憂うつな気分をやわらげる「サインバルタ®︎」の効果や副作用などについて解説
サインバルタ*とは?
サインバルタ*(有効成分名:デュロキセチン)はうつ症状や痛みに対して効果を発揮する薬です。サインバルタ*カプセル20mgや、サインバルタ*カプセル30mgという商品名で販売されています。
この記事ではサインバルタ*について添付文書の内容を中心に解説します。
サインバルタ*はどんな薬?
サインバルタ*は2010年4月に発売された薬です。
発売当初の適応疾患はうつ病・うつ状態のみでしたが、糖尿病性神経障害、慢性の腰痛、線維筋痛症、変形性関節症などに伴う痛みへの適応追加が認められました。
サインバルタ*と同じ成分の市販薬はある?
サインバルタ*は医師からの処方箋が必要な医療用医薬品で、現在同じ成分の市販薬は販売されていません。
※2024年7月
サインバルタ*の効果・作用
作用機序
サインバルタ*はセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、脳内のセロトニンとノルアドレナリンの濃度を上昇させます。その結果、不安や焦り、集中力の落ち込みなどを改善へと導き、抗うつ効果を発揮します。
また、痛みの緩和に関わりを持つセロトニンとノルアドレナリンへの作用があることから、糖尿病性神経障害、慢性の腰痛、線維筋痛症、変形性関節症などに伴う痛みにも効果を示します。
特徴
サインバルタ*は飲み始めたら約1週間ほどで効果を感じられると言われており、効果を感じられるまでの時間が比較的早いことで知られています。多くの抗うつ剤では2週間~1か月程度で効果を感じられることが多いため、早く効果を感じたいという人に向いている薬です。
抗うつ効果だけではなく、心因性の痛みにも効果をもつ薬であり、副作用が比較的起きにくいことも特徴として挙げられます。
効果・効能
サインバルタ*はうつ病、うつ状態の改善、糖尿病性神経障害、線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症などにともなう痛みの改善に効果的な薬です。
効能・効果
◯ うつ病・うつ状態
◯ 下記疾患に伴う疼痛
糖尿病性神経障害、線維筋痛症、慢性腰痛症、変形性関節症
ADHD・双極性障害・発達性障害への効果は?
サインバルタ*のADHD・双極性障害・発達性障害への適応は現在認められていません。しかし、医師の判断により処方される可能性もあります。その場合には医師の指示に従って服用をしてください。
サインバルタ*の効果が発現するまでの時間はどれくらい?
サインバルタ*の薬の濃度が最も高くなるのは服用量にもよりますが、服用してから約6~10時間と考えられています。その後、約8~20時間で血中での薬の濃度が半分になります。なお、効果時間については個人差によるところが大きいため、ご注意ください。
サインバルタ*の用法・用量
用法・用量
サインバルタ*の用法用量は医師の判断で決定されるため、医師に指示された用法・用量を守って服用しましょう。
なお、一般的な用法用量の詳細は以下の通りです。
うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛
通常,成人には1日1回朝食後,デュロキセチンとして40mgを経口投与する。投与は1日20mgより開始し,1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。
なお,効果不十分な場合には,1日60mgまで増量することができる。線維筋痛症に伴う疼痛、慢性腰痛症に伴う疼痛、変形性関節症に伴う疼痛
通常,成人には1日1回朝食後,デュロキセチンとして60mgを経口投与する。投与は1日20mgより開始し,1週間以上の間隔を空けて1日用量として20mgずつ増量する。
用法・用量に関連する使用上の注意
添付文書では用法用量に関連する注意として、うつ病・うつ状態、糖尿病性神経障害にともなう痛みの改善にサインバルタ*を用いるときは、最小限の服用からはじめ、増量する場合にも慎重に調節することと記載されています。
<うつ病・うつ状態,糖尿病性神経障害に伴う疼痛>
本剤の投与量は必要最小限となるよう,患者ごとに慎重に観察しながら調節すること。
サインバルタ*を処方されたときは、医師による用法用量の指示を必ず守ってください。
剤形
サインバルタ*の剤形はカプセルのみになり、他の剤型はありません。
サインバルタ*の夜・就寝前の服用はできる?
