睡眠薬ベルソムラの効果や副作用とは?効果が続く時間について解説
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薬剤師監修日:
ベルソムラは従来の睡眠薬とは異なるメカニズムを持つ薬です。ベルソムラの効果、副作用、作用時間などを詳しく解説します。

近年のストレス社会で、老若男女を問わず不眠に悩む人が増加しています。
不眠の改善に用いられる薬の中でもベルソムラは処方薬で、2014年に発売された睡眠薬です。
従来の睡眠薬とは異なり自然な眠りをうながすメカニズムを持っています。
この記事ではベルソムラの効果や副作用、効果が持続する時間などを詳しく解説します。
ベルソムラは新しいメカニズムを持つ睡眠薬
ベルソムラは往来の睡眠薬とは異なるメカニズムを持つ睡眠薬です。
従来の睡眠薬は、GABA受容体作動薬と呼ばれる、脳の興奮をおさえるGABA(ガンマアミノ酪酸)という神経伝達物質の働きをうながすことで睡眠へと繋げるものが主流でした。
GABA受容体作動薬には、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬などがあります。また、近年ではメラトニン受動体作用薬と呼ばれる、体内時計を介して眠りをもたらす薬も治療に使われています。
ベルソムラは、これらとは異なった側面から睡眠へアプローチします。
通常わたしたちの脳は、「睡眠」と「覚醒」の2つのモードの切り替えることによって、眠りをコントロールしています。この眠りのコントロールには、オレキシンという脳内の神経物質が関わっています。
オレキシンが分泌されると脳が覚醒して意識が活発になり、反対にオレキシンの分泌が抑えられると脳の活動が鎮静化され、眠気を感じるようになります。
ベルソムラは、オレキシンが脳に作用しないように、オレキシンの働きをブロックすることで眠りをうながす世界初のオレキシン受容体拮抗薬なのです。
ベルソムラの効果
ベルソムラの効果は次の通りです。
■ 入眠障害を改善させ、寝つきをよくする
■ 夜中に何度も起きてしまう中途覚醒を改善し、夜間の眠りを維持する
ベルソムラは、脳を覚醒状態から睡眠状態に切り替える作用を持ち、自然に近い眠りに導きます。
個人差がありますが、薬の効果が継続する時間が6〜8時間のため、中途覚醒を改善するのにも適しています。夜中に途中で起きてしまっても、再び眠りにつきやすいことがベルソムラの特徴といえます。
しかしながら、うつ病や統合失調症などの身体的、精神的な原因などによる二次性の不眠症には効果は認められていません。不眠の原因が精神的なものに起因する場合は、医師によく相談するようにしましょう。
ベルソムラの市販薬はある?
2023年4月現在、ベルソムラの市販薬は販売されていません。
不眠症に使える市販薬については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ベルソムラの作用時間:食事に影響をうける
ベルソムラの作用時間は、食事の影響をうけるため、食事の直後や食中に薬を飲んだ場合のほうが効き始めが遅くなります。食事から2時間以上空けることが好ましいでしょう。
ベルソムラの添付文書では、就寝前の服用を指示しています。これは安全性の面から、一度薬を飲んだら薬の効果がでている間は就寝している状態が好ましいためです。
就寝前、薬の効き始める時間が早い空腹時に薬を飲むようにしましょう。
ベルソムラの副作用
ベルソムラの副作用には意識障害(傾眠)、頭痛、疲労、悪夢、浮動性めまいなどがあります。
薬の作用が次の日まで持続する持ち越し効果は少ないとされていますが、人によっては翌日になっても眠くなったり、注意力・集中力が低下する場合もあります。
服用した翌日の自動車運転や機械作業など、危険をともなう作業は控えましょう。
ナルコレプシーまたはカタプレキシー患者の方は慎重投与すること
突然眠ってしまったり全身の力が抜けてしまう病気のナルコレプシー、何らかのスイッチによって脱力感を覚えたり崩れ落ちて転倒してしまう病気のカタプレキシー患者のベルソムラ使用は注意が必要です。
これらの病気は、オレキシンが減少したり、欠乏することが原因とされています。
そのため、オレキシンを抑制してしまうベルソムラを飲んでしまうと、ナルコレプシー・カタプレキシーの症状を悪化させてしまう可能性があります。
ベルソムラの服用で気をつけること
用法・用量を守ること
1日1回、就寝前に飲むことを守ってください。睡眠途中で一時的に起床し、仕事などで活動する可能性があるときは服用しないようにしましょう。薬の睡眠誘発による思わぬ危険を招く可能性があります。
食中や食事直後の服用はしない
食事によってお腹が満たされている状態での服用は、効果の発現が遅くなるため入眠に影響を及ぼす可能性があります。
高齢者がベルソムラを飲む場合
高齢者は一般的に生理機能が低下している傾向があります。状態を見ながら慎重に服用するようにしましょう。
妊娠中・授乳中の方のベルソムラ使用について
妊娠中のベルソムラの使用の安全性は確立されていません。治療上の有益性が危険性を上回ると医師が判断した場合にのみ使用ができますが、できるだけ避けることが望ましいでしょう。
授乳中にやむをえずベルソムラを使用する場合は、授乳を中止してください。
睡眠薬は必ず医師の指示のもとで使用しましょう
睡眠薬には副作用や依存性の可能性があることを確認しておかなければなりません。用法・用量をまもり、必ず医師の指示にしたがって使用するようにしましょう。
不眠症の改善がみられたら、漫然と使用を継続しないように、薬の使用についてあらためて医師と相談することも大切です。
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