クラリスドライシロップ10%小児用(クラリスDS)は、主に細菌による感染症の治療や予防に広く使われている抗生剤です。身近な病気では風邪や中耳炎などの症状があらわれると処方されることがあります。
抗生剤のなかには苦味を感じやすい薬も少なくありません。抗生剤であるクラリスドライシロップの味も最初は甘く感じるものの、次第に苦くなるため、子どもにとっては苦いと感じる薬のひとつです。
ドライシロップとは、本来、水に溶かして飲んだり、粉を口の中に含み水で飲みこむ粉薬です。
薬と一緒に飲む飲み物や食べ物に注目し、クラリスドライシロップの苦味を感じさせないで飲ませる方法を紹介していきます。
クラリスドライシロップはコーヒー牛乳・ココアなどと飲むと苦味を感じづらい
クラリスドライシロップはストロベリー風味のピンク色の粉末です。
水に溶かす場合は、飲ませる直前に小さじ1~2杯ほどの少量の水に混ぜて飲ませてあげてください。
しかし、こどもが嫌がって飲ませにくい時は次のようなものに混ぜると飲ませやすくなります。
・アイスクリーム(バニラ、チョコレート)
・プリン
・コンデンスミルク(練乳)
・お砂糖
・ココアパウダー
・クリームパウダー・ミルク(コーヒー用)
・ピーナッツクリーム など
このほか、クラリスドライシロップを飲むとき、一緒に飲むと苦味を感じづらい飲み物にはコーヒー牛乳や牛乳、ココアなどがあります。
コーヒー牛乳やココアなど、飲み物の場合はクラリスドライシロップをあらかじめ飲み物に混ぜてから飲んでもかまいませんし、薬を一旦、粉の状態で口の中に投与し、コーヒー牛乳やココアで流しこんでもかまいません。
粉薬が飲みづらくて苦手な子どもにとっては、あらかじめ液体に薬を混ぜてしまうと飲みやすさは格段にあがります。
しかし、苦味の面からみると粉のまま口に入れて液体などで飲んでしまった方が苦味を感じにくい傾向があります。
バニラアイスクリームやプリンと一緒にクラリスドライシロップを飲む場合は、薬を上にまぶすのではなく、バニラアイスクリームやプリンで包み、そのまま飲み込むことで苦みを感じる前に薬を体内に運ぶことができます。
さらに、そのあと水で口の中の残留物を飲みこむとよいでしょう。
クラリスドライシロップの飲み合わせとして牛乳やアイスクリームなどと一緒に飲んでも問題ありません。
薬を飲み物や食べ物に混ぜる時は、子どもが食べきれる量にしましょう。飲み残したり、食べ残したりすると必要量の薬を摂取できず、期待した効果が得られなくなるおそれがあります。
また、アレルギーをお持ちの方はご注意ください。
クラリスドライシロップと一緒に飲むと苦味を感じるのはスポーツドリンク・柑橘系果汁のジュース・乳酸菌飲料など
クラリスドライシロップを飲むとき、一緒に飲むと苦味を感じてしまう飲み物はスポーツドリンク、オレンジなど柑橘系果汁のジュース、乳酸菌飲料などです。
クラリスドライシロップは、苦味を緩和させるために苦味のある薬の主要成分を甘い成分でコーティングしたつくりになっています。
そして、このコーティングは酸性に弱いという特徴をもっています。スポーツドリンクや柑橘系果汁のジュースといった酸性系飲料はコーティングをはがしてしまい、苦味を感じさせやすくさせるのです。
同じ理由で、ヨーグルトなどの酸性の要素をもつ食べ物もクラリスドライシロップと一緒に口に含むと苦味を感じやすくなってしまいます。
クラリスドライシロップと一緒に飲むと苦味が増す薬もあります
病気にかかると、複数の薬を処方される場合があります。クラリスドライシロップも他のいくつかの薬と一緒に処方されることも少なくありません。
子どもに薬を飲ませるとき、苦い思いを我慢するのは一度で済むようにさせてあげたいと思う方も。そのため、処方された薬を一緒に飲ませてしまう保護者の方もいるのではないでしょうか。
薬を数種類処方された場合でも、少なくともクラリスドライシロップは単体で飲ませることをおすすめします。
例えば、風邪症状などの治療薬としてクラリスドライシロップが処方される時、痰のきれなどをよくするムコダインDS50%(カルボシステイン)という薬が一緒に処方されることがあります。
しかし、クラリスドライシロップとムコダインを一緒に飲んでしまうと、酸性のムコダインがクラリスドライシロップの苦味をおさえているコーティングをはがしてしまい、苦味を感じさせてしまうのです。
大切なことは1種類目の薬を飲んだら、次の薬を飲む前に1度水などで口の中をきれいにすることです。
