人間の体は、体内時計の働きによって生体リズムが作られています。

これを概日リズムといい、概日リズムは睡眠パターンを決定するのに重要な役割を担っています。

寝不足や月経前など、何らかの理由によって日中眠くなることは珍しくありませんが、慢性的に眠気を感じる場合には概日リズムの乱れや睡眠障害などの病気が隠れている場合があります。

しつこい眠気は病気かも?過眠症による眠気

過眠症とは、日中の活動時間帯に過剰な眠気が生じたり、実際に眠り込んでしまうことが一ヶ月以上毎日繰り返し起こる症状の総称です。

重症化すると倦怠感や不安感、集中力や作業能率の低下が起こるだけでなく、事故などの危険性も増すため対策が必要です。

過眠症には、脳内の覚醒を維持する機能の障害による一次性のものと、夜間によく眠れていないことなどによって起こる二次性のものがあります。

ナルコレプシー

ナルコレプシーは、日中に強い眠気が繰り返し起こり、居眠りをしてしまうことがほとんど毎日、数ヶ月〜年単位で続くことです。

10〜20分眠れば目が覚めますが、2〜3時間経つと再び眠気が襲ってきます。

試験中や会議中、商談中などの緊張するような場面であっても強い眠気が現れて眠ってしまう「睡眠発作」が現れることもあります。

また、もうひとつの症状として、大笑いや興奮、怒りなど感情に大きな変動が起きたときに突然ひざや腰、ひじ、顔、あるいは全身の力が抜けてしまう「情動脱力発作」が起こることもあります。

情動脱力発作は通常一瞬ですが、数分〜30分程度脱力状態が続き、床に崩れ落ちることもあります。

この時意識や記憶ははっきりしていて、呼吸困難が起こることもありません。

ナルコレプシーの発症は10代に多く、14〜16歳が発症のピークとなっています。

症状は長年続きますが、年月の経過とともに改善していきます。

特発性過眠症

特発性過眠症は、夜間しっかり寝ているにも関わらず、ぐっすり眠れた実感が持てずに日中ずっと眠気が続く状態のことをいいます。

特発性過眠症になると、たとえ10時間以上寝ても目覚めがすっきりとしません。

この病気の多くは25歳未満で発症します。

ナルコレプシーにみられる情動脱力発作がない場合に、特発性過眠症と診断されることがあります。

反復性過眠症

反復性過眠症は、数日から数週間、ほとんど一日中眠り続ける状態が続く睡眠障害です。

通常、症状が出ている間は毎日15時間以上眠り続けます。

周囲の人間による強い呼びかけで目を覚ますことはありますが、記憶力は乏しく、注意力や集中力の持続が困難です。

反復性過眠症は軽い意識障害としても考えられていますが、昏睡ほど深くはなく、食事や排泄は自分で行うことができます。

症状が出る頻度として、はじめのうちは2週間〜2ヶ月に一度程度であることが多いのですが、徐々に発症の間隔は開くようになるため周期は必ずしも定まっていません。

周期の間隔が開くにつれて眠気の強さは軽くなり、1日の睡眠時間も短縮する傾向にありますが、その反面一度の発症期間は延長することが多くなります。

反復性過眠症は極めて稀な病気ですが、罹患者の多くは10代で発症し、女性よりも男性の頻度がやや高いとされています。

不眠症による眠気

日中の眠気のもうひとつの要因として、夜間にきちんと眠れていないことが考えられます。

何らかの理由による一時的な寝不足であれば自分で改善することができますが、不眠症の場合は治療が必要です。

不眠症の定義として、夜布団に入ってから眠りに就くまでに2時間以上かかる「入眠障害」、一度眠りについても夜中に2回以上目が覚めてしまう「中間覚醒」、朝起きる時間よりも2時間以上早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」などの症状が週に2回以上、1ヶ月以上続きます。

精神生理性不眠症

精神生理性不眠症とは、緊張や不安などがきっかけとなって眠ろうとしても寝付けなくなり、それ以降眠れないことに対する不安が著しく強まり焦ることでかえって寝付きが悪くなってしまう状態のことをいいます。

「寝室に入る」「歯磨きをする」「消灯する」などの、眠りに関する行動に対しても覚醒してしまい、寝付きが悪くなってしまいます。

寝室では寝付けないのに、ソファでテレビを見ている時や読書中など、普段の就寝パターンから外れた場面では容易に眠れることがあります。

しかし、このような眠りに関する行動や就寝パターンを患者自身が自覚していることは少なく、本人は不眠の原因を理解していない場合が多いのです。

患者は眠れないことに意識が囚われてしまい、不眠のきっかけとなったもともとの不安材料がなくなっても、自分の意識によって症状を悪化させてしまいます。

精神生理性不眠症の治療は、不眠に対する不安や緊張を取り除くための精神療法や薬物療法、睡眠習慣の見直しなどを行います。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、夜間の睡眠中に繰り返し呼吸が停止、あるいは浅くなる症状をいいます。

