2015年9月、C型肝炎の新たな治療薬が登場しました。ギリアド・サイエンシズ社から発売されたハーボニーです。ジェノタイプ1型向けの薬で、1日1回12週間服用する飲み薬です。

 

薬価1錠8万円と高額ですが、C型肝炎の治療においてはなんと100%の効果が発揮されることが判明しました。さらに、年齢や体質によりこれまで治療ができなかった患者の方にも効果を発揮しており、治療期間、副作用の面でも従来の薬を大きく上回っています。

 

すでに医療費助成の対象にも加えられ、C型肝炎治療を変える新薬として大きな期待が寄せられています。

C型肝炎の症状・治療

C型肝炎はウイルスによる感染症です。C型肝炎ウイルス(HCV)が血液に入り込み、肝臓の細胞を破壊します。初期段階では自覚症状がないため感染に気づかないことも多く、急性の場合、まれに自然治癒してしまうこともあります。

しかし、その後慢性のC型肝炎に進行すると、身体がだるい、食欲がわかない、疲れやすいといった症状が次第にあらわれはじめ、放置しておくと高い確率で肝硬変、さらには肝がんへと進行していきます。

 

国内の感染者数は150~200万人にのぼり、肝がん患者の約9割がB型・C型肝炎ウイルスの感染が原因といわれています。毎年約3万5000人が肝がんで亡くなっていること考えれば、C型肝炎は決して放置できない大変恐ろしい病気であることは言うまでもありません。

インターフェロンからソホスブビルまで C型肝炎治療の変遷

これまで主に行われてきたのは、インターフェロンによる治療です。

抗がん剤としても用いられる抗ウイルス薬で、日本では1992年から適用が開始されました。

 

インターフェロンはウイルスの増殖や他の細胞への感染を防ぐ効果がありますが、長期間、大量に投与する必要があるため発熱や倦怠感、食欲不振など副作用を生じやすく、さらに日本人の感染者に多いジェノタイプ1型には効果が出にくいという問題がありました。

 

その後、飲み薬のリバビリンを併用する治療や、リバビリンとペグインターフェロンを併用する治療、さらに、2011年頃からはウイルス自体を破壊する直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)が相次いで登場し、これらの薬を合わせて服用することで、治療が困難とされた1型に対しても80%近い効果を発揮できるようになりました。

 

しかし、依然としてインターフェロンによる副作用や長期に及ぶ治療、高額な医療費などの理由により、日本では治療をあきらめてしまったり、中断してしまう人が少なくありませんでした。

注射から飲み薬の時代へ

大きな転換を迎えたのは2014年。ジェノタイプ1型向けにダクラタスビル(商品名ダグルインザ錠60mg)とアスナプレビル(商品名スンベプラカプセル100mg)という2つの飲み薬を併用する治療法が登場し、インターフェロンを用いない国内初の飲み薬のみによる治療法が適用されました。

 

C型肝炎ウイルスの耐性変異遺伝子がある場合には効果が出ないものの、これまで1型の感染者でインターフェロンが効かなかった、年齢、身体への負担などによりインターフェロンが投与できなかった、あるいは過去にC型肝炎治療を受けたことがなかった患者の方にも効果を発揮しており、治験では84.7%の著効率を達成しています。

 

続いて今年5月には、ジェノタイプ2型向けの治療薬で、リバビリンと併用することにより高い効果を発揮するソホスブビル(商品名ソバルディ錠400mg)が登場し、国内では飲み薬だけで治すインターフェロンフリー療法が本格化していきました。

ハーボニーは最新の治療薬!

