はじめに
子どもの成長過程には心と体に様々な変化が起こりますが、その中で「気になる癖」というのも色々と出てきます。
子どもにも大人同様に緊張やストレスがあり、それを自分で和らげるために無意識にしているものもありますが、親としては「すぐに止めさせたいけどどうすればいいのか…」「人にはちょっと相談しにくい…」という声がたくさんあります。
今回は、そんな子どもの癖の中でも困ることが多いといわれる「指しゃぶり」「チック」「自慰(じい)」について、対処のポイントを見ていきましょう。

image by
photo AC
指しゃぶりについて
「指しゃぶり」はどの子にもある自然な行為
指を吸う「指しゃぶり」は、ヒトの生理的な行為といわれています。
どの子にも見られる自然な行為で、生後2~3ヵ月から1歳位まで続く子は多くいます。
もともと子どもは、胎児の頃の24週頃に指を吸う動きが出て、32週頃からは、指を吸いながら羊水を飲み込む動きも出てくるといわれ、胎児の指しゃぶりは、生まれてすぐに母乳を飲むための練習と考えられています。
その後、乳児期には何でも口に持っていき、色々なものをしゃぶって形や味などを学習していきます。
つかまり立ちやひとり歩きを始める頃には減っていき、1~2歳でおもちゃ遊びをする頃には、昼間の指しゃぶりは減少していきます。
指しゃぶりは心のサイン?
指しゃぶりは、眠い時、退屈な時、不安な時、欲求不満の時などに見られます。
不安や緊張を和らげるため指しゃぶりをすると心が落ち着くからです。
一般的には、3歳~就学前までには、お母さんから離れること(母子分離)ができ、外に出て友達と遊ぶようになると、指しゃぶりはほとんどしなくなります。
ただ、通常は自然に治っていくものですが、突然指しゃぶりをするようになった場合は、下にきょうだいが生れてお母さんがかまってくれない、幼稚園で友達との関係がうまくいかない、など、心理的なストレスが隠れている可能性があるため、心のサインを受け止めてあげましょう。
指しゃぶりの影響は歯並びやかみ合わせに注意
指しゃぶりを続けていくことの一番の影響は、歯並びやかみ合わせです。どの程度しゃぶり続けているかや、しゃぶり方にもよりますが、指しゃぶりを続けていると、発音や嚥下(飲み込む力)、顎の発達などにも影響します。
4歳以降も続けている場合は、小児歯科に相談しましょう。
指しゃぶりは3歳頃までは見守って
指しゃぶりは無理にやめさせようとするとストレスが大きくなり逆効果です。
指しゃぶりをしているのを見かけたら、子どもとのスキンシップを増やし、おもちゃや遊びなど、違うことに気をそらせるようにしていきましょう。他に楽しいことがあれば、自然にやめるようになります。
世間体などの理由で止めさせたくなるものですが、一般的には3歳頃までには自然に治るため、焦らずに見守ってきましょう。
もし、6歳頃の小学校入学後も、昼夜、頻繁に指しゃぶりをする場合、特別な対応をしないと治らないことがあるため、その場合は放置しないようにしましょう。
小児歯科から小児神経科医、臨床心理士への相談が必要になることもあります。
チック(チック症)について
チック(チック症)の動きは本人の意思ではありません
チックとは、反復される意味のない動きのことをいい、一種の癖のようなものです。
3~4歳頃から目立ちはじめ、奇妙な動作を繰り返すため心配になることも多いですが、チックも幼少児では珍しくなく、以下のような動作が特徴です。
チックの症状:「運動チェック」と「音声チック」
■運動チック
・目をパチパチさせる
・首を左右に振る
・腕を振る
・顔をしかめる
・肩をすくめる
・ジャンプ、人を叩くなど
■音声チック
・咳払い
・鼻をならす
・奇声、動物のような声を出す
・雑言症(汚い言葉や不謹慎な言葉を繰り返す)
これらの言動は、本人は意識してやっているのではありません。一時的にやめることはできますが、気が付くとやっています。
チックの原因は脳機能異常も関係
チックは、心と体の成長、発達の過程で多くの子どもにみられるものですが、チックの原因は、不安や緊張などの大きなストレスがあるために起こると考えられてきました。
