ガスモチンとは?
ガスモチン(一般名:モサプリドクエン酸塩)は、胃腸の働きを改善する薬です。胃腸の運動を活発にする作用があり、慢性胃炎による胸やけや嘔吐などの症状の治療に使用されます。また、バリウムを飲んで行うX線造影検査の前処置において補助的に使用されます。
ガスモチンの市販薬はある?
ガスモチンの主成分のモサプリドクエン酸塩を含む市販薬は販売されていません。(2023年5月時点)
しかしガスターやセルベールなど、胸やけや悪心に効果がある市販薬は販売されています。
以下の記事ではガスモチンと同じような効果を持つ市販薬を紹介しています。
ガスモチンの剤形と用法・用量
ガスモチンの剤形は全部で2種類あります。
それぞれ成分量が異なり、用法・用量については使用する目的によって異なります。
剤形と成分
■ガスモチン錠5mg
剤形:錠剤
成分(1錠中):モサプリドクエン酸塩 5mg
■ガスモチン錠2.5mg
剤形:錠剤
成分(1錠中):モサプリドクエン酸塩 2.5mg
■ガスモチン散1%
剤形:白色の散剤。においはなく、甘みがある。
成分(1g中):モサプリドクエン酸塩 10mg
用法・用量
ガスモチンの用法・用量は使用する目的によって異なります。
ガスモチンは病院で処方される薬なので、用法・用量については医師の指示に従ってください。
・慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)
通常、成人には、モサプリドクエン酸塩として1日15mgを3回に分けて食前または食後に経口投与する。・経口腸管洗浄剤によるバリウム注腸X線造影検査前処置の補助
通常、成人には、経口腸管洗浄剤の投与開始時にモサプリドクエン酸塩として20mgを経口腸管洗浄剤(約180mL)で経口投与する。
また、経口腸管洗浄剤投与終了後、モサプリドクエン酸塩として20mgを少量の水で経口投与する。
■服用期間について
胸やけや悪心の治療でガスモチンを服用する場合、最初の服用期間はおよそ2週間が一般的です。
まず2週間ほど服用し、医師が薬の効果があらわれていると判断した場合は継続して服用することになります。
ジェネリックについて
ガスモチンと同じモサプリドクエン酸塩を主成分とするジェネリックは複数のメーカーから販売されています。
ガスモチンの胃腸効果
インタビューフォームによると435例に対しての国内臨床試験において、胸やけに対して74%、悪心・嘔吐に対して77%の確率で効果を発揮するという報告があります。
ガスモチンの効果について、添付文書には以下のように記載されています。
・慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)
・経口腸管洗浄剤によるバリウム注腸X線造影検査前処置の補助
今回は、このうち「慢性胃炎に伴う消化器症状」への効果について詳しく見ていきます。
これはガスモチンの消化管の働きを改善する効果によるもので、胸やけや吐き気といった消化管の不快な症状に効果を発揮します。
具体的には
・ 胃の消化運動や、胃から腸へ消化したものを送り出す動きを促進する
・ 腸のぜん動運動を促進する
という効果があり、これらによって胸やけや吐き気を解消します。
その他の効果
■胃もたれ
食べ過ぎなどで胃がもたれてしまった場合は、ガスモチンの服用が使用されることがあります。
消化剤などと一緒に使うことで、胃もたれを改善することができます。
■慢性胃炎
慢性胃炎においては胃に負担をかけないことが重要になります。
そのため、胃に胃酸や食事を長くためないようにするために、胃酸をおさえる薬と一緒にガスモチンを使用することがあります。
■薬による吐き気や胃の荒れを防ぐ
吐き気や胃炎には、薬が原因のものがあります。
そのような症状を防ぐため、ガスモチンが同時に処方されることがあります。
ガスモチンの副作用:下痢に注意
ガスモチンの用量や、服用期間はどのような目的で使用するかによって違います。そのため、ガスモチンの副作用の種類や発症確率は、服用する目的によって異なります。
胸やけや悪心・嘔吐に対して使用した場合、下痢や軟便が報告されています。
代表的な副作用:下痢・軟便
ガスモチンの主な副作用は下痢・軟便です。
1~2%未満の確率で発生するという報告もあり、確率は高くありませんが、ガスモチンの副作用の中では比較的報告されている症状です。
