不眠に悩む日本人は非常に多く、「睡眠で休養が取れていない」、「何らかの不眠がある」など、何らかの睡眠障害を訴える人は、成人の約20%にのぼるといわれています。
そこで、不眠解消のために身近な方法としてよくみられるのが「寝酒」です。
確かに適度な量のアルコールは緊張をほぐし、眠気をもたらす場合がありますが、明け方の睡眠を妨げることがあります。寝酒に頼ることは弊害が多く、根本的な不眠解消にはならないといわれています。
不眠に悩んでいる場合は、まず医師に相談し、適切な治療が必要です。
睡眠薬にもさまざまな種類があり、比較的よく処方されているのがマイスリーです。
マイスリーは、投与後1時間以内に血中の薬の濃度が最高値に到達するため、寝つきが悪い人に使用する入眠剤として知られています。
マイスリーとアルコールを一緒に飲むことは注意すべきだとされていますが、なぜ注意するべきなのか?どのような影響があるのか?
この記事では、マイスリーとアルコールとの飲み合わせについて解説します。
マイスリーとお酒の併用はなぜいけない?
寝酒が習慣になっていてもなかなか眠れない場合、合わせて睡眠薬を飲めばより効果的では・・・と思いがちです。しかし、マイスリーの添付文書にはアルコール(飲酒)について以下の記載があります。
精神機能・知覚・運動機能等の低下が増強することがあるので、できるだけ飲酒を控えさせること。
添付文書上は、「できるだけ飲酒を控える」となっているため、飲酒は絶対にいけないとはされていませんが、基本的には避けるべきです。
そもそもどんな薬でも、アルコールとの併用を推奨するものはありませんが、マイスリーはアルコールと併用することによって、精神や運動機能への影響が強く出ることがあります。
マイスリーとお酒を併用すると生じる危険性
マイスリーとお酒を併用した場合、以下のような問題が指摘されています。
脳の活動が過度に抑えられる
マイスリーとアルコールには、どちらも脳の活動をおさえる作用があるため、両者を併用すると必要以上に脳の活動が低下します。
本来マイスリーは、寝つきを良くする「超短時間型」といわれる薬で、早く体から抜けていくため、翌朝まで睡眠薬の効果が残りにくいのが特徴です。
ところが両者を併用すると、肝臓での分解に時間がかかり、薬が体内に長時間とどまり、朝になっても睡眠作用が残ってしまうことがあります。
その結果、起きても眠く、意識がもうろうとしたり、集中力や判断力が低下するなど、日常生活にさまざまな支障を起こしてしまいます。
副作用が出やすくなる
マイスリーの主な副作用として、発疹、そう痒感、ふらつき、眠気、頭痛、倦怠感、残眠感、悪心などが報告されています。
通常、用法容量を守れば比較的副作用は起きにくいとされていますが、アルコールとの併用により、もうろう状態、幻覚、一過性前向性健忘(入眠前・中途覚醒時の出来事を思い出せない)や、全身倦怠感、食欲不振、呼吸抑制、肝機能障害など、重篤な副作用が出やすくなります。
このように、副作用は眠気が強く出るだけでなく、さまざまな症状を引き起こします。時に自分の意思とは無関係な異常行動をしたり、ケガや事故など二次的な問題にもつながります。
睡眠薬とアルコールの併用は、このような危険性やリスクがあることを知っておきましょう。
お酒を飲んでしまった・どうしても飲みたい時はどうする?
アルコールを飲んだ時には睡眠薬は服⽤しないことが原則です。お酒の酔いが醒めてから睡眠薬を服⽤するということも考えられますが、アルコールが体から消失するには、成⼈男性で、コ ップ1杯のビールで約2時間と言われています。晩酌後であっても睡眠薬を服⽤しないことが無難でしょう。
しかし、仕事や付き合いなどで、どうしてもお酒を飲まなければならない日もあるかもしれません。また、寝酒をしないと眠れないと思うこともあるのではないでしょうか。
そんな時は、以下のポイントを守りましょう。
どちらかを我慢する
睡眠薬とお酒の併用がいかに危険であるかを心にとめることが大切。
もし医師に黙って睡眠薬とアルコールの服用を続けていると、正しい治療にならず、重大な副作用が出ることもあります。
お酒を飲んだら睡眠薬を飲まない、睡眠薬を飲んだらお酒は飲まないを守りましょう。
ノンアルコールで代用
どうしてもお酒が飲みたい時は、ノンアルコールビールなどを飲むようにしましょう。今はさまざまな種類のノンアルコール飲料が販売されています。
ノンアルコールであれば肝臓への負担も少なく、脳の活動が抑制されることもありません。寝酒の習慣を止めることがベストですが、すぐに止められない場合はこのような工夫をしてみましょう。
医師に相談
飲酒からある程度時間が経っていれば、睡眠薬を服用しても問題ない場合はありますが、その場合はどれくらい時間を空けるべきなのか、必ず医師や薬剤師に相談しましょう。
また、睡眠薬を飲んでいなくても寝酒がやめられない…どんどん飲酒量が増えている…という場合も、医師に必ず相談しましょう。
さいごに:睡眠薬はあくまでも補助的に活用
睡眠薬を正しく服用しても、なかなか不眠が改善しないこともあります。
中には服用している薬が合っていないということもありますが、不眠は不安など精神的要素の他にも、生活習慣、病気の影響、環境などさまざまな要因があり、それぞれに治療法が異なります。
睡眠薬は、あくまでも睡眠をサポートする補助であり、不眠治療の全てではありません。
アルコールとの併用などをはじめとする乱用はせず、必ず自分の状況を医師に相談することが大切です。