アフターピル(緊急避妊)服用後の生理はいつくる?失敗しない飲み方まで解説!
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薬剤師監修日:
アフターピルは別名「緊急避妊薬」とも呼ばれる薬です。効果、副作用、生理との関連性など、アフターピルについて徹底解説します。

アフターピルとは?
アフターピルとは、性行為の際に避妊に失敗してしまったときや不慮のレイプ行為などにあったときに、望まない妊娠を防ぐための薬です。
「モーニングアフターピル」や「緊急避妊薬」とも呼ばれています。
アフターピルを服用後は、避妊が成功すれば生理がやってきます。ただし、生理の時期や出血の状態によっては判断しにくいことも。
この記事では、アフターピル服用後の出血がいつくるか、どれくらいの量が出るか解説します。またアフターピルの効果から副作用まで徹底解説します。
今現在緊急避妊の必要がない人も、いざというときに慌てないために、アフターピルに関する正しい知識を持っておきましょう。
アフターピルの種類
アフターピルには緊急避妊専用の薬を飲む方法、中用量ピルでホルモン値を上げる方法、低用量ピルなどで代用する方法の三つがあります。
主に使われるアフターピルには、次のような種類があります。状況に応じて医師と相談して選択しましょう。
ノルレボ錠
ノルレボ錠(レボノルゲストレル)は、2011年に日本で認可され、2016年から販売されている緊急避妊専用の薬です。成分は黄体ホルモンのみで、従来緊急避妊に使われていた薬よりも副作用が少なくなっています。
製薬会社の発表によると、性交後72時間以内にノルレボ錠を飲んだ場合の妊娠阻止率は81%と、他の緊急避妊方法より妊娠阻止率が高いことがメリットですが、保険適用外の薬なので医療機関によって価格は異なり、相場は13,000~16,000円と高価なことがデメリットです。
プラノバール配合錠
中用量ピルを使用し、ホルモン値を一気に上昇→下降させて、子宮内膜を剥がし受精卵の着床を防ぎ避妊効果を発揮させる方法をヤッペ法といいます。
ノルレボ錠が認可される前は、このヤッペ法が主流とされてきました。ヤッペ法で主に使われている中用量ピルに、プラノバール配合錠があります。
プラノバールは卵胞ホルモンと黄体ホルモンの2種類が配合されていて、通常は月経困難症などの月経トラブルの治療に用いられる薬です。緊急避妊が主目的の薬ではありませんが、排卵を遅らせたり着床を阻止する効果から、緊急避妊薬として用いられています。
ノルレボ錠と比較すると安価ではありますが、副作用が起こる可能性が高いとされています。
アフターピルは種類ごとに避妊失敗率が異なる!
ノルレボ錠を72時間以内に服用した場合、妊娠阻止率は84%といわれています。
また、ヤッペ法では、72時間以内に薬を服用した場合、妊娠阻止率は63%とされています。
なお、ノルレボ錠にしてもヤッペ法にしても、性交後すぐに緊急避妊法を開始したほうがより妊娠阻止率が高いということがわかっています。
24時間以内 | 25~48時間 | 49~72時間 | |
ノルレボ錠 | 95% | 85% | 58% |
ヤッペ法 | 77% | 36% | 31% |
緊急避妊法の適正使用に関する指針 (平成 28 年度改訂版)
なお、避妊しない性行為で妊娠する確率は、15%ほどといわれています。
アフターピル服用後の出血はいつくる?どれくらいの量?
アフターピルの避妊率は100%ではないため、飲んだだけで避妊が確実に成功したと言い切ることはできません。避妊が成功しているかどうかの判断として、アフターピル服用後に生理がきたかどうかしっかり確認してください。
また、排卵と同じ時期に緊急避妊をした場合、生理とは異なる排卵出血である可能性もあるため、生理の量や状態にも注意をしておきましょう。
服用後3日〜3週間の間に生理がきた場合
アフターピルの服用後に、3日~3週間程度で出血があれば避妊が成功したといえます。この時の出血を消退出血といいます。
消退出血は、アフターピルによってホルモンを調整したことで子宮内膜が剥がれて起こる出血です。子宮内膜がはがれると着床せず、妊娠しません。
服用後3週間経っても生理がこない場合
アフターピル服用後から3週間以上経過しても出血がない場合、出血があっても不正性器出血や妊娠初期の出血と区別できない場合は、妊娠している可能性があります。すみやかに妊娠検査薬などで検査をしましょう。妊娠検査薬は性交渉から約3週間後に正しい結果が出ます。
基礎体温が高温の状態が続くと、妊娠しているといわれますが、アフターピルの服用後はホルモン量が変わるため、基礎体温は通常とは異なります。そのため、体温は妊娠しているかどうかの判断基準にはなりません。
服用後3日以内に出血がでた場合
アフターピル服用後、3日以内に出血がみられた場合は、消退出血以外の可能性もあります。婦人科系の病気が原因となる出血、以前の性交が原因となる妊娠または子宮外妊娠の可能性も考えられます。