これはガスモチンの作用で消化管が運動しすぎたことによる症状です。そのため、ガスモチンの服用量を減らしたり、服用を中止すれば改善が期待できます。
ガスモチン服用中にひどい下痢が続く場合は、医師に相談して服用量を調節してもらうようにしましょう。
重大な副作用
発症確率は極めてまれですが、以下のような重大な副作用が出る場合があります。
・劇症肝炎(急性肝炎のうち特に重症なもの)
・著しい肝機能検査値の上昇を伴う重篤な肝機能障害
・黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる)
ほとんど起こらない副作用ですが、倦怠感や食欲不振、発熱や、皮膚や白目が黄色くなるなどの初期症状があらわれた場合はすぐに医師に相談するようにしてください。
また、これらの副作用を防ぐため、長期にわたりガスモチンを服用する場合は医師の指示に従って定期的に肝機能検査を行うようにしましょう。
その他の副作用
<慢性胃炎に伴う消化器症状(胸やけ、悪心・嘔吐)に対して使用した場合>
症状 | 発生確率 |
浮腫 | 1%未満 |
発疹・蕁麻疹 | 頻度不明 |
血液中の好酸球増多 | 1~2%未満 |
血液中の白血球減少 | 1%未満 |
口渇、腹痛、嘔吐、味覚異常 | 1%未満 |
腹部膨満感、嘔気 | 頻度不明 |
口内しびれ感(舌、口唇などを含む) | 頻度不明 |
肝機能検査値の上昇 | 1%未満 |
心悸亢進 | 1%未満 |
めまい、ふらつき、頭痛 | 1%未満 |
倦怠感 | 1%未満 |
振戦(手足の震えなど) |
頻度不明 |
中性脂肪の上昇 | 1〜2%未満 |
<バリウム検査の補助に使用した場合>
バリウム検査の補助にガスモチンを使用した場合、副作用に眠気の症状が報告されています。
車の運転などには十分注意してください。
症状 | 発生確率 |
腹部膨満感、嘔気、腹痛 | 1~5%未満 |
ビリルビン(血液中の色素)の上昇 | 1%未満 |
頭痛 | 1~5%未満 |
腹部不快感、悪寒、倦怠感、顔面腫脹 | 1%未満 |
眠気 | 1%未満 |
尿潜血、尿蛋白 | 1〜5%未満 |
ガスモチンの使用上の注意:妊娠・授乳中の服用や飲み合わせについて
ガスモチンの使用に注意が必要な人や、ほかの薬との飲み合わせについて解説していきます。
ガスモチンの使用に注意が必要な人
■妊娠中の使用
ガスモチンの妊娠中の使用は可能ですが、薬を飲んだほうがいいと医師が判断した場合のみです。
自己判断で服用することのないようにしましょう。
妊娠中の使用に関する安全性は確立されていないため、処方された場合は用法・用量を正しく守ってください。
■授乳中の使用
動物実験において母乳への移行が報告されているため、やむをえず服用する場合は、服用期間中の授乳の継続もしくは中止を検討してください。
■小児の使用
子どもの使用について、安全性は確立されていません。
服用させたい場合は必ず医師に相談し、自己判断で飲ませることのないようにしてください。
■高齢者
肝機能・腎機能が低下している高齢者が服用する場合は、医師による慎重な判断が必要です。
自己判断で服用することはせず、必ず医師の診察を受けたうえで服用してください。
飲み合わせについて
併用に注意が必要な薬は抗コリン作用のある薬です。
抗コリン作用のある薬と併用するとガスモチンの効果が弱まる可能性があります。
両方の薬を飲みたい場合は医師に相談し、服用間隔をあけるなどの処置をとってください。
抗コリン作用がある薬には、アレルギー症状を抑えるポララミン、胃腸のけいれん性の痛みを取るブスコパンなどがあります。
薬との飲み合わせで疑問や心配がある場合は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
身近な薬との飲み合わせをまとめました。ご参考ください。
医薬品名 | ガスモチンとの飲み合わせ |
ロキソニン |
問題ありません。 胃に負担をかけるロキソニンは服用しないほうがいい場合が あります。処方医にご相談ください。 |
ガスター | 問題ありません。 |
タケプロン | 問題ありません。 同時に処方されることもあります。 |
ビオフェルミン | 問題ありません。 |
まとめ
ガスモチンは消化管の動きを促進することで、胸やけや吐き気に効果を発揮します。
服用の際には医師の指示した用法・用量をしっかり守るようにしてください。
また、まれに重大な副作用も起こるため、異変を感じたら早めに医師に相談するようにしましょう。