はじめに

人は体温が上昇すると汗をかき、汗は蒸発する際に身体から熱を奪って体温を下げる役割をします。

「無汗症(むかんしょう)」は、高温や多湿などの環境下でも、発汗が見られない疾患です。
「乏汗症(ぼうかんしょう)」は極度の発汗低下が見られる疾患です。

どちらも体温調節の重要な役割をしている汗をかかないため、もちろん体に様々な影響が起こります。
もし夏でも汗をかきにくい、ほとんど汗をかかないのであれば危険です。
症状を確認しておきましょう。


 

無汗症の種類

無汗症には、先天性後天性があり、その中にも、全身性(全身に症状が出る)と限局性(一部だけ症状が出る)があります。
これらが組み合わさり
 ・先天性全身性無汗症
 ・先天性限局性無汗症
 ・後天性全身性無汗症
 ・後天性限局性無汗症
このような4つのタイプに分かれます。
 

無汗症の原因

無汗症は、体温調節に働く「エクリン腺」につながる神経の異常により汗が出なくなります。

発汗のサイクルは
暑さを知覚中枢が感じ取る
 ↓
体温中枢に伝える 
 ↓
交感神経
 ↓
エクリン腺に伝える
 ↓
汗をかく

この一連の流れのどこかの調節障害によって「無汗症」は起こります。


■先天性の場合
遺伝的要因で、脳神経細胞に何らかの形成異常が生じていて、出生時から、温覚、痛覚が無い、または極度に低下しているため、発汗しないだけではなく、発熱や痛みにも反応しない「先天性無痛無汗症」とされています。
運動機能が発達するにつれすぐに高体温状態になり、成長と共に運動機能などの様々な障害が生じ、将来的にも完治は難しいといわれる難病です。
 

■後天性の場合
神経疾患、内分泌、代謝疾患、薬剤による影響、自己免疫疾患などが挙げられます。
多くの原因があるため、診断により原因を探して治療します。

 

無汗症の症状は

  • 全身のほてり感
  • 皮膚の乾燥
  • 皮膚がピリピリ痛む(コリン性蕁麻疹)
  • 体温が上昇やすいが、冬は低体温になりやすい
  • 限局性(一部だけ)の場合、気付きにくい
  • 多汗と違い汗が出ないことがあまり不快感がない
  • 乳児期では、熱によるけいれんやてんかん、急性脳症を発症する場合がある
  • 熱中症になりやすい
     

無汗症は熱中症の中でも危険な熱射病へ

高温多湿の環境下でも発汗できないため

  • 発熱、顔面紅潮
  • 頭痛、めまい
  • 嘔吐
  • 脱力感、疲労感
  • 動悸
  • 意識障害


など、熱中症の中でも重篤な症状が出現しやすくなるため、特に夏には外出できなくなるなど、生活の制限を余儀なくされます。
 

汗をかきにくい「乏汗症(ぼうかんしょう)も増えています

近年、汗が顕著に減少した状態の「乏汗症:ぼうかんしょう(減汗症)」が増えています。
無汗症程ではないですが、
発汗が極度に低下する全身性疾患です。

こちらも夏に外に出ると熱中症に近い状態になります。
また、糖尿病や高血圧、腎臓病や甲状腺機能低下などにより、汗腺機能が弱まり汗が出にくくなることもあります。

元々汗の分泌経路の異常、または水代謝のサイクル異常などが考えられますが、まずは皮膚科か内科を受診し、元の病気を調べて治療します。
 

「ただ汗が出ないだけ」ではすまない危険

「汗が出ない」ということは、熱がこもって体温が上昇する「うつ熱」が起こり、すぐに熱中症に近い状態になります。
ことに夏の炎天下やスポーツをしている時など、短時間で重篤な症状を招く危険があります。
また冬は低体温になりやすいなど、体温調節が上手くいかなくなります。


たかが汗・・・と思うのはとても危険だということを知っておきましょう。

 

さいごに

近年エアコンなどの影響で一年中、汗をかかない生活をしているために、汗腺の機能低下が原因で汗をかきにくい人が増えているといわれています。
無汗症、乏汗症ともに発汗障害には様々な要因があるため、汗が出ない、かきにくいという自覚症状が少しでもあれば、皮膚科を受診しましょう。原因によっては内科や各専門医の受診や治療が必要な場合もあります。早めの受診をおすすめします。


image by Photo AC