また、排卵出血または着床出血の可能性もあります。出血に気になることがあった場合は婦人科にご相談ください。
アフターピル服用後の生理の量
アフターピル服用後の生理の量は、アフターピルを飲んだ時期により異なります。
排卵日直後にアフターピルを服用した場合は、剥がれ落ちる子宮内膜(生理)の量が少ないため、おりもの程度の少量の出血になります。
排卵日からある程度日数が経っている場合は、個人差はありますが、通常の生理と同じくらいの出血がみられます。ただし出血が続く期間は3日〜4日程度と通常よりは短い傾向にあります。
なお、極端に少ない出血だった場合、受精卵が子宮内膜に着床した時におきる着床出血の可能性もあります。
出血の量で気になることがある場合は早めに婦人科を受診しましょう。
アフターピル服用後の生理周期
排卵前や排卵期にアフターピルを使用した場合、月に2回生理が来る場合があります。また、排卵後に服用した場合は、本来の予定日通りに生理が来ることがほとんどです。
逆に、アフターピルによって、本来の生理の予定日より遅く生理が来ることはほとんどありません。
アフターピルはホルモン剤なので、生理の周期にも影響を及ぼします。アフターピルを服用後は、生理周期が安定するまで約3か月ほどかかるとも言われています。
生理周期が乱れているうちは、排卵日周辺ではないからと安心せずに、しっかり避妊しましょう。
アフターピルの副作用
アフターピルには複数の種類がありますが、共通する主な副作用には次のようなものがあります。
嘔吐、下痢、不正出血、頭痛、倦怠感、疲労感、眠気、めまい、悪心(気持ち悪さ)、腹痛、乳房の張り など
他に、イライラなどの精神神経系の副作用を訴える人もいます。
これらの副作用は、通常24時間以内におさまります。通常は後遺症が残ることはありません。また、万が一妊娠していた場合、アフターピルを服用したことで胎児に影響を与えることはありませんのでご安心ください。
嘔吐
アフターピルの副作用で一番多いとされているのが、嘔吐です。
プラノバール錠を服用した人の約50%が吐き気をもよおし、約20%が嘔吐します。いっぽうノルレボ錠では、吐き気を感じるのは約20%で、嘔吐することは5%程度です。
アフターピルの服用後2時間以内に嘔吐すると、ピルの成分が完全に吸収されず、避妊に失敗する可能性があります。服用から2時間以内に嘔吐してしまった場合は、追加でピルを飲む必要があるので、すぐにアフターピルを処方してもらった病院へ連絡をし、医師の指示を受けましょう。
とくにプラノバール錠の場合、1回目の服用の副作用で2回目のピルを吐いてしまうケースが多いため、注意が必要です。
嘔吐の不安がある場合は、事前に病院で相談しましょう。アフターピルと一緒に、吐き気を抑える薬を処方してもらえるケースがあります。
アフターピルの飲み方
ノルレボ錠の飲み方
性行為の後、72時間以内に1錠(1.5mg)を1回服用します(0.75mg錠の場合は2錠)。服用する時刻や時間帯は特に定められていませんが、服用する時間が早ければ早いほど、避妊率は高くなります。
プラノバール配合錠の飲み方
性行為後、72時間以内に2錠を服用し、さらに12時間後に2錠を服用します。ノルレボ錠同様に、服用する時間が早ければ早いほど、避妊率は高くなります。
アフターピルの飲み合わせ
お酒との飲み合わせ
アフターピルの服用中にアルコールを摂取しても問題はありません。ただし、お酒の飲み過ぎによる嘔吐には注意しましょう。服用して2時間以内に吐いてしまうと、追加で服用する必要があります。くれぐれもお酒の飲み過ぎに注意しましょう。
風邪薬や胃薬などの薬、栄養ドリンクとの飲み合わせ
ノルレボ錠と風邪薬や胃薬、栄養ドリンクの併用は問題はありません。
ヤッペ法で用いるプラノバール錠は、解熱剤や抗生物質、胃薬の一部などに相互作用があるものが存在します。
アフターピル服用中に薬を一緒に服用する場合は、受診先の医師や薬を購入する薬局の薬剤師にノルレボ錠服用の旨を伝えておくとよいでしょう。
アフターピルとの飲み合わせに注意する薬や食品
次のような薬や食品との飲み合わせには注意してください。併用して使用する際には、医師に相談して指示を仰いでください。
●ノルレボ錠の場合
・抗けいれん薬(フェノバルビタール、フェニトイン、プリミドン、カルバマゼピン)
・HIV感染症治療薬(リトナビル、エファビレンツ)
・リファブチン、リファンピシン
・セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort,セント・ジョーンズ・ワート)含有食品
●プラノバール錠の場合(一部抜粋)
・副腎皮質ホルモン(プレドニゾロンなど)
・三環系抗うつ剤(イミプラミンなど)
・セレギリン塩酸塩
・シクロスポリン
・テオフィリン
・オメプラゾール
・抗生物質(テトラサイクリン、アンピシリン水和物など)
・アセトアミノフェン
・セイヨウオトギリソウ(St. John's Wort,セント・ジョーンズ・ワート)含有食
など