慢性的に睡眠が妨げられるため、朝起きた時の爽快感に乏しく、日中強い眠気や倦怠感が毎日のように起こります。

この病気は肥満の中年男性に多く、頭痛や口渇、右心不全、高血圧などを合併しやすくなります。

睡眠時無呼吸症候群の治療には、薬物療法のほかにCPAPと呼ばれる呼吸器具、歯の噛み合わせを調節して顎を前へ引き出し、気道を確保する装具などが開発されています。

自律神経失調症による眠気

自律神経とは、体が「交感神経」と「副交感神経」の2つを自分の意思と関係なく働かせて体の環境を整える機能です。

自律神経失調症とは、この交感神経と副交感神経のバランスが何らかの理由によって崩れ、さまざまな症状を引き起こすことをいいます。

自律神経失調症の症状

自律神経失調症になると、特に原因が思い当たらないにもかかわらず体にさまざまな症状が現れます。

【身体的な症状】

慢性的なだるさ・めまい・頭痛・不眠・動機・ほてり・微熱・口や喉の不快感・便秘・下痢・頻尿・手足のしびれ など

【精神的な症状】

不安感・落ち込み・イライラ・疎外感・焦燥感・やる気が出ない・感情の起伏が激しい など

自律神経失調症の原因

自律神経失調症の原因には、大きく分けて4つのパターンがあります。

【生活リズムの乱れ】

夜更かしや夜勤、不規則な生活習慣など、体のリズムを無視した生活サイクルが続くと自律神経失調症を引き起こしやすくなります。

【過度なストレス】

仕事や人間関係、環境の変化などによる社会的なストレスなどが蓄積されると自律神経失調症が引き起こされます。

【ストレスに弱い性格】

もともとの性格として、感情の処理が苦手、断る事が苦手、気持ちの切り替えが苦手、他人からの評価を気にしすぎるなどの傾向がある場合はストレスへの抵抗力が弱く、自律神経失調症を引き起こしやすくなります。

【女性ホルモンの影響】

女性は月経や出産、閉経などによって一生を通じてホルモンバランスが変化しやすいため、男性よりも自律神経が乱れやすい傾向があります。

PMS(月経前症候群)による眠気

PMS(月経前症候群)とは、月経前3〜10日間の間に起こる精神的または身体的症状のことをいいます。PMSの諸症状は、月経が来ると減退または消失します。

PMSは、全女性の50〜80%に症状が現れており、症状もさまざまで、症例数は200〜300にものぼります。

PMSの症状

PMSの症状として特に多いのは、眠気・情緒不安定・イライラ・抑うつ・集中力の低下・睡眠障害などがあげられます。

毎月決まった時期に眠気が強くなり、それが月経前である場合は、PMSによる眠気であることが考えられます。

眠気を改善するためにできること

過眠症や不眠症が疑われる場合には、専門機関での治療をおすすめしますが、日常生活の中で少しでも眠りのリズムを整えるためにできることを紹介します。

太陽の光を浴びる

1日は24時間ですが、人間の体内時計は25時間で刻まれています。

日光は、この1時間の差が毎日重なることで体内時計が乱れるのを防ぐために重要な役割を果たします。

人間の体は明るい光や周囲の物音などによって体内時計を調節しているため、朝目が覚めたらカーテンを開けて日の光を浴びるようにすることでリズムのズレを修正することができます。

反対に、夜就寝前にパソコンや携帯電話などの画面を長時間見つめていると、画面からの光によって脳が覚醒して眠りにくくなってしまいます。就寝前はパソコンや携帯電話の使用を控えましょう。

規則正しい食事をする

食事の時間を規則的にすることも、体内時計を整える上で非常に重要です。

朝は時間がないため抜いてしまう人も少なくありませんが、できる限り1日3食を同じリズムでしっかりと食べるように心がけましょう。

おわりに

睡眠は、生命活動の基盤ともなる重要な役割を果たしています。

現代人は労働時間の多様化や社会的ストレスなどによって、どうしても生活リズムやホルモンバランスが乱れやすくなる傾向にあります。

日常生活に支障をきたすような眠気や不調を感じた場合には、早めに専門機関を受診しましょう。