はじめに ~不定愁訴と自律神経について~

病院に行ってもはっきりとした原因が分からない、診察しても特に異常がないという体の不調を「不定愁訴(ふていしゅうそ)」といいますが、更年期障害はその典型と言えるでしょう。

自分のつらい症状の原因が一体何なのか分からないことは一番不安なことですが、体の様々な不調には「自律神経」が大きく関わっていることが分かっています。
日本では「自律神経失調症」は不定愁訴症候群の別の表現であるとも言われています。

今回は一見同じように見える「更年期障害」と「自律神経失調症」の両者の特徴と、共通点や違い、関連性を見ていきましょう。

 

自律神経とは?

「自律神経」とは、神経、内分泌系、免疫の調整など、自分の意志で動かすことのできない神経のことで、血流や血圧、心拍、体温、発汗など、生きるために重要な全身の機能をコントロールしています。

自律神経は交感神経と副交感神経が状況に合わせてバランスを取りながら働いています。

①起きている時や興奮している時に優位な「交感神経」 
②眠っている時やリラックスしている時に優位な「副交感神経」

それぞれ両方のバランスによって心身の健康が維持されていますが、何らかの理由で交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、心身に様々な不調が生じる状態が「自律神経失調症」です。

 

更年期障害と自律神経失調症に共通する不定愁訴

  • 月経異常
  • 異常発汗、寝汗
  • 倦怠感、不安、憂鬱、イライラ
  • 不眠、睡眠障害
  • 食欲不振
  • 頭痛、めまい、耳鳴り
  • 動悸、息切れ
  • 肩こり、腰痛、関節通
  • 手足の冷え、しびれ
  • 便秘、腹痛、下痢


などが主な症状とされていますが、その他にも様々な症状が出る場合があり、更年期障害と自律神経失調症には共通の症状があらわれます。

 

更年期障害と自律神経失調症の原因は?

更年期障害の主な原因

更年期障害の主な原因は、「①エストロゲン(女性ホルモン)の減少」と「②閉経」です。

更年期に卵巣の働きが衰えて行き、エストロゲンの分泌が低下すると、脳はエストロゲン分泌量の減少を感知し、盛んに卵胞刺激ホルモンを分泌してエストロゲンを作るよう指示しますが、卵巣には力がないためエストロゲンの量は増えず、脳が混乱します。

エストロゲンの減少は、自律神経、精神神経、循環器系、呼吸器系、運動器系など全身の器官に影響するため、様々な症状が起こるのです。
 

自律神経失調症の主な原因

自律神経失調症の原因には、ホルモンバランスや生活環境など様々な要因がありますが、最も主な原因として「過度なストレス」が挙げられます。

「ストレス」という言葉は元々物理学の分野で使われていたもので、外部からの圧力により「物体に歪みが生じた状態」を指す物理用語です。
例えばゴムボールを指で押す(外圧をかける)と歪みますが、指を離すとすぐに元に戻るはずです。これが健康な状態です。

指(外圧)に当たるものを「ストレッサー」といい、私達の日常生活には様々なストレッサーであふれています。

▶気温や騒音、有害物質などの「物理的なもの」
▶過労や感染症、老化などの「生理的なもの」
▶仕事や人間関係、不安、うつなどの「社会的、心理的なもの」
 
特に中高年の女性は、自分自身の問題、夫や子供、両親の介護など、社会的、心理的な負担はより大きくなります。

ゴムボールを人間の心身に置き換えてみると、日々様々な外圧からの問題に適応しようとしています。ところが長期に渡り外圧がかかったままだと心身は歪んだままになり、さらに外圧が強くなると、とうとう壊れてしまいます。これが「自律神経失調症」です。

自律神経失調症のほとんどが、交感神経の異常興奮に
よるものです。

交感神経と副交感神経はシーソーのような関係のため、どちらか片方しか動くことができません。
そのため、ずっと心身ともに緊張状態が続いたり、過労や睡眠不足などにより交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、不定愁訴のいずれかの症状が出やすくなるのです。

 

更年期障害と自律神経失調症の関係性は?

更年期障害と自律神経失調症は、症状に共通点がありますが、両社の違いをあえて分けるとすると

❏更年期障害=「エストロゲン(女性ホルモン)の減少」と「閉経」
❏自律神経失調症=過度なストレス

が主な原因となります。

女性ホルモンの働きが崩れると自律神経の働きも狂ってしまうことがあるため、両者は密接に連動しています。

自律神経失調症と診断された中で、女性が男性の2倍であることからも、更年期障害との関係が高いことがよく分かります。

 

おわりに

今回の記事のポイントは、女性ホルモンと自律神経には密接な関係性があるため、更年期には自律神経失調症状があらわれやすくなるということを知っていただき、また原因もしっかり知識として持っていれば不定愁訴に関しては冷静に判断できるかもしれませんね。