもの(魚、肉、大豆製品、卵)などはほとんど食べることはできません。
主食である米にもタンパク質は多く含まれているため、低タンパク米などの低たんぱく質食品を使用します。

外食などのメニューの多くは食べることができませんが、外食厳禁にする必要はありません。タンパク質の含量が少ないメニューを選択することで家族との外食も可能です。
万が一、高タンパク質の食品を食べてしまった場合でも、極端に慌てる必要はありません。摂取したタンパク質の量を把握して、その後の食事でタンパク質の摂取量を調整します。
日頃から、どの位のタンパク質やフェニルアラニンを摂取しているか把握する習慣を身につけましょう。子どもに病気のことを理解させることも大切です。

フェニルアラニンの血中濃度が低いまま維持されれば、正常に発育して健常者と同じ生活を送ることができます。

成人の場合

食べられる食品は多くなりますが、低たんぱく食やフェニルアラニン以外のアミノ酸の補給が生涯必要になります。
以前は成人期になればフェニルケトン尿症用の食事を摂らなくても良いと考えられていましたが、食事療法を中断した場合、落ち着きがない、無気力、頭痛などの症状が出ることがあります。
そのため成人になってからも定期的に医療機関に通院し、自分の状態を把握しておくことが重要です。

妊婦のマターナルPKU(マターナルフェニルケトン尿症)は特に注意!

フェニルケトン尿症を治療しないまま大人になって妊娠した場合は、流産しやすく赤ちゃんにも障害が起こる可能性があります。
フェニルケトン尿症の女性の妊娠を「マターナルフェニルケトン尿症」といいます。
マターナルフェニルケトン尿症では、妊娠が分かってから食事療法を行っても出産までに十分な治療ができない場合があるため、妊娠を希望する場合は、妊娠可能な年齢になったら厳しい食事療法が必要になります。

妊娠中にフェニルアラニン濃度が高いと赤ちゃんへの影響は?

◇流産しやすい
◇頭が小さい小頭症(しょうとうしょう)
◇知能障害
◇心臓病

など、胎児へさまざまな影響があります。

妊娠前後の管理は?

妊娠3か月前から食事管理を徹底し、妊娠前からフェニルアラニンの血液中濃度を低く保つ必要があります。

妊娠前後に特に必要な食事療法の注意

◇フェニルアラニン除去ミルクを使用
◇低タンパク食の徹底
◇ビタミン、ミネラルの補給
◇亜鉛や銅を補う
◇アスパルテーム(パルスイート)の入った食品は絶対に口にしない

食事内容の徹底を継続することは容易ではありませんが、赤ちゃんを障害から守るためには、それだけの価値があるものだと考えることが大切になります。

もともとフェニルケトン尿症の場合でも、しっかりとした栄養管理をすれば、健康な赤ちゃんを産むことはできます。主治医や栄養士の力を借りて家族で協力することが大切です。

おわりに

平成27年1月からフェニルケトン尿症を含め、小児の慢性疾患について新たな医療費助成制度が実地されました。(平成28年5月現在)
18歳未満(病気の程度によっては20歳未満)までは医療費の補助を受けることが可能です。詳しくはお住いの市区町村にお問い合わせください。
20歳を超えると一般の健康保険の適応になり、治療費の3割が自己負担となりますが、所得によって高額医療制度もあります。
長期治療が必要な疾患のため、医療費補助制度を活用しながら、根気よく治療を続ける事が大切です。