はじめに
「川崎病」は、川崎市の公害病とは違うもので関連もなく、理解していない人も多いと言われていますが、ひそかに流行が続いている病気です。
1967年に最初の報告者が東京都の日赤中央病院(現在の日赤医療センター)小児科医の川崎富作医師であったことから、川崎病という病名になりました。
世界共通の病名として「KAWASAKI DISEASE」病名で呼ばれ、現在も世界の乳幼児を襲っていますが、いまだその原因は不明だと言われています。
後遺症や命の係わることもある病気です。
この機会に川崎病の基礎知識を知っておきましょう。

どんな病気?
正式には「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」(MCLS)といいます。
全身の血管が炎症を起こす病気のため、全身にさまざまな症状が出現します。
特に1歳未満の発症が多く、6か月~4歳以下の男の子に多く見られます。
次々に移る伝染病ではありませんが、1982年、86年に大流行した後次第に増加し、2005年以降は毎年1万人を超え、2012年には約1万4千人まで増加しました。
病気の原因が解明されておらず、残念ながら原因に対する予防法や治療法がありません。
後遺症を伴う重症化を防ぐために、症状がでてきたら「早期に受信して治療に着手する」のが重要な病気です。
川崎病の診断基準
最初はかぜのような症状から始まりますが、共通する症状があります。
以下6つの主な症状のうち、5つを満たせば川崎病と診断されます
① 39度前後の高熱が5日以上続く(ただし治療により5日未満で解熱した場合も含む)
② 全身に赤い発疹が出る
③ 両目の白目が充血して赤くなる
④ 唇が荒れて真っ赤になり、イチゴ状舌(舌がイチゴのようにブツブツ)になる
⑤ 手のひらや足の裏に腫れやむくみがあり、赤くなる。熱が下がった回復期に、指先から手や足の皮膚がむけてくる
⑥ 首のリンパ腫がはれる
※症例写真はこちら 日本川崎病学会HPをご覧ください
その他の症状
前記①~⑥の症状がそろわない不全型の川崎病もあります。その他の症状として、
○ BCG接種部位が赤くなっている
○ 腹痛、下痢、 黄疸、関節痛、頭痛、けいれん等がみられることがあります。
※特に1歳前後の赤ちゃんが原因不明の高熱を出し、①~⑥またはその他症状が見られたら、この病気を疑う必要があります。
後遺症として
全身の動脈に炎症が起こり、心臓に障害が出ることがあります。
●冠動脈瘤:心臓の冠動脈の壁にこぶができる
●心筋梗塞:血管が狭くなったり詰まってしまい、突然死を起こす可能性がある
心筋梗塞は動脈硬化からくる成人病(生活習慣病)ですが、子どもでも川崎病による冠動脈障害が原因となっておこる場合があります。
症状にしても後遺症にしても個人差があります。
担当医から病状をよく聞いて、適切な対処をとりましょう。

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気になる治療法は?
病院で経過観察をしながら治療します。
心電図と心エコー検査を行い、重症化、後遺症予防のために主に抗炎症と血栓防止などの治療を行います。
○ アスピリン療法
炎症を抑え、血栓ができるのを防ぐアスピリンを服用する治療です。
川崎病のアスピリン療法については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:川崎病のアスピリン療法について徹底解説!
○ ガンマグロブリン療法
冠動脈瘤の治療・予防のためにガンマグロブリンという血液製剤の点滴を行う治療です。
※適切な治療を受ければ、3週間~1か月で退院できます。
冠動脈流がなければ普通に生活できます。
後遺症がない場合でも、退院後に定期的な検査を受けることが大切です。
予防接種の種類に注意!
乳幼児期は感染症が多ため、いくつもの予防接種がありますが、ガンマグロブリンの投与を受けた場合には、その後の予防接種に注意が必要です。
受けても問題のないワクチン
●3種混合(DPT)
●2種混合(DT)
●日本脳炎
●インフルエンザ
●ポリオワクチン
●BCG
3ヵ月~6か月間は延期するワクチン
●麻疹
●風疹
●水ぼうそう
●おたふくかぜワクチン
※川崎病児の場合、予防接種ガイドラインには、グロブリン療法が終わってから3か月以降、大量投与の際は6か月以降に打つようにと指導されています。
医療費補助について
国が指定した疾患については医療給付制度があります。
川崎病の治療費については、「小児慢性特定疾患医療給付」など、都道府県において医療費を補助している場合があります。
各都道府県の保健所などに相談しましょう。
おわりに
難しい病気はたくさんありますが、川崎病は原因不明という怖さがあります。
ただし、治療法はきちんとあり、不治の病ではないため、今回の症状や概要を参考にしてください。