飛行機内などで長時間同じ姿勢を取り続けることにより発症する「エコノミークラス症候群」。

名前は聞いたことがあっても、どのような病気なのかは知らないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では、国際線など長時間のフライトの際には特に気を付けたい、エコノミークラス症候群の原因と症状・対策法について解説します。

エコノミークラス症候群とは

エコノミークラス症候群は「旅行者血栓症」とも呼ばれます。

長時間同じ姿勢を取り続けることにより静脈血が鬱帯(うったい)し、下肢などの静脈に血栓(血のかたまり)ができる「深部静脈血栓塞栓症(じょうみゃくけっせんそくせんしょう)」、その血栓が肺に詰まってしまうことを「急性肺塞栓症(はいそくせんしょう」といいます。

この2つを合わせて、「静脈血栓塞栓症」旅行者血栓症=エコノミークラス症候群と呼んでいるのです。

肺塞栓症が死を招くことも

「塞栓(そくせん)」とは、血液の流れに乗って運ばれてきた血栓が血管をふさぐことです。

心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞といった動脈が詰まる病気はよく知られていますが、肺の動脈が急に詰まる肺塞栓症はあまり知られていません。

肺塞栓症とは、脚などの深部静脈にできた血栓が血流に乗って肺へ流れ、肺動脈が詰まり、突然死を招く恐れがある恐い病気です。

深部静脈に血栓ができた場合、しびれや皮膚の変色、むくみなどを感じますが無症状のことも多く、血栓が肺に流れて初めて症状が出る場合もあります。

肺塞栓症になると、呼吸困難、胸痛、動悸、発熱、血圧低下、チアノーゼ(皮膚や唇などの粘膜が青紫色になること)などの症状を起こし、最悪の場合、心肺停止により死亡することもあるのです。

ビジネスクラスでも発症に注意!

「エコノミークラス」だけでなく、座席が比較的広いビジネスクラスやファーストクラスでも発症することがあり、「ロングフライト血栓症」に改称する動きもあります。

実際に、サッカー選手の高原直泰氏は2002年にビジネスクラスを利用しての移動で発病し、そのために2006年のドイツワールドカップの際には日本代表で唯一ファーストクラスでの移動となったそうです。

また、飛行機だけでなく長距離の列車移動などでも発病することがあり、長時間同じ姿勢でのデスクワークや、長距離のドライブなどで発症した例もあります。

エコノミークラス症候群の原因

エコノミークラス症候群は高齢者に発症しやすく、人種別ではアフリカ系に多くアジア系に少ないとされていますが、誰にでも発症の可能性があります。

発症する原因はどのようなものでしょうか。リスクの高い人や環境を確認しましょう。

リスクの高い人

リスクが高いのは以下のような人々です。

・栓友病である
・癌や血栓ができた病歴がある
・最近手術を受けている
・経口避妊薬やホルモン補充療法などでエストロゲン製剤を使用している
・妊娠中である
・肥満である
・糖尿病である
・喫煙者である

リスクの高い環境・状況

以下のような環境・状況では血液の粘度が上昇しやすくなり、血栓のリスクが高くなります。

・空気の乾燥
・気圧の変化・低気圧(血中酸素濃度が下がる、体内の水分が蒸散しやすくなるため)
・水分補給の不足
・窓側の席(席を立ちにくくなり、トイレの回数を減らすために水分摂取を避けることにもつながるため)

エコノミークラス症候群の予防法

エコノミークラス症候群を防ぐためにも、6時間以上のフライトでは以下の予防法を実践しましょう。

通路側の座席を指定する

シートベルト着用サインが消えたら、トイレに立つ、新聞や毛布を貰いに行くなど席を立って歩き回る機会をつくりましょう。

水分補給を心がける

飲み物はできるだけ水を頼むようにしましょう。

国際線では機内食とともにビールやワインを飲むのが楽しみという人も多いと思いますが、脱水につながるため高リスクの人は機内でのアルコールは控えた方がよいでしょう。

利尿作用のあるコーヒーや紅茶も同様です。

着圧ソックスに履き替える

むくみ防止用に市販されているひざ下までの着圧ソックスを、機内持ち込みのバッグに入れておきましょう。

靴を脱ぐ

足指を動かせるスリッパに履き替えましょう。靴を脱ぐことで、片足をひざの上に載せたり、座席で体育座りをするなどさまざまな姿勢も取りやすくなります。

ふくらはぎのストレッチ

足首を回したり、つま先をすね側に倒しふくらはぎやアキレス腱を伸ばすストレッチをこまめに行いましょう。足首からひざの方向へふくらはぎをさするマッサージも有効です。

おわりに

乾燥・低い気圧・長時間同じ姿勢をとり続けるなど、飛行機の中は静脈血栓ができやすい状況を満たしています。エコノミークラスに限らず、高リスク群に該当する人は注意が必要です。

また、冬場の乾燥したオフィスでも、飛行機の中のような環境が再現される場合があります。

長時間のデスクワークの際は水分補給を心がけ、時折席を立って歩き回る、ストレッチをする、着圧ソックスを履くなどするとよいでしょう。