口の中に薬を残さないことで、新たに飲む薬との間で生じる苦味をおさえることができます。
複数の薬が処方されて飲む順番や飲み方に悩んだときは、医師や薬剤師にご相談ください。
クラリスドライシロップは風邪などの症状がでた時に使われる薬
クラリスドライシロップはブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、百日咳菌、カンピロバクター属、クラミジア属、マイコプラズマ属に対応し、下記のような症状に効果を発揮します。
●表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
●外傷・熱傷及び手術創等の二次感染
●咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
●感染性腸炎
●中耳炎、副鼻腔炎
●猩紅熱
●百日咳
子どもに身近な病気では、風邪症状や中耳炎があらわれたときに処方するケースが多くあります。
風邪の場合は治療薬として処方されるだけではなく、風邪が長引くことによっておこる二次感染の予防薬として使われる場合もあります。
クラリスドライシロップの主な副作用は下痢と発疹
クラリスドライシロップを飲むと、場合によって副作用をひきおこすこともあります。
一般感染症の治療目的でクラリスドライシロップを飲んだ場合、主にあらわれる副作用は下痢・発疹などです。
軽度であれば様子をみましょう。しかし、下記のような場合は薬との相性が悪かったり、つらい症状を引き起こす可能性があるので使用を中止し、医療機関に相談してください。
【下痢】
何度もトイレに駆け込まなければならないほどの頻度。水っぽい下痢など。
【発疹】
発疹が広範囲におよんでおり重度。
また、滅多におこるものではありませんが、薬を服用してからわりと早い段階で冷や汗、顔面蒼白、手足の冷えやしびれ、じんま疹、顔や喉がはれる、全身が赤くなる、ゼーゼーやヒューヒューいうような息苦しい呼吸、めまいや意識が薄れたりするなどのアナフィラキシー様症状やショック症状などがでたら重大な副作用がでているといえます。
こういった症状があらわれた場合はただちに使用を中止し、病院で診察をうけるようにしましょう。
クラリスドライシロップと他の薬の飲み合わせ(相互作用)には注意が必要です
薬の併用や飲み合わせによっては重篤な副作用をおこしたり、身体が危険にさらされてしまうことがあります。
クラリスドライシロップは、以下のような薬とは併用できません。
・オーラップ(ピモジド)
・クリアミン(エルゴタミン酒石酸塩・無水カフェイン配合剤)
・アドシルカ(タダラフィル)
・スンベプラ(アスナプレビル)
・ベルソムラ(スボレキサント) など
また、以下の薬を飲んでいる場合、クラリスドライシロップの服用について必ず医師・薬剤師に相談をしてください。身体に異常をきたす可能性があります。
・ジゴキシン
・カルバマゼピン
・テオフィリン
・シクロスポリン
・アトルバスタチンカルシウム水和物
・シンバスタチン
・コルヒチン
・イトラコナゾール
・リファンピシン
・グリベンクラミドなどのスルホニル尿素系血糖降下剤
・ベンゾジアゼピン系薬剤
・HIVプロテアーゼ阻害剤 など
もし、既に飲んでいる薬がある場合は診察の際に必ず医師に伝えるようにしましょう。診察の際に伝え忘れてしまい、心配な場合は医師・薬剤師に相談するようにしましょう。
クラリスドライシロップなどの抗生剤は処方された分をきちんと飲みきることが大切
クラリスドライシロップは苦味を甘みでコーティングしている薬です。
コーヒー牛乳やココア、バニラアイス、プリン、練乳などはクラリスドライシロップの苦味のコーティングを剥がしにくい飲み物・食べ物です。
近年、ゼリー状のオブラートなど、子どもに薬を飲みやすくするための商品も増えてきています。
薬の特徴に合わせて、こういったアイテムを活用するのも有効な方法です。
また、クラリスドライシロップは抗生剤です。抗生剤は処方された分をきちんと飲みきることが大切です。
抗生剤を飲みはじめると、病気の症状が劇的に改善され、まるで完治したかのような状態になる場合もあります。
しかし、それは身体の中の細菌の数が減少したというだけで、まだ完治した状態ではありません。
一見、治ったようにみえても体内ではまだ撃退しきれていない細菌が存在しています。
症状をぶりかえさず、きちんと病気を治すためには、処方された分の薬を飲みきるようにしましょう。