サインバルタ*の添付文書の用法用量の項目では服用時間が指定されており、「1日1回朝食後」と記載されています。
医師から特別な指示がない限り、朝食後の服用を守ってください。
服用時間が安全性に及ぼす影響は小さいと考えられていますが、国内の臨床検査では朝食後投与しか行われていないため、そのほかの服用時間において安全性が確立されていないことも一つの理由として考えれます。
サインバルタ*を飲み忘れたら?
サインバルタ*は用法用量を守って服用することで効果を発揮する薬です。そのため、できるだけ飲み忘れがないように注意しましょう。
飲み忘れたからといって2回分を一度に服用することはしないでください。
飲み忘れが続いたり、飲み忘れによる身体の異変を感じたときは漫然と使用を続けず、処方した医師に相談してください。
サインバルタ*の使用上の注意
サインバルタ*を服用してはいけない人
サインバルタ*の成分であるデュロキセチン塩酸塩に対しアレルギー反応を起こしたことのある人、MAO阻害剤を使用中または使用中止後2週間以内の人、高度の肝障害または腎障害のある人、コントロール不良の閉塞隅角緑内障の人などは症状が悪化することがあるため、サインバルタを服用することはできません。
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1. 本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2. モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤(セレギリン塩酸塩、ラサギリンメシル酸塩、サフィナミドメシル酸塩)を投与中あるいは投与中止後2週間以内の患者
3. 高度の肝障害のある患者
4. 高度の腎障害のある患者
5. コントロール不良の閉塞隅角緑内障の患者[症状が悪化することがある。]
そのほかにも、サインバルタ*を使用するときに注意が必要な方もいます。なにか持病がある方、他に薬を服用している方は必ず医師に伝えておきましょう。
妊娠中に使用できる?
サインバルタ*の妊娠中の使用については、服用における有効性がリスクを上回る場合には、医師から処方されることがあります。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。
妊娠末期にSNRI,SSRIを投与された女性が出産した新生児において,入院期間の延長,呼吸補助,経管栄養を必要とする,離脱症状と同様の症状が出産直後にあらわれたとの報告がある。
臨床所見とし ては、呼吸窮迫、チアノーゼ、無呼吸、発作、体温調節障害、哺乳障害、嘔吐、低血糖症、筋緊張低下、筋緊張亢進、反射亢進、 振戦、ぴくつき、易刺激性、持続性の泣きが報告されている。
授乳中は使用できる?
サインバルタ*の成分が母乳に移行することが報告されているため、薬の量や服用回数によっては、医師より授乳を避けるように指示がある場合もあります。
治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。ラット及びヒトで乳汁中へ移行することが報告されている。
高齢者は使用できる?
サインバルタ*の高齢者の使用は可能ですが、代謝機能が低下している場合では副作用があらわれやすくなることがあります。
患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。高齢者では薬物の消失が遅延し、血漿中濃度が上昇することがある。また、高齢者においては、以下の点に注意すること。
・ 低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH) の危険性が高くなることがある。
・ めまい等により転倒を起こすことがある。
日常生活において転倒などに注意し、身体に少しでも異変を感じたら、処方した医師に相談してください。
サインバルタ*の離脱症状について
サインバルタ*の服用をしていて、減量や断薬を考えたときに気になるのが離脱症状ではないでしょうか。離脱症状の発現頻度には個人差があるため注意しましょう。
サインバルタ*の離脱症状はどのような症状なのか、また、離脱症状が出た場合、症状はどれくらいの期間続くものなのでしょうか。
離脱症状:不眠・めまい・吐き気・ふるえなど
サインバルタ*の離脱症状は、種類や程度の個人差が大きく見分けにくいため、自己判断はしないでください。
離脱症状が続く期間についても、これまでの服用方法や減薬・断薬方法や体質などによって大きく変化します。
あまりにも症状がひどいときは減薬のペースを落とすなどの対策が必要となる場合もありますので、まずは医師に相談しましょう。
サインバルタ*の副作用
サインバルタ*は悪心・眠気・倦怠感・頭痛・めまい・食欲減退・口渇・便秘・下痢などの副作用が起きることがあります。サインバルタを服用していて、いつもとは違う症状が出たときには医師に相談しましょう。
重大な副作用
重篤な副作用は頻度はまれですが下記のような症状を引き起こす可能性があります。体調の変化を感じた場合はすぐに医療機関を受診して、服用している薬剤名を医師に伝えて指示をあおいでください。
・セロトニン症候群
・悪性症候群
・抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)
・痙攣、幻覚
・肝機能障害、肝炎、黄疸
・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
・アナフィラキシー反応
・高血圧クリーゼ
・尿閉
サインバルタ*を服用すると太る?痩せる?
