アルプラゾラムは抗不安薬であるソラナックス、コンスタンの成分です。ジェネリック医薬品は複数のメーカー(会社)から、成分名の「アルプラゾラム錠」という名前で販売されています。
心身症における不安や緊張を和らげたり、抑うつ状態に効果を発揮するベンゾジアゼピン系の薬です。このほか心身症における睡眠障害への効果も認められています。
この記事ではアルプラゾラムについて詳しく紹介します。
アルプラゾラムの使い方、用法・用量について
通常、成人は1日1.2mgを1日3回に分けて使用します。
年齢や症状の度合いにより量は調整し、増量する場合は上限を1日2.4mgとして少しずつ増量し、1日3~4回に分けて使用します。
高齢者は1回0.4mgを1日1~2回の使用から開始して、増量する場合でも1日1.2mgを超えないものとされています。
過剰投与は副作用が現れる可能性を高めてしまうため、医師の指示のもと用法・用量は必ず守るようにしましょう。
なお、15歳未満の子どもに対する安全性は確立されていません。また、妊娠中は治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること、授乳中の場合は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせることとされています。
使用上の注意
アルプラゾラムは次のような方は使用ができません。
・アルプラゾラムが含まれる薬にアレルギー反応を起こしたことがある方
・急性閉塞隅角緑内障のある方
・重症筋無力症の方
・インジナビルなどの、HIVプロテアーゼ阻害剤を投与中の方
アルプラゾラムの生活上の注意:アルコールやほかの薬との飲み合わせは?
アルプラゾラムの効果、ほかの薬との強さの比較
アルプラゾラムの作用には「GABA」という脳内神経伝達物質が関わっています。
GABAは、私たちの脳の中で興奮を抑制してリラックスさせる大事な役目を担っています。
アルプラゾラムにはGABAの働きを促す効果があり、GABAの働きが強まることで、心を落ち着かせ不安を取り除く、眠りを誘うといった作用を示します。
具体的には、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症といった心身症における身体の症状に加え、不安・緊張・抑うつ・睡眠障害に効果があります。
アルプラゾラムの効果の強さ︎
ジェネリック医薬品と先発薬は全く一緒の薬ではありませんが、ほぼ同等の効果があるといえるため、アルプラゾラムの先発薬であるソラナックス、コンスタンの添付文書から確認しましょう。
ソラナックスの臨床試験において、心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)に対する全般改善度では50~70%近くが改善が感じられたという報告があります。
また、心身症の症状別では不安、緊張、抑うつ、睡眠障害等の改善に効果を発揮し、投与開始後通常1週間で効果があらわれているようです。
疾患名 | 例数 | 改善度(%) |
胃・十二指腸潰瘍 | 151 | 69.5 |
過敏性腸症候群 | 79 | 57.0 |
自律神経失調症 | 53 | 71.7 |
計 | 283 | 66.4 |
他の薬との効果の比較
抗不安薬の強さの指標になる葛藤行動緩解作用・馴化作用・鎮静作用について、同じベンゾジアゼピン系の抗不安薬「ジアゼパム」と比較した実験結果を見てみましょう2)。
*以下全てラットを使った実験で、()内の数字は効力比です。
①葛藤行動緩解作用
アルプラゾラム | ジアゼパム | |
葛藤行動緩解作用 | 5MED mg/kg (2.0) | 10 MED mg/kg (1.0) |
②馴化作用
アルプラゾラム | ジアゼパム | |
嗅球摘出ラットの情動過多に対する抑制作用 | 14.0 ED50mg/kg(2.6) |
37.0 ED50mg/kg(1.0) |
嗅球摘出ラットの殺し行動に 対する抑制作用 | 16.5 ED50mg/kg(2.4) |
40.0 ED50mg/kg(1.0) |
中脳縫線核破壊ラットのマウス殺し行動に対する抑制作用 | 6.2 ED50mg/kg(6.5) |
40.0 ED50mg/kg(1.0) |
③鎮静作用
アルプラゾラム | ジアゼパム | |
チオペンタール麻酔増強作用 | 0.11 ED50mg/kg(4.8) |
0.53 ED50mg/kg(1.0) |
エーテル麻酔増強作用 | 0.34 ED50mg/kg(7.6) |
2.6 ED50mg/kg(1.0) |
エタノール麻酔増強作用 |
0.74 ED50mg/kg(6.2) |
4.6 ED50mg/kg(1.0) |
以上のデータから、葛藤行動緩解作用・馴化作用・鎮静作用においてはジアゼパムの2~7倍アルプラゾラムが強力であるということがわかります。
アルプラゾラムの効果が感じられる時間は?