C型肝炎の治療が急速に進む中、今年9月に販売開始されたのがハーボニー(商品名ハーボニー配合錠)です。

 

ハーボニーはソバルディとレディパスビルの配合錠で、1型のC型慢性肝炎およびC型代償性肝硬変に対応した飲み薬です。1日1回1錠12週間服用します。

 

同じ1型向けのダクラタスビルとアスナプレビルの併用療法がダクラタスビル1日1回、アスナプレビル1日2回、服用期間が24週間あったことに比べると、ハーボニーは1日1錠で済むだけでなく、期間も半分に短縮されました。

 

さらに、1型の日本人感染者を対象とした治験データでは、過去のC型肝炎の治療歴、代償性肝硬変の有無、インターフェロンに対する効果反応にかかわらず、100%の著効率を達成しています。

薬価1錠8万円!

また、ハーボニーは1錠80171.30円よいう薬価も大きな話題になりました。

 

通常、ダクラタスビルが9816円、アスナプレビルが3280円、ソバルディが61799円であることを考えれば、その効果とともに値段も従来の薬を大きく上回っています。

 

とはいえ、ハーボニーはすでに医療費助成の適用も承認されています。厚生労働省は2015年9月、ハーボニーも医療助成の対象に加えることを決定し、肝がんを発症していない1型の患者に対し、原則1回、12週間の治療を対象に医療費の助成を行うことを決定しました。これにより、患者の自己負担は月々最大2万円に抑えられるとされています。

ハーボニーの気になる副作用

一方で、従来の薬に比べれば大きく改善されたものの、ハーボニーにも副作用は存在します。

 

臨床試験では157例中34例(21.7%)に副作用が確認され、主な症状として、かゆみ・吐き気・口内炎があげられています。

特に、貧血、頭痛、消化器系のトラブル(悪心・便秘・口内炎・腹部不快感など)、そう痒症や発疹、などの症状がみられる場合は医師による適切な処置を受けることが勧められています。

 

また、使用上の注意として、次に当てはまる方への投与は禁忌とされています。

 

・ハーボニーの成分に対し過敏症の既住歴がある患者

・重度の腎機能障害または透析を必要とする腎不全の患者

・次の薬剤を服用中の患者:カルバマゼピン(テグレトール)・フェニトイン(アレビアチン)・リファンピシン(リファジン)・セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ) *これらが含まれる食品の摂取を含む

 

その他、アミオダロンとの併用は不整脈を発生するおそれがあり、海外では死亡例も出ていることから、可能な限り併用投与を避けるよう推奨されています。

ハーボニーのライバル?!『ヴィキラックス』

ハーボニーに大きな注目が集まる中、C型肝炎の治療薬でハーボニーと時期を同じくして登場した薬があります。アッヴィ社により製造開発されたヴィキラックスです。日本では今年11月から販売が開始されました。

 

ヴィキラックスはハーボニー同様、1型のC型慢性肝炎、C型代償性肝硬変の患者を対象としており、1日1回2錠、12週間の服用で、国内での治験データでは、約95%の著効率を達成しています。

 

高い効果がある上、薬価も1錠26000円とハーボニーよりも安価であることから、ヴィキラックスは今後ハーボニーと競合する治療薬となることが予測されています。

 

さらに、アッヴィ社によれば、現在すべてのC型肝炎ウイルスに効果を発揮する新薬を開発中であることが発表されています。治験ではすでにジェノタイプ1・2・3型でそれぞれ90%近い著効率を達成しており、今後ハーボニー、ヴィキラックスに次ぐさらなる革新が期待されています。

C型肝炎~気になる方は早めの検査を~

新薬の登場により、従来治療が困難とされた日本のC型肝炎治療にも明るいきざしが見えています。

 

治療期間や副作用の改善、さらに飲み薬による治療が発達したことで、仕事や日常生活への負担も軽減されつつあります。

 

現在、一部の医療機関および保健所では、肝炎ウイルスのための血液検査を無料で行っています。

 

また、C型肝炎の治療薬には医療費の助成制度が適用されている他、過去にフィブリノゲン製剤あるいは血液凝固第IX因子製剤を投与したことが原因でC型肝炎を発症した、いわゆる薬害肝炎の患者の方に対しては、政府より症状に応じた給付金を支給しています。

 

詳しくは各自治体の保健所や医療機関にご相談ください。