サインバルタ*の副作用として、1~5%未満の方に体重増加や体重減少があったことが報告されています。しかしこれらの症状は症状改善の効果を発揮するために起こる副作用ですから、太ったり痩せたりすることを目的とした服用は危険です。
また、体重の変動を気にして自己判断で減薬したり、断薬をすることも離脱症状の原因となります。あまりにも症状がひどい場合や、効果に疑問を感じるときにはすぐに処方した医師に相談してください。
射精障害性が起きる原因・対処法は?
サインバルタ*を服用したとき、まれに射精障害をはじめとする性機能障害が起きる可能性があります。抗うつ剤はセロトニンとアドレナリンを刺激するため、射精障害などの性機能障害などを引き起こしてしまうと考えられています。
このような副作用が起きたときの対処法としては、処方した医師に相談することが一番良い方法と言えます。
性機能症状などは医師に相談する人が少なく、一人で悩む人が多いのも現状ですが、今後の治療を考えていくうえで医師に症状を伝えることは大切なことです。思わぬ副作用を防ぐためにも、身体に異変を感じたらできるだけ早く医療機関を受診するようにしてください。
サインバルタ*との併用に注意が必要な薬
併用してはいけいない薬
他の抗うつ剤で併用以下の薬との併用により発汗、不穏、全身痙攣、異常高熱、昏睡等の症状があらわれたとの報告があるため、下記の薬サインバルタ*を一緒に使用することはできません。
併用禁忌(併用しないこと)
モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤
・ セレギリン塩酸塩(エフピー)
・ ラサギリンメシル酸塩 (アジレクト)
・ サフィナミドメシル酸塩 (エクフィナ)
併用における弊害について添付文書には以下のような記載があります。
MAO阻害剤の投与を受けた患者に本剤を投与する場合には,少なくとも2週間の間隔をおき,また,本剤からMAO阻害剤に切り替えるときは5日間の間隔をおくこと。
サインバルタ*とアルコールを一緒に飲んでもいい?
サインバルタ*とアルコールはともに中枢神経抑制作用があるため、作用の増強のおそれがあるだけでなく、肝機能が悪化するおそれがあります。
アルコールの摂取量が多い人、サインバルタ*を服用しているが飲酒をする予定のある人は一度医師と服用について相談することをおすすめします。
サインバルタ*とカフェインの併用はできる?
サインバルタ*とコーヒーなどのカフェインを含むものの併用についてメーカーからの注意は出ていません。併用について問題はないかと思いますが、もしサインバルタ*とカフェインを併用して体調の変化などを感じたときは処方した医師に相談してください。
サインバルタ*の個人輸入について
サインバルタ*の個人輸入に注意!
サインバルタ*は医師の処方箋が必要な薬です。しかし、個人輸入等により市販され、通販サイトなどで流通しているものも一部存在します。個人輸入で手に入れた薬は医薬品副作用被害救済制度が受けられないことがあります。
サインバルタ*は、正しい効果を得るためにも医師から薬の用量や飲み方についてのアドバイスを受け、服用しましょう。
おわりに
サインバルタ*はうつ病や痛みの改善に効果的な薬です。
症状の早期改善のためには用法用量を守った正しい服用を継続していくことが大切です。
もし少しでも効果に疑問を感じたり、体に異変を感じたら漫然と使用を続けず、出来るだけ早く処方した医師または薬剤師に相談してみましょう。
※サインバルタはイーライ リリー アンド カンパニーの登録商標です

昭和大学大学院薬学研究科修了
昭和大学薬学部客員講師
株式会社ミナカラ / ミナカラ薬局
薬局、ドラッグストアで臨床経験を積み、その後昭和大学薬学部の教員、チェーンドラッグストア協会の教育機関でOTCの研修講師を務める。
【著書】
•現場で差がつく! もう迷わない! ユーキャンの登録販売者お仕事マニュアル 症状と成分でわかるOTC薬
•現場で差がつく! ユーキャンの新人登録販売者お仕事マニュアル
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