はじめに

トリクロサンは、医薬部外品の薬用石けんをはじめとして、ボディーソープ、手指の消毒薬、うがい薬、食器用洗剤、練り歯磨き、化粧品などで使用されている抗菌剤です。

2016年9月、米国食品医薬品局(FDA)が、トリクロサンをはじめとする19成分を含む抗菌石けんをアメリカにおいて1年以内に販売停止にする措置を発表しました。

これを受けて日本でも、厚生労働省が製造販売業者に対して流通する製品の把握と、製品を1年以内に代替製品に切替えるための承認申請を求めるとともに、その際の承認審査を迅速に行うことを通知しました。

これは、トリクロサンが配合された石けんが、配合されていない石けんより殺菌効果があるという根拠がなく、また長期使用の安全性も検証されていないとしているためです。

ただし、2017年現在、日本国内では、これらの成分を含む薬用石けんによる健康被害は報告されていません。

トリクロサンの肝臓への影響

2014年「トリクロサン」によって、マウスに肝硬変肝細胞がんが発症しやすくなることが、カリフォルニア大学デービス校で行われた研究により明らかになりました。

トリクロサンは石鹸や化粧品、プラスチック製品などに殺菌剤として広く使われているため、人体への影響が懸念されています。

食品添加物ではないものの、家庭で使われる石鹸や歯磨き・マウスウォッシュなどに広く添加されるトリクロサンは、体内に取り込まれる機会も多く、尿検査で75%のサンプルから検出されたという報告例や、授乳中の女性の母乳の97%から検出されたというデータもあります。

トリクロサンは河川などの水質調査でも検出されることの多い化学物質の一つです。
これまでにも、内分泌かく乱作用や筋収縮異常との関連、水界生態系への影響などが問題視されてきました。

11月17日に米国科学アカデミー紀要に掲載されたカリフォルニア大学デービス校のRobert H. Tukey教授・Bruce D. Hammock教授らによる研究では、トリクロサンによる肝細胞の増殖と線維化反応の促進効果、および酸化ストレスの兆候が確認されました。

実験ではマウスに6か月間(人間の18年間に相当)トリクロサンを摂取させたのち、ジエチルニトロソアミンという発がん物質を投与したところ、トリクロサンに触れていない対照群と比べ、肝細胞がんの発症率が高く進行も早かったとのこと。

トリクロサンは、構成的アンドロスタン受容体(CAR:Constitutive Androstane Receptor、核内受容体の一つで体内の異質な化学物質を排除する役割を担うタンパク質)を活性化させることが今回判明しました。それにより負担のかかった肝細胞は増殖し、線維化し、発がん物質を投与された際に発がんしやすくなると考えられています。

今回の実験で用いられたマウスのがん発生のメカニズムは人間と同様であり、人間でもトリクロサンの肝臓への影響が懸念されています。

おわりに

トリクロサンは現在、殺菌効果をうたっている石鹸などで最も広く使われている殺菌剤ですが、いわゆる「殺菌ソープ」も普通の石鹸も、20秒かけて洗えば除菌効果は変わらないとされています。

時間をかけて手洗いし、水が使えない環境では消毒薬を使用しましょう。