はじめに

乗り物酔い」(動揺病)はなりやすい人と平気な人の差が激しく、グループ旅行で一人だけ乗り物酔いしてしまった時など、「足手まとい」のようでいたたまれない気分になってしまう人も多いのではないでしょうか?
また、普段は乗り物酔いしない人でも飛行機の乱気流や船旅での荒天で酔ってしまい、「車酔いする人の気持ちが初めてわかった!」ということもあるようです。

旅行やドライブを最大限に楽しむために、乗り物酔いの原因と対策法をおさえておきましょう!

(by Rebeca Aldama Garcìa on flickr)

人はなぜ乗り物に酔うのか?「仮想毒の排出説」が有力です

乗り物酔いには内耳への刺激が関係していると言われていますが、その仕組みには諸説あり、完全には解明されていません。

内耳は平衡感覚をつかさどり、スマホのモーションセンサーのように、角加速度を受容する三半規管や直線加速度を受容する耳石器などが搭載され、加速や回転、傾きなどの情報を検知することができます。


乗り物に乗ったとき、内耳は脳に「いま加速した、いま曲がった」などと伝えますが、たとえば車の中で本を読んでいたり、船で窓のない船室に居たりすると、視神経は脳に「いや動いてないし」と言ってきます。
このとき脳は視覚情報よりも平衡感覚の方を信頼し、目が「動いてない」と言ってくるのは幻覚を見ているせいだと判断します。
さらに、その幻覚は危険な神経毒のせいかもしれないので、毒を吐き出すために嘔吐中枢が反応し、吐き気をもよおす……というのが現在広く受け入れられている「乗り物酔いの仕組み」の仮説です。

逆に、実際は止まっているのに視覚情報は動いている場合(IMAXシアターやビデオゲーム、特に一人称視点の3Dのシューティングゲームなど)にも酔って気分が悪くなることがあります。
これもやはり、「止まっているのに動いている幻覚を見ている」「幻覚は毒のせいかもしれない」と脳が判断し毒を吐き出そうとしている、と説明できます。

ちなみに、人間の体には加速度センサーはあってもGPSは搭載されていないので、新幹線の直線区間などの等速直線運動では内耳も視覚も「止まっている」との見解で一致し、酔いにくいと考えられます。
急加速や急ブレーキが多い荒い運転や、カーブの多い山道などでは内耳の検知する動きが多いので酔いやすいと考えられるでしょう。

 

乗り物に酔わないためできること~おくすり以外の方法~

  • 船旅ではできるだけデッキに出て外の空気を吸い、景色を眺める
  • クルーズなどでは船の前方から中央付近で、水面に近い高さの客室を利用する
  • 飛行機では主翼の上(最も揺れにくい)で前方よりの窓側の座席(進行方向の風景が翼によって遮られない)を指定する

  • バスや電車ではできるだけ前方で、進行方向を向いたシートに座る
  • 車での移動は可能なかぎり自分で運転する
  • 人の運転する車では後部座席より助手席に乗り、前方の地平線付近の高さを見る

  • 移動中は窓の外の風景を見るか、目をつぶって眠る
  • 窓をあけ、換気をする(シートの匂いやガソリンの匂いなどで酔いやすくなることも多い)
  • 喫煙者の近くに座らない(タバコの匂いで酔いやすくなる場合もある)
  • 本を読んだりスマホをいじったりしない
  • 空腹や食べ過ぎの状態で乗り物に乗らない
  • 脂っこい食事を避ける
  • 乗り物に乗る前にアルコールを飲まない
  • 牛乳や豆乳、飲むヨーグルトを飲む(高糖質の飲料より高タンパク質飲料の方が吐き気を緩和する効果があると示されています)
  • ガムをかむ。特にミント風味のものが効果的(メントールの制吐作用のため)

  • ショウガの砂糖漬け、ショウガあめなどを食べる(ショウガは制吐作用があるといわれています)
  • 手首のツボを押す

内関」(ないかん、Neiguan、P6:手首の内側のしわから3~4cm、2本の腱の間)とよばれるツボは船酔いやつわりなどの吐き気に効果的と言われています。
左右どちらの手首でもOKです。
もう一方の親指で、効果が感じられる位置を探りつつじんわりと力を入れていき、指圧します。

このツボ刺激する乗り物酔い対策のリストバンドも各種販売されているようです。
アメリカではツボを電気的に刺激する「ReliefBand」という製品がFDAによって認可されています。

 

乗り物酔いに効くお薬

乗り物酔いやメニエール症候群などによるめまい・吐き気などによく処方される薬として、「トラベルミン配合錠」や「ドラマミン」などがあります。
「トラベルミン配合錠」の有効成分はジフェンヒドラミンという抗ヒスタミン薬で、薬局で買える第2類医薬品では「トラベルミン」「トラベルミン内服液」のほか睡眠改善薬「ドリエル」の有効成分です。
ドラマミン(Dramamine)」はジメンヒドリナートという抗ヒスタミン薬で、日本では処方薬ですがアメリカなどではOTCの酔い止め薬として最も普及しているブランドの一つです。

日本の薬局で買える酔い止めの薬としてはエーザイの「トラベルミン」シリーズと大正製薬の「センパア」シリーズ、エスエス製薬の「アネロン」シリーズ、ロート製薬の「パンシロントラベルSP」などが主要ブランドとなっています。

「トラベルミン」は上記のジフェンヒドラミン、「トラベルミン1」「トラベルミンファミリー」「センパア」「センパアS」「パンシロントラベルSP」などはメクリジン(抗ヒスタミン薬)とスコポラミン(抗コリン剤)、「センパアQT」はクロルフェニラミンマレイン酸塩(抗ヒスタミン薬)とスコポラミン、「アネロンニスキャップ」はマレイン酸フェニラミン(抗ヒスタミン薬)とスコポラミンが主な有効成分となっています。

酔い止めとして使われる抗ヒスタミン薬は安全性の高いものですが、副作用としてはどれも共通して眠気が挙げられるので、自分で車を運転する際には飲むことはできません。


また、ベンゾシアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬、アルコールなどとの併用も、中枢神経抑制作用が増強するため避けた方がよいでしょう。

酔ってしまったあとに飲んでも効果はありますが、乗り物に酔いやすい自覚がある方は30分~1時間前に飲んでおきましょう。
また、水なしで飲めるよう工夫されたタイプの薬が多いですが、チュアブル錠や液剤の場合も、あれば一緒に水を飲んだ方がベターです。

 

おわりに

乗り物に酔いやすい状況に個人差があるように、どの対策法が効くかにも個人差があります。
酔い止め薬が効かなかった場合も、別の成分を配合した酔い止めや、複数の薬の組み合わせで効いたという例もあります。
乗り物酔いで悩まされている人は、一度医師に相談し(診療科は耳鼻科が一般的です)、自分に合った治療法を探しましょう!

また、普段乗り物酔いしない人は薬を持ち歩いていないと思いますが、旅客機や客船では酔い止めを用意していることも多いので、気分が悪くなってしまった時には乗員に聞いてみてもよいでしょう。

(image by freeimages)
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