はじめに ~「躁鬱病」は「双極性障害」といいます

「躁鬱病(そううつびょう)」と以前いわれていた病気は、現在「双極性障害(そうきょくせいしょうがい)」といいます。

うつ病は今や100人に10人弱にかかるというデータがありますが、双極性障害も現在およそ100人に1人はかかるといわれています。


 

うつ病の多くは女性にかかることが報告されていますが、双極性障害は男女比はありません。主に20代~30代に発症することが多いのですが、10代~高齢者まで幅広い年齢にかかる病気で、うつ病に比べると頻度は低いのですが誤解されやすく診断が難しい病気です。

双極性障害は脳の病気です。脳の神経伝達物質に異常が生じるために起こると考えられており、性格や心の問題だけで解決できるものではありません。
双極性障害の症状や基礎知識を知っておきましょう。
 

双極性障害とうつ病の違いは?

双極性障害は、うつ病から発症することが多くあります。
うつ病=気分の落ち込み、無気力、不安、頭痛、便秘、不眠、自殺願望・・・などのうつ症状だけが見られます。

■双極性障害=うつ状態と、気分が著しく高揚し活動的な躁(または軽躁)状態を繰り返します。

双極性障害は約3割~5割の期間をうつ状態で過ごすことが多いため、うつ病の一種だと勘違いされがちですが両者は全く違う病気です。

うつ病だと思っていたら極端に調子が良くなり、活発でハイテンションになる時期がある場合は、双極性障害の可能性があります。現在うつ病の症状を訴えて受診した人の16%に双極性障害が含まれているといわれます。
 

双極性障害には種類があります

双極とは「2つの極」という意味で、病状にはタイプがあります。

双極Ⅰ型

「激しい躁状態」と「うつ状態」があります。
Ⅰ型は特に躁の状態が重く、躁とうつがはっきり出ることが特徴です。ただし躁状態の時、本人は病気だという自覚はありません。
 

双極Ⅱ型

「軽い躁状態(軽躁状態)」と「うつ状態」があります。
Ⅱ型はⅠ型よりもうつで過ごす方が長く、躁が軽いのが特徴です。気づきにくいのですが躁状態が少なくとも4日以上続くというのがひとつの基準になります。見落とされやすいのですが、摂食障害やアルコール依存、不安障害などを合併しやすいため深刻です。
 

その他

軽い躁状態と軽いうつ状態をくり返す「気分循環型」や、頻繁に躁状態とうつ状態をくり返す「急速交代型(ラピッドサイクラー)があります。

このように躁とうつの出方に様々なタイプがあり、診断が難しい病気です。
 

躁状態の症状は?

双極性障害の場合、以下のような躁の症状に注意が必要です。

  • エネルギーにあふれ、気分が病的に高まっている
  • 機嫌がよく、いつもより活動的になる
  • あまり眠らなくても平気
  • 急に偉くなったような気になる
  • 何でもできる気になる
  • 深夜、早朝でも気にせず電話を掛ける
  • おしゃべりになる
  • 次々アイディアが浮かんだり新しいことを始めたりする
  • 気が散りやすく怒りっぽくなる
  • 本人は気分がよく、病気の自覚はない


誰にでも気分が高揚することはありますが、双極性障害の場合はそれが行き過ぎていて、周りが「いつもと違う…何かおかしい…」と気づき、様々な問題を起こすような場合、双極性障害が疑われます。

 

躁状態で起こしやすいトラブルに注意

無謀な計画や非現実的な商売、投資など
気が散りやすく軽率になるため仕事などはかどらない
高額な買い物や多額の借金など、後で後悔するようなことをする
普段は大人しいが、突然の暴力行為や性的に奔放になったりする
上機嫌でもすぐにイライラして怒りっぽいため人間関係を乱したり信用を失ったりする

このように、場合によっては家庭崩壊、長年の人間関係の崩壊をはじめ社会的地位を失ってしまうこともあります。

その後は、躁状態の時の自分の行動に対する強い自己嫌悪が加わり、今度はうつ状態が酷くなり、ますますつらく苦しい気持ちになるという悪循環に陥ってしまいます。
 

躁→うつ、うつ→躁へ変わるときは混合状態

躁状態→うつ状態へ、またはうつ状態→躁状態へ変わるときに、気分は落ち込んで不安が強いのに、頭の中では色々考えていてじっとしていられない、というような混合状態になることがあります。

気持ちはうつなのに、考えや行動は躁の状態になっている
ひどく高揚してしゃべったり活動したりしているのに、気持ちは死にたいと思っている

など、躁とうつの症状が混ざって出ている状態になります。
双極性障害は多くの場合、躁状態やうつ状態が一度きりですむことはなく、ほとんどの場合何度も繰り返します。


 

躁状態やうつ状態が治まっている時は?

双極性障害は、躁状態やうつ状態が治まった時には何の症状もありません。
この「躁状態でもうつ状態でもない時」には病気ではない人とどこ
も変わりがないのもこの病気の特徴です。

問題なのは、躁の時には気分が良いため病気とは思わず、うつの時だけ受診する傾向にあることです。
そのため、うつ病と間違われることがあり、適切な治療ができないために再発を繰り返すことになります。
 

双極性障害の治療法は?

双極性障害の治療目的は、「躁状態の治療」「うつ状態の治療」「再発の予防」です。

治療法には、薬物療法として、気分安定剤や非定型抗精神病薬や睡眠導入薬などを使用します。注意が必要なの薬は抗うつ薬です。
双極性障害のうつ状態では、抗うつ薬の使用により、うつ状態から急に躁状態が出ることがあるため使用には注意が必要です。
薬は状態により医師の処方された用法、用量を守り、自己判断でやめず、継続して服用することが大切です。

また薬物療法と組み合わせて、精神療法(心理社会的治療)があります。ただしこれは
いわゆるカウンセリングではありません。
本人が自分の病気を正しく理解し、それを受け入れ、自ら病気をコントロールすることを援助するものです。

また家族の理解も含め、家族と協力し、再発のきざしに気づいて対応することができるようになれば早期に治療を始めることもできます。
双極性障害は再発を繰り返しやすいため、放置せずしっかり治療することが大切です。

 

おわりに ~気になるサインを見逃さないことが大切~

うつ病も増加している中、双極性障害も誰にでもなる可能性があります。
もし自分や周りにこのような症状が見られ、少しでも
気になることがあれば、放置せず精神科の専門医に相談しましょう。
特に
うつ病の診断、治療をしているのに良くならない患者さんの中に双極性障害が隠れている場合があります。両者は治療法が全く違うため、早期発見・治療が大切です。

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