相互作用がある薬を併用することで、思わぬ副作用や、期待する効能効果が得られなくなる可能性があります。
現在何らかの薬を服用していてアフターピルを処方してもらう場合は、服用中の薬について処方医に伝えましょう。
アフターピル服用の注意点
食事について
食事はアフターピルに影響しません。避妊失敗の可能性がある場合は、すみやかに病院を受診しましょう。
ただし、食べ過ぎたあとに薬を飲んだ場合は、嘔吐に注意しましょう。アフターピル服用後2時間以内に嘔吐すると、追加服用が必要となるケースもあります。
運動について
アフターピル服用後すぐに運動をしても問題ありません。
ただし、激しい運動は嘔吐を引き起こす可能性があるのでご注意ください。
また、嘔吐を避けるため、体調がすぐれない時は無理に身体を動かさずに安静にしておきましょう。
アフターピル服用後の性行為について
アフターピルを服用後は、出血がくるまで性交渉は控えてください。
アフターピルを服用後に出血がくる前に、再び性交渉して避妊に失敗しても再びアフターピルを服用することは出来ません。
次回の生理まで性交渉を控えることができない場合は、受診時に医師にご相談ください。緊急避妊薬服用の翌日から経口避妊薬(低用量ピル)の服用などを行なう場合があります。
また、今後の性交渉の際の避妊法についても見直してみましょう。
以下の記事では経口避妊薬(低用量ピル)について解説しています。
低用量ピルを再開する場合
例えば、経口避妊薬(低用量ピル)の飲み忘れのためにノルレボ錠を服用した場合は、翌日から低用量ピルを再開できます。
ただし、自然な生理の初日からの服用ではないので服用から7日間、念を入れるなら14日間はほかの方法での避妊併用を行ってください。
いずれも日常的なピルの服用を開始できるようになるまではコンドームなども併用した確実な避妊法を取るようにしてください。
アフターピルの購入方法
アフターピルの入手方法は、病院の産婦人科で処方してもらいます。薬局では市販されていないので注意が必要です。
都道府県別の緊急避妊について対面診療が可能な産婦人科医療機関などの一覧は厚生労働省のサイトで公開されています。
病院によってアフターピル在庫の有無や診療時間が異なるため、事前確認のうえ受診することをおすすめします。
また、オンライン診療でアフターピルを処方してもらうこともできます。スマホやタブレットなどによる遠隔診療を行い、病院から直接配送してもらったり、自宅近くの薬局に処方箋を送ってもらいアフターピルを受け取ることもできます。薬の受け取り方法は病院によって異なり、病院・薬局によっては配送に時間がかかることも可能性もあるため、できるだけ早い受診が勧められます。
アフターピルを調剤するには、薬剤師は必要な研修を受けていなければなりません。オンライン診療による緊急避妊薬の調剤が対応可能な薬局の一覧は厚生労働省のサイトで公開されています。
避妊に失敗したと思い当たる行為の72時間以内にアフターピルを飲むことが求められるため、思い当たった時点ですぐに病院に行くことが大切になります。
アフターピルの値段は?
産婦人科では、問診のあと簡単な診察を受けると、アフターピルが処方されます。血液検査や内診等はありません。ただし、アフターピルは、どの産婦人科でも取り扱いがあるわけではないので、事前に電話で問い合わせをしましょう。
アフターピルには保険が適用されないため、薬の費用は全額自己負担になります。そのため、保険証がなくても処方してもらうことは可能です。
値段は病院によって違いがあり、価格の相場はノルレボ錠の場合15000円前後、プラノバール錠の場合5000円程度です。その他、診療代などが別途必要となります。
病院によって異なるため、事前に確認するとよいでしょう。
アフターピルの個人輸入について
アフターピルを個人輸入で購入した場合は、「服用方法」「飲み忘れ等の対処」「検査の手配」「アフターピルの確保」など全てが自己責任になります。これは個人輸入サイトにも記載されている事です。
病院で処方してもらった医薬品で重大な副作用が起きた時は医薬品副作用被害救済制度などで補償されますが、個人輸入の医薬品などは補償の対象外になります。
基本的には、個人輸入ではなく国内の医療機関で正当な手続きのうえでアフターピルを使っていただくことをお勧めします。
また、いざという時に相談できる医療機関を知っていることはアフターピルを使ううえで大切になってきます。
おわりに
アフターピルは、あくまで妊娠を緊急的に回避する薬です。
ホルモンを人為的に急激に変化させて妊娠を防ぐため、身体への負担も少なくないため性交渉のたびに飲むのは望ましくありません。
日常的に避妊を行いたい場合は低用量ピルの使用も検討しましょう。
ただし、低用量ピルでは性感染症を防ぐことはできません。
不特定多数の方と性交渉を行う場合は、性感染症を防ぐためにもコンドームの着用を心がけましょう。
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