親子関係や環境など、心の問題が主流とされてきましたが、最近では、神経の病気ともいわれ、脳内物質の代謝異常によって起こる「脳機能異常」が主な原因とされています。
子どもの頃に症状が現れるのは、まだ脳が発達段階にあるためです。
チックは7~8歳の学童期にピークがあり、多くは一過性のもので自然に治りますが、慢性化することもあります。
チックは無理にやめさせようとすると悪化も
奇妙な行動や言動は、どうしてそのようなチック症状が出るのか本人も分からないため、子どもを責めても意味がありません。
チックの動作を子どもに意識させると、余計に症状が強くなることがあります。
一過性チックのほとんどは、成長と共に軽くなり、無くなっていくことが多いため、無理にやめさせようとしたり叱ったりせす、経過を観察しましょう。
トゥレット症候群の併発に注意
多彩な運動性チックと音声チック症状が現れ、1年以上続く場合、「トゥレット症候群」という精神神経疾患の可能性があります。
小児期には「ADHD(注意欠陥多動性障害)」、10歳以降には「強迫性障害」などを併発することがあります。
トゥレット症候群は、遺伝的な要因もありますが、脳内神経伝達物質ドーパミンの過剰活動が原因となる「脳機能障害」とされ、症状も強く、日常生活や学校生活に支障が出るため、薬物療法などが必要な場合があります。
症状が長引く場合は、小児心療内科や児童精神科に相談しましょう。
子どもの自慰(じい)・オナニー様行為について
子どもの自慰は大人とは全く違うもの
子どもが、自分の性器や陰部を触ったり、何かに押し付けたりして気持ちがいいと感じることがあります。このような幼児の自慰・オナニーのように一見みえる行為は、思春期以降のマスターベーションとは全く違うものです。
子どもの自慰は男児にも女児にもあり、生後数ヶ月からみられることもある自然な行為で、性的な意味ではなく、成長段階の行動によるもので多くの子どもに見られます。
ただ、時に足を固く閉じて全身に力が入り、顔を赤らめ、呼吸が荒くなったりするため、その様子にショックを感じたり、いつでも人前でも、自慰行為をする子どもに困っていて、どうしたら止めさせられるのかと悩んでいるという親御さんもたくさんいます。
自慰の原因は、身体への探求心から
乳児は、自分の身体の色々な部分を触って、身体の作りや動きを確かめています。いわば探検している感じです。
たまたま性器や陰部が手の届きやすいところにあるため、退屈やストレスを感じた時に、何気なく触っていたら気持ちよかったり、独特の感覚になったりしたために繰り返し行うと考えられます。
耳を触ったり、鼻ほじりをするのと同じで、単に気持ちがいいと感じて繰り返しているにすぎません。
また、きっかけが炎症やかゆみがあるため、触っているうちに癖になる場合もあります。
無理に止めさせず罪悪感を与えない
子どもが自慰行為をしても、体や心の発達に悪影響を及ぼすことはありません。
体の発達に応じて刺激を求める場所は変化していくので、幼児期には、よほど深刻な行動をしない限りは、無理にやめさせる必要はないでしょう。
その後、学童期、思春期以降の年齢では、自慰は自然な行為のため、大切なのは、強く叱ったりしないことです。叱られることで、性に対して罪悪感や羞恥心を植え付けることになってしまい、健全な成長を妨げることになります。
まずは親子で接する時間を増やしたり、運動や習い事などに興味を他に向けたりすることで、自然に消えていきます。
注意する点としては、「人前ではしないように」や「触るとバイ菌が入って痛くなるよ」などと言ってあげましょう。
細菌感染に注意
性器や陰部をよく触ってしまうことで、タト陰部の炎症や包皮炎(ほうひえん)になるなど、細菌感染を起こすこともあります。
最初のきっかけがかゆみや炎症の場合もあり、いずれも気づかないと悪化することがあるため、体の状態をよく見て、早めに見つけてあげることが大切です。

image by
illust AC
さいごに
幼児は大人では人前でしないようなことを無意識にしてしまうものですが、自分たちも子どもの頃に、同じように色々な癖があったかもしれません。
いずれも子どもの成長過程に起きるもののため、焦らず、温かく見守りながら対処してあげたいですね。