はじめに

抗コリン薬は神経伝達物質のアセチルコリンがアセチルコリン受容体に結合するのを阻害し、副交感神経を抑制する作用があります。

これまで、抗コリン薬による認知機能の低下は投薬を中止すればもとに戻るものだと考えられてきましたが、ワシントン大学の研究者らが行った大規模な調査により、抗コリン薬の長期使用がアルツハイマー型認知症を含む認知症の発症リスクとかかわることが明らかになりました。

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三環系抗うつ薬や抗ヒスタミン薬など、広く使われる薬も抗コリン作用に注意

JAMA Internal Medicine誌に論文掲載されたワシントン大学薬学部のShelly Gray博士らによる研究では、約3500人の高齢者(調査開始時に65歳以上)の平均追跡期間7.3年間分のデータを分析しました。
追跡期間中に797名が認知症を発症し、うち637名(約80%)がアルツハイマー型認知症だったとのこと。
抗コリン薬の服用と認知症の発症率には有意な相関が見られたそうです。

抗コリン作用のある薬には、三環系抗うつ薬や頻尿・尿失禁改善薬として使われるムスカリン受容体拮抗薬のほか、処方箋なしで買える第一世代の抗ヒスタミン薬など広く使われている薬も含まれます。
第一世代抗ヒスタミン薬の代表的なものとしては、酔い止めの「トラベルミン」や睡眠改善薬「ドリエル」、アレルギー薬の「ベナ」「レスタミン」の有効成分であるジフェンヒドラミンや、花粉症によく処方される「ポララミン」「アレルギン」の有効成分であり風邪薬の「新エスタックゴールド」「ベンザブロック」「コンタック」シリーズなどにも配合されるクロルフェニラミンが挙げられます。

今回の研究では、三環系抗うつ薬のドキセピン(「Sinequan」など、日本未発売)を1日10mg以上または第一世代抗ヒスタミン薬のクロルフェニラミンを1日4mg以上、過活動膀胱治療剤のオキシブチニン(「Ditropan」など、日本ではテープ剤の「ネオキシテープ」の有効成分)を1日5mg以上などの服用量で、3年以上の服用期間で認知症のリスクが増大するとしています。
参考までに、クロルフェニラミンを1日4mgというのは、花粉症などに処方される際の1日の用量(成人1回2~6mgを1日2~4回など)に収まる量です。

もちろん、認知症リスクが高まるからといって自己判断で服薬を中止することは大変危険です。
うつには三環系抗うつ薬のかわりにSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、アレルギーには第一世代抗ヒスタミン薬のかわりにロラタジンなどの第二世代抗ヒスタミン薬といった選択肢があります。
医療従事者は高齢の患者がどういった薬を服用しているか、OTC薬品も含めて把握し、抗コリン薬を減らせる余地がないか定期的に見直す必要があるとGray博士は語っています。

おわりに

三環系抗うつ薬やムスカリン受容体拮抗薬は、高齢者のうつや膀胱障害に処方されることの多い薬であるほか、第一世代抗ヒスタミン薬は薬局で処方箋なしで買え、花粉症などで常用する人も多い薬となっています。
医療従事者だけでなく薬を手に取る側も、抗コリン薬のリスクを理解し、飲み方を見直す必要があるかもしれません。