はじめに ~子どもが大きないびきをかいていたら要注意~

子どもが大きないびきをかいていたら、良く寝ていると思いがちですが、それは病気のサインかもしれません。

 

大きないびきを特徴とする睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep apnea syndrome)は、寝ている間に呼吸が何回も止まってしまう病気です。

頭文字を取って、SAS(サス)と呼ばれています。

 

睡眠時無呼吸症候群は、成人の病気としてよく問題視されていますが、子どもは見過ごされることが多いようです。

良い睡眠は健康維持には欠かせませんが、特に子どもは成長や発達に大きな影響をもたらすため、見逃さないことが大切です。

 

今回は「小児睡眠時無呼吸症候群」の症状から対処法までの大切なポイントを解説します。

睡眠時無呼吸症候群の定義とは?

睡眠時無呼吸症候群は、成人と小児では以下のように基準が異なります。

 

成人の場合は、「平均10秒以上の無呼吸が、1晩(7時間の睡眠中)に30回以上、または1時間に平均5回以上ある」とされています。

 

小児の場合は、「無呼吸が10秒に至らなくても、2回分の呼吸停止がある」とされています。

 

子どもは年齢や成長と共に、呼吸数や睡眠の生理機能が変化するため、基準を設けるのは難しいとされていましたが、2005年改訂の国際睡眠障害分類第2版で初めて独立した疾患となり、診断基準が示されました。

小児の無呼吸の原因は扁桃組織(へんとうそしき)の肥大

小児のSAS:睡眠時無呼吸症候群の原因は、アデノイド(咽頭扁桃:いんとうへんとう)と、口蓋扁桃(こうがいへんとう)の肥大により発症します。

アデノイドは、鼻の突き当たりで鼻と喉がつながるところにあるリンパ組織のひとつで、3~6歳で最大になります。

口蓋扁桃(こうがいへんとう)は、扁桃腺とわれるのどの両サイドにあるリンパ組織のかたまりで、5~7歳で最大になります。

 

どちらも免疫作用を強めるために幼児期に肥大します。個人差はありますが、10歳頃の学童期後半には次第に縮小します。

肥大すること自体は異常ではありませんが、大きくなり過ぎると気道がふさがれて狭くなり、睡眠中にいびきや無呼吸が起こります

 

子どものSASは、ほとんどが上気道の閉塞によっておこる「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」です。

アレルギー性鼻炎・肥満も影響

近年、花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎が増加し、長びく鼻炎や鼻づまりにより、副鼻腔炎(蓄膿症)が原因にもなっています。また、子どもの生活習慣病も増加し、肥満により気道が狭くなりやすいことも指摘されています。

 

花粉症などや肥満は、どちらも小児に増えているため、今後、小児の無呼吸症候群の患者も増えるのではなないかと考えられています。

小児睡眠時無呼吸症候群は成長期と重なる

個人差はありますが、子どもは2~6歳に多く見られます。

 

成人の場合は、30代~60代の男性に多く、女性は比較的少ないのですが、更年期以降にかかりやすくなります。

 

2~6歳の時期は、ちょうど扁桃組織の肥大と、心身の発達の時期が重なります。ただし前述したアレルギー性鼻炎や肥満なども原因となるため、子どもでも幅広い年齢に起こります。

 

現状、小児のSASは、新生児から小学生までの子どもの1%~3%に見られていますが、潜在患者も多いといわれているため、注意が必要です。

子どもの睡眠時無呼吸症候群の症状は?

本来、熟睡している時は、スヤスヤと寝ているものです。

睡眠時や日常で下記の症状が見られたら、睡眠時無呼吸症候群が疑われます。

睡眠時の症状

・大きないびきを繰り返す

・呼吸が数秒間止まる

・眠りが浅く、何度も起きる

・座ったまま寝るなど変な寝姿勢

・陥没呼吸(呼吸時にみぞおちがペコペコへこむ)

・咳き込む

・寝汗、夜尿

起床時の症状

・寝起きが悪い

・不機嫌

・口が渇いている

・頭痛

日常生活

・鼻がいつも詰まっている

・口呼吸

・アデノイド顔貌(口をポカンと開けて舌を突き出した特有の顔つき)

・長時間の昼寝(幼稚園、小学校での居眠り)

・哺乳や食欲の低下

・イライラして怒りっぽい

このような様々な症状がありますが、睡眠時無呼吸との関係に気づかないことも多いため、これらの症状を知っておき、見落とさないようにしましょう。

睡眠時無呼吸症候群は心身の発達に影響

SASを発症している子どもは、深い睡眠ができず、成長ホルモンの分泌低下がおこるため、以下のような影響が生じます。

 

・漏斗胸:ろうときょう(肋骨や胸骨の変形)

・体重が増えない、きゃしゃ

・低身長

・学業不振、成績低下

・ADHD(注意欠陥多動障害)のような集中力・注意力散漫・乱暴行為

・精神面の発達遅滞

 

このように、心身の成長や発達に大きな影響をもたらしてしまいます。

また窒息により乳幼児突然死を引き起こすこともあります。

 

成長ホルモンは、睡眠が深くなった時に脳の下垂体から分泌されるため、子どもの発達にはしっかり眠れていることが非常に重要なのです。

 

子どものいびきが気になったら、長期間放置せず、まずは耳鼻咽喉科を受診し、必要であれば、睡眠障害の専門外来を受診しましょう。

睡眠時無呼吸症候群の診断

診断は内視鏡やエックス線で上気道の閉塞を調べたり、専用の検査機器で睡眠中の呼吸やいびき、心拍などをモニターします。また睡眠中の状況をビデオ記録し、子どものいびき、顔、胸部を記録してもらいます。

呼吸障害がひどい時に、胸をはだけた状態で5~10分間記録してもらうと、苦しい呼吸の時に胸がへこむ「陥没呼吸」などを確認するのも役立ちます。

睡眠時無呼吸症候群の治療法

SASの治療法には「保存的治療」と「外科的治療」があります。

保存的治療

点鼻薬や、抗アレルギー薬などの内服薬による薬物治療で、症状を軽減し、経過観察で十分な場合もあります。

肥満の場合は減量に取り組みます。また鼻に装着したマスクから空気を送りこむことによって呼吸を楽にする「CPAP:シーパップ(経鼻的持続陽圧呼吸療法)」なども

あります。

ただしこれらは、長期間の治療が必要な場合があるため、重症度により医師と相談の上、手術も含めた治療法を選択します。

外科的治療(手術)

保存療法では効果が無く、いびきや他の症状を繰り返す場合、「アデノイド切除術」「口蓋扁桃摘出術」を検討します。

 

手術時期は、扁桃組織の肥大時期の3~6歳に行うことが多いのですが、3歳未満でも行うことがあります。手術は全身麻酔で行われ、術後約1週間の入院を要することになります。乳幼児でも可能な手術で、ほとんどが大きく改善するため、アデノイドが小さくなるのを待たずに、手術を行う場合があります。

 

いずれにしても、小児睡眠時無呼吸症候群は、放置すれば成長・発達に障害が出る可能性が高いため、早期の診断、治療が大切です。

 

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illsut AC

さいごに

睡眠時無呼吸症候群:SASは、年齢関わらず、非常に注意すべき疾患の1つとされていますが、生活習慣なども含め、今後小児SASは増えていくともいわれています。

 

子どもの発達や行動に問題があるなど、気になることがあるときは、睡眠の様子を注意して見てあげて、症状が見られたら早めに対策することが大切です。