乳腺炎(にゅうせんえん)はなりかけに注意!乳腺炎の原因・症状・治療法・ケア方法
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薬剤師監修日:
出産後の1/4の女性に起こる乳腺炎について、原因や症状、ケア方法など、知っておきたいことをまとめています。
この記事は1年以上前に医療従事者により監修されたものです。情報が古い可能性があります。

はじめに
乳腺炎(にゅうせんえん)は多くの産後のママが悩んでいるトラブルの1つです。
せっかく母乳が出るのに、赤ちゃんとの大切な授乳タイムが困難になってしまうことはとてもつらいことですね。
頻度の高いトラブルのため、原因や治療法、ケア方法を知っておきましょう。
乳腺炎ってどんな病気?
乳腺炎は、出産後に母乳を生成する乳腺に炎症が起きたもので、軽度~重度まで種類や段階があります。
特に産後10日~28日頃に起こることが多く、授乳中のママの1/4に起こっている程、頻度の高いものです。
出産に限らず、乳頭や乳輪などに傷ができた時に細菌感染を起こして炎症が起こる場合も乳腺炎になります。
乳腺炎の原因は?
赤ちゃんかママかどちらかの問題にもよりますが、以下のような原因があげられます。
▶新生児は哺乳力が未熟なため上手く吸いきれず乳汁が溜まってしまう
▶乳汁の過剰分泌
▶授乳回数が少ない
▶乳頭に損傷があり細菌が乳管に侵入する
▶きついブラジャーなどで乳房が圧迫される
▶過労、ストレス、栄養不足
などが主な原因です。
乳腺炎の種類と段階は?
乳腺炎には「非感染性乳腺炎」と「感染性乳腺炎」があります。
1)急性うっ滞性乳腺炎(非感染性)
産後間もない時期、まだ乳管が充分に開いてないため、乳管の詰まりによって乳汁が乳腺内に溜まってしまい炎症が起こります
2)細菌性乳腺炎(感染性)
乳腺に細菌(主に黄色ブドウ球菌)が入り込んで炎症を起こしているものです。
3)乳房膿瘍(にゅうぼうのうよう)
細菌性乳腺炎が重症化すると、乳腺の周囲組織に膿がたまる「乳房膿瘍」を起こすことがあります。
乳腺炎の治療が遅れたり治療を続けられない場合、重症化することがあるため注意が必要です。
乳腺炎の症状は?
・乳房に熱をもつ(全身の発熱は伴わない)
・乳房が赤みを帯びて腫れる
・部分的に固くなる、しこりができる
・腕を上げたり触ると痛む
・片側に起こる場合と両側に起こる場合がある
◯乳房膿瘍(にゅうぼうのうよう)になると
上記の症状がさらに悪化します。
・39度以上の高熱
・ズキズキとした激しい痛み
・倦怠感、悪寒、関節痛いなどインフルエンザ様の症状
・わきの下のリンパ節も腫れる
など、乳腺炎から乳房膿瘍へと一続きに変化することがあり、全身症状をともなうこともあります。
乳腺炎の治療法は?
産婦人科にて細菌の種類や潰瘍ができていないかを調べてもらい、状態により治療法を選択します。
頻回に乳汁を取り去る
まずは頻回に効果的に乳汁を出すことが最も重要です。赤ちゃんにはトラブルのある方のおっぱいから飲ませるようにします。
乳腺炎時には乳房の状態やおっぱいの出方が通常と異なるため、赤ちゃんが乳房を嫌がったりすることもありますが、赤ちゃんをなだめながら根気よく授乳を続けるようにします。
もし赤ちゃんに吸われると乳首が痛い、赤ちゃんが嫌がって飲まないなどで飲み残しがある場合は、手で搾乳し、乳汁を取り去るようにします。
温湿布やマッサージ
乳汁を流れやすくするために、授乳または搾乳直前に、温湿布によって温めることが効果的です。
授乳後や搾乳後は温湿布は行わず、心地よければ冷湿布を使いましょう。
また軽度の場合は、乳房のマッサージも効果的です。あくまでも優しいマッサージで痛みを感じるマッサージはNGです。
適切なマッサージであれば改善することがあります。医師や熟練の助産師さんなどに指導を受けましょう。
十分な水分と栄養
過労は乳腺炎の大きな原因の一つとなる為、家事などは家族や周りの方に援助や協力をしてもらいましょう。
バランスのよい食事と十分な水分補給、休養が大切です。
薬物療法
鎮痛剤のアセトアミノフェン、イブプロフェン、漢方薬の葛根湯などを服用します。葛根湯は一般用医薬品としても販売されていますが、医師に処方してもらうと安心でしょう。ただし鎮痛剤も葛根湯も数回の服用は問題ありませんが、常用はやめましょう。
急速に症状が悪化する場合には、ペニシリン系の抗菌薬で治療します。
細菌性感染症が持続したり、乳房膿瘍になるなど重症乳腺炎の場合は、点滴治療や時に入院治療、切開して膿を出すなどが必要になる場合があります。これらは保険診療が適応になります。
治療中に授乳は続けてもいいの?
乳腺炎を起こしていると授乳はしないほうがいいのでは?と思われがちですが、乳腺炎をおこしている乳房からの授乳中止は、乳腺炎の回復には役にたたず、かえって状態を悪化させる危険があるということが分かっています。
感染性乳腺炎で黄色ブドウ球菌が確認されていたとしても、抗生物質による治療をしながら授乳をすることによって乳腺炎は改善されます。
赤ちゃんへの安全性については、乳腺炎発症で授乳を続けたケースの中で有害な影響はありません。一般的に安全であるとして授乳を継続することを勧めています。
そのため急に授乳を中止することはせず、医師とよく相談し、治療を続けながら授乳することが改善の近道になります。
予防法はあるの?
産後には日頃から以下のことに気を付けましょう。
◯しこりや痛みなど乳房のチェックができるようにしましょう
◯乳房が張っている時は手搾乳か搾乳器で乳汁を出しましょう
◯授乳の回数を増やしましょう
◯常に手と乳房を清潔にしましょう
◯家事などは周りに手助けを求め、疲労を溜めないよう休息を取りましょう
さいごに
乳腺炎は初産のママに多いといわれ、二人目以降にはトラブルはぐっと減ってくるようです。
最初の赤ちゃんの時に乳腺炎になったからといって、もう授乳はできないということはないので、赤ちゃんとの授乳ライフを楽しむためにも、乳腺炎のサインを見逃さず「変だな」と感じたら早めに産婦人科を受診しましょう。
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