アルプラゾラムの効果は、「最高血中濃度到達時間」と「半減期」の指標を使ってみていきます。
最高血中濃度到達時間
最高血中濃度到達時間とは、薬の使用後、血液中の薬の成分が最も多くなる濃度に到達するまでの時間のことです。
アルプラゾラムの最高血中濃度到達時間は約2時間とされています。個人差はありますが、およそ0.5〜1時間で効果が現れ始めるため、比較的即効性があるといえるでしょう。
半減期
半減期とは、血液中の薬の成分の濃度が半分になるまでの時間のことです。
アルプラゾラムの半減期は約14時間。アルプラゾラムは使用してから約14時間経つと血中での薬の濃度が半分になります。
アルプラゾラムを1日3回使うような場合は、8時間おきに使用すると考えると、半減期の14時間よりも短い間隔となるため、飲み続けることで常に一定量の薬が血中に存在することになり、効果の持続が期待できます。
決められた用法を守ることによって、アルプラゾラムはある程度の即効性と、効果の持続性を期待することができます。
アルプラゾラムの副作用とその頻度は?依存性についても解説
アルプラゾラムの主な副作用は、傾眠(4.31%)、めまい(1.38%)、倦怠感(0.53%)、ALT(GPT)上昇(0.33%)、口渇(0.30%)等です1)。
症例調査のうち、全体の6.67%で副作用がでたという結果になっています。この割合は、同じベンゾジアゼピン系といわれる薬と比較すると特に頻度が高いわけではないため、比較的安全に使えるとされています。
また、発生頻度はまれですが重大な副作用として、依存性、離脱症状、刺激興奮、錯乱、アナフィラキシー、肝機能障害、黄疸には注意が必要になります。
なお、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、アルプラゾラムを使用中は、車の運転や危険をともなう機械の操作を避けましょう。
依存性の副作用
アルプラゾラムを含むベンゾジアゼピン系抗不安薬は、特徴的な副作用として「依存性」があります。
その頻度は不明となっており、決しておこりやすいものではありません。
ですが、依存性が強くなると、薬を使用しなければけいれん発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想といった離脱症状が起こってしまう状態になる可能性があります。
薬物依存は一度なってしまうと抜け出すのは容易ではありません。薬物依存を防ぐためには医師の指示通りに正しく使用することがとても重要です。なお、アルプラゾラムの依存性は他のベンゾジアゼピン系薬物とほぼ同等といわれています。
アルプラゾラム以外の薬剤についても依存性の危険があることを知っておきましょう。
アルプラゾラムの生活上の注意:アルコールやほかの薬との飲み合わせは?
アルコールとの関係について
アルコールとアルプラゾラムを併用すると、中枢神経抑制作用が増強される可能性があります。その結果、眠気、注意力、集中力、反射運動能力などの低下が起こり、思わぬ事故などにつながる危険性があります。
アルコールとアルプラゾラムの併用は禁止されてはいませんが、「併用注意」すべきものとして挙げられているため、アルプラゾラム服用中はなるべく控えましょう。
併用禁忌の薬
アルプラゾラムは次の薬と一緒に飲むことができません。
・HIVプロテアーゼ阻害剤(インジナビル等)
他にも飲み合わせに注意が必要な薬が複数ありますので、アルプラゾラムを使用している場合は、医療機関を受診した際に必ず医師に申告しましょう。
アルプラゾラムと同成分の市販薬
アルプラゾラムと同じ成分が配合された市販薬はありません。(2023年2月現在)
おわりに
アルプラゾラムは、比較的効き目の早い心身症の症状を緩和する薬です。副作用として依存性が起こることがあるため、医師・薬剤師の指示に従った使用が大切です。
アルプラゾラムなどの抗不安薬を使用する際は、必ず用法・用量を守って使用しましょう。一定期間使用しても薬の効果が感じられない場合は、早めに医師に相談してください。
1) ソラナックス 添付文書
2) ソラナックス インタビューフォーム