うつ病の治療は、基本的には外来でおこないます。
病院に通いながら薬物療法(お薬)や精神療法(カウンセリング)を行い、自宅で安静に過ごす、というのが一般的な治療パターン。

そして、治療を進めても効果があがらない、むしろ悪化するなどの場合は数ヶ月入院・・・というのが、多くの方が想像するうつ病の治療ではないでしょうか。

ところが最近、「入院治療」の考え方に変化が起きています。

外来で薬物治療をおこなう前に、まずは数週間入院する、「休息」をとるイメージで一ヶ月入院するなど、入院治療の敷居が低くなっているのです。

一般的な病気の場合「入院」イコール「重症」ということになりますが、うつ病など精神疾患の場合は、必ずしもその方程式が当てはまらない、ということが根底にあるようです。軽度なうちに医師の管理下でしっかり治してしまおう!というものです。

今回は、うつ病の「入院治療」について考えます。
医療費を補助する高額療養費制度や傷病手当金などについても参考になさってください。


 

うつ病で入院を検討するケース(一般例)

精神疾患で入院する場合、「任意入院」と「医療保護入院」の2種類があります。
任意入院は患者本人に入院の意思がある場合の入院で、うつ病ではこのかたちが一般的です。
医療保護入院は、医師により入院治療が必要と判断されていても患者本人の意思が確認できない、もしくは入院を拒否しているときに、家族の同意を得て、精神保健指定医の判断で入院するものです。

いずれにしても、うつ病で入院を検討するのは次のようなケースです。

  • うつの症状が重い
  • 抗うつ薬などでの治療効果が薄い
  • 自殺の危険性がある
  • 他の身体疾患を合併している
  • 家族によるケアができない
  • 家庭で休息できない
  • 衰弱が著しい
  • その他、主治医により入院治療が必要と判断された場合など

ちなみに厚生労働省の発表(H23年の調査)では、うつ病など気分(感情)障害の患者数は100万人を超え、そのうち入院治療を受けている患者は約2万6千人。
患者数は10年あまりで約3.5倍に増加しましたが、入院患者はやや減少しているのが現状ということです。

厚生労働省HP「みんなのメンタルヘルス
 

うつ病で入院治療を受けるメリット

うつ病治療の三本柱は以下の3つです。

  • 薬物療法
  • 精神療法(カウンセリング)
  • 安静

この3つをもとに医師は治療方針を決め、患者やその家族と一緒に治療を進めていきます。
なかでも「安静」は重要で、疲弊し壊れそうになっている心を安静な状態にする環境の確保こそ、一番に求められるものとされています。
もし心安らぐ場所が「自宅」であり「家族のもと」であれば、外来での治療がベターでしょう。

しかし、そうでなかったら?
その場合の選択肢に「入院治療」が入ってくるのです。

入院治療の内容(一般例)

薬物療法
精神療法(カウンセリング)
集団精神療法、作業療法

うつ病では、食事を作る、掃除をする、人と話すなど、日常生活のさまざまなことが困難になるため、集団精神療法や作業療法も取り入れて治療をすすめていきます。

うつ病で入院治療を受けるよさとは

  • 刺激やストレスのもとから離れて、充分に休養がとれる
    うつ病では眠れない、食べたくない、動きたくない、誰とも会いたくないと、生活リズムが乱れてしまいます。
    入院中は起床から就寝まで、食事を含めてしっかりと管理。
    生活リズムを正していくことで、体調を整えていくのです。

    また入院によって外界のわずらわしい騒音や刺激も遮断されます。
    安心の源である家族との関係が思わしくない、家族でも会いたくない、話したくない場合は、入院して自宅を離れることで心が安定することが考えられます。
    誰の目も気にすることなくじっくりと自分自身と向き合うことで、疲れ切った心と体を少しずつ回復させていきます。
     
  • 医師の管理のもと、適切な治療が受けられる
    気分や体調の変化などが医師に伝わりやすいうえ、症状や状態にあわせて(医師の管理のもと)薬の量も調整されますので、適切な治療が受けられます。
    いつもそばに医師や看護師がいますので、相談しやすいこともメリットに挙げられるでしょう。

このようなメリットをうけ、最近では生活リズムの調整やストレスケアのための「休息」として入院治療をおこなう病院やクリニックが増えています。
軽度の段階で徹底的に治療をすることで、その後の心身の負担も軽減させるのが狙いです。
入院期間も2週間から1ヶ月と、比較的短期間のプログラムを組んでいるところもあり、うつ病の入院治療に対するイメージが変化しつつあるようです。

入院は費用が心配!「高額療養費制度」などを活用しよう

入院を考えた場合、一番心配なのが「費用」でしょう。
公的医療保険では、70歳未満の現役世帯の負担は3割。
しかし医療費が高額になると3割でも負担は大きく、入院が月単位となると一層家計を圧迫してしまいます。
このようなときに是非活用したいのが高額療養費制度です。

高額療養費とは、同一月(1日~月末)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分があとで払い戻される制度です。

また70歳未満の方で、入院前に医療費が高額になることが事前にわかっている場合には、あらかじめ限度額認定証を発行してもらうと窓口での支払いが一定の限度額を超えずにすみます。

自己負担限度額は、年齢や収入によって区分けされています。
計算方法や手続きについて、詳しくは全国健康保険協会のHPをご覧ください。
全国健康保険協会:健康保険ガイド

尚、個室などを利用した際の差額ベッド代は公的医療保険や高額療養費制度の対象外です。ご注意ください。

「会社を辞める」を考える前に:傷病手当金で家計の補助を

傷病手当金は、業務外の事由による病気やケガで仕事を休んだときに受けられる公的な補助です。
うつ病で治療を受けながら仕事を続けるのが困難になったとき、「会社を辞めてしまおう・・・」と考える前に「休職状態」で治療を受ける方法も考えてみてはいかがでしょうか。
傷病手当金は、最長で1年6ヶ月受けられる補助です。
支給される条件など、詳しくはこちらを参考になさってください。
全国健康保険協会:健康保険ガイド
 

入院か否かは、慌てず冷静に判断を

うつ病の治療については主治医と患者本人がよく話し合い、納得したうえで進めていくことが大切です。
入院治療についてもさまざまな意見がありますので、メリットとデメリットの両方を見比べながら判断してください。

 

(image by photo-ac)
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