貧血の薬の副作用で下痢・便秘・吐き気|鉄剤の副作用の対処法は?
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薬剤師監修日:
貧血で使う薬である鉄剤の副作用について徹底解説。吐き気・下痢・便秘などの副作用が現れた場合の対処法についても解説します。また、妊婦が鉄剤を服用して副作用が現れたときの対処法についてもあわせて紹介。鉄剤だけに頼らず、食生活を見直すことによって鉄を摂取することができるように、貧血におすすめの食べ物も紹介します。

貧血に処方される薬で副作用が出ることは珍しいことではありません。
ただでさえ貧血の症状がつらいのに、薬の副作用まで出てしまうと余計につらくなりますが、一度貧血になってしまうと、鉄剤を服用しなければなかなか改善できません。
貧血を治すためにも、鉄剤の副作用が出たときには自己判断で薬をやめるのではなく、適切な対処を行うことが大切です。
この記事では、鉄剤の副作用と副作用への対処法、鉄剤に頼らないための貧血予防法を紹介します。
鉄剤の副作用と対処法
鉄剤の主な副作用は胃腸障害です。
胃腸障害の内訳は、吐き気・嘔吐・胸焼け・腹痛・下痢・便秘・便の黒色化などがあげられます。胃腸障害以外では、蕁麻疹(じんましん)や発疹を訴える方もいます。
副作用への対処法
鉄剤の服用で副作用が起きた場合、以下のような対処で改善することがあります。
・服用のタイミングを変更する
・1日あたりの服用量を減量する
・1日の服用量は変えずに服用回数を増やす など
ただし、自己判断で薬の量や飲み方を変更することは危険です。
副作用が出た場合は、必ず医師または薬剤師に相談して指示をあおぎましょう。
上記を行っても副作用が改善されない場合は、薬を変更することもあります。
医師が処方する薬には、飲み薬ではなく静脈注射で鉄を補給するものもあります。
なお、副作用の原因として、ノセボ効果(副作用がでると思い込むことで症状がでる)などの精神的な要因もあげられています。
生理や体への影響は?
鉄剤を使用してから、生理の出血が増えた、太ってしまったなど、さまざまな症状に気づくことがあります。
基本的には鉄剤の副作用は消化器症状であり、生理や体重に直接影響することはありません。
ただし、貧血の原因となる病気が生理や体の不調に影響しているおそれもあります。気になる症状がある場合は病院を受診しましょう。
妊婦の鉄剤の副作用への対処
妊娠中は血液が薄くなるため、貧血になりやすい状態です。多くの妊婦が貧血の診断を受けて鉄剤を処方されています。
貧血の状態は母体だけではなく胎児にも影響が出ることがあるため、鉄剤を服用するなどしてなるべく早めに対処をしましょう。
しかし、鉄剤による副作用の嘔吐に悩まされる方が多いのも事実です。
鉄剤の副作用がつらい場合は、薬の変更や胃薬の併用、静脈注射での鉄分摂取に切り替えるなど、さまざまな対処が可能です。
自己判断で薬をやめたり変えたりせず、まずは早めに医師に相談しましょう。
貧血時に処方される主な鉄剤と副作用
鉄欠乏性貧血に処方される経口薬の鉄剤と添付文書に記載されている副作用を紹介します。
商品名 | 鉄含有量 | 添付文書に記載の副作用 |
フェロミア | 50mg/1錠 | 悪心・嘔吐・上腹部不快感・ 胃痛・腹痛・下痢・ 食欲不振・ 便秘・胸やけ・腹部膨満感など |
フェロ・グラデュメット | 105mg/1錠 |
悪心・嘔吐・腹痛・食欲不振・胃部不快感など |
フェルム | 100mg/1カプセル | 吐き気・悪心・胃痛・腹痛・下痢・便秘・嘔吐・食欲不振など |
鉄剤服用時の注意
◼︎水や白湯で飲む
薬を飲むときは水や白湯で飲むことが基本です。
なお、昔はお茶やコーヒーに含まれるタンニンが鉄の吸収を妨げるといわれていましたが、最近の研究によると、お茶を飲んでも治療に必要な量の鉄は吸収されるということが判明しました。
したがって、鉄剤を服用しているからといってお茶を避けなくても問題ないですが、あえてお茶やコーヒーで鉄剤を飲む必要はありません。
鉄剤を飲むときは空腹時を避けてコップ一杯の水か白湯で飲みましょう。
◼︎鉄欠乏状態ではない場合は服用しない
鉄剤を使用する必要がある方は、鉄欠乏状態にある患者のみになります。
鉄欠乏状態でない方が鉄剤を服用すると鉄分の過剰摂取により、嘔吐や腹痛などのさまざまな症状が現れる場合があるため、医師の処方のもと用法・用量を守って服用しましょう。
◼︎他の薬との飲み合わせに注意
薬の成分によっては、相互作用により鉄分の吸収を阻害することもあります。
鉄剤以外の薬を服用している際は、市販薬や漢方薬であっても事前に医師や薬剤師に相談してください。
食生活を見直して貧血を改善
処方された鉄剤だけではなく、毎日の食事で鉄分を効率良く摂取することも重要な貧血対策です。鉄剤の服用とあわせて、日々の食事を見直しましょう。
食物に含まれる鉄分は、体内への吸収率が10〜20%となる「ヘム鉄」と、吸収率が2〜5%の「非ヘム鉄」に分かれます。
ヘム鉄は主に肉(牛・豚・鶏)や赤い魚に含まれ、非ヘム鉄は海藻類、野菜、穀類、果物に多くみられます。
食べ物の種類によっても、鉄の吸収率が大きく違うので、ヘム鉄が多く含まれているものを吸収のいい食品や調理法と合わせて摂取することが大切です。
また、ヘム鉄だけとればいいわけではなく、バランスよく栄養をとることが大事です。非ヘム鉄は、たんぱく質・ビタミンC・ビタミンB6・ビタミンB12・葉酸などの栄養素と一緒に摂取することを覚えておきましょう。
鉄分・たんぱく質・ビタミンC・ビタミンB12・葉酸といった栄養素を含む食品は次のようなものがあります。
栄養素 | 食品 |
鉄分 | ひじき・しじみ・レバー・卵黄・ほうれん草・小松菜・まぐろ・カツオ・いわし・あさり・大豆など |
たんぱく質 | 牛肉・豚肉・鶏肉・レバー・卵・魚・牛乳・チーズ・大豆・豆腐など |
ビタミンC | ピーマン・パセリ・キャベツ・ブロッコリー・ほうれん草・ゴーヤ・いちご・レモン・みかん・オレンジなど |
ビタミンB12 | レバー・しじみ・あさり・牡蠣・まいわし・卵黄・チーズなど |
葉酸 |
レバー・卵黄・大豆・納豆・ほうれん草・ブロッコリー・菜の花・アスパラガス・えだまめ・モロヘイヤ・玉露・わかめなど |
おわりに
あらわれる症状が薬の副作用かどうかを知りたい場合は、薬を処方してもらった薬局の薬剤師もしくは主治医に確認をしましょう。
自己判断で副作用と断定して服薬を中止してしまうのはやめましょう。