クレストールは血中のコレステロール値を低下させるはたらき持つことから、高コレステロール血症に使用される薬です。
この記事では、クレストールの効果や副作用、使用方法について添付文書を中心に解説しています。またジェネリック医薬品などについても解説します。
クレストールの効果・作用
作用機序
コレステロールは人間の身体に必要なものであり、肝臓で合成されています。
クレストールはコレステロールを合成する酵素を阻害することでコレステロールの合成を抑え、血中コレステロールの値を改善します。
効果・効能
クレストールは高コレステロール血症および、遺伝性の家族性高コレステロール血症の改善に効果的な薬です。
効能・効果
高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症
クレストール添付文書
効能・効果に関連する使用上の注意
クレストールは十分な検査をした上で、高コレステロール血症または家族性高コレステロール血症であると確認できた場合にのみ処方されます。
遺伝性の家族性高コレステロール血症については非薬物療法の補助として、もしくは非薬物療法を行うことが困難な場合にクレストールの服用が検討されます。
1.適用の前に十分な検査を実施し、高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症であることを確認した上で本剤の適用を考慮すること。
2.家族性高コレステロール血症ホモ接合体については、LDL-アフェレーシス等の非薬物療法の補助として、あるいはそれらの治療法が実施不能な場合に本剤の適用を考慮すること。
クレストール添付文書
クレストールの副作用:痩せるって本当?
クレストールを服用すると痩せる?
クレストールの添付文書では、体重減少という副作用の報告はありません。しかし、クレストールの副作用として便秘や下痢などの症状の報告はあります。このような副作用が生じた結果として体重の減少がみられる可能性は考えられますが、副作用の頻度としてはどちらも0.1~2%未満である上に、体重減少を目的とした服用は適切ではありません。
クレストールを服用して体重の変動がみられ、その症状がひどいときは医師または薬剤師に相談してください。
クレストールの重大な副作用:「横紋筋融解症」の危険性は?
クレストールの重篤な副作用としてよくとりあげられる横紋筋融解症の発現率は0.1%未満と報告されています。
横紋筋融解症は、筋肉を作る成分が血液中に流れ出し、腎臓をはじめとした身体の様々な臓器に負担をかける病気です。最悪の場合死に至ることもある重い副作用であるため注意が必要です。
しかし、横紋筋融解症が副作用としてあげられるのはクレストールだけに限ったことではありません。どんな薬にも効果(作用)があれば副作用があります。思わぬ副作用の発現を防ぐためにも、まずは正しい服用を心がけることが大切です。
なお、クレストールの副作用の1つである筋肉痛は、横紋筋融解症の初期症状である可能性があるため、クレストールを服用して脱力感や筋肉痛を感じたときはできるだけ早く医療機関を受診するようにしてください。
その他の重大な副作用:ミオパチー、血小板減少など
クレストールを服用したとき、まれに以下のような重い副作用が発現することがありますのでご注意ください。初期症状を感じた場合にはできるだけはやく医療機関を受診してください。
重大な副作用 | 初期症状 |
---|---|
横紋筋融解症 | 筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇 |
ミオパチー、免疫介在性壊死性ミオパチー | 広範な筋肉痛、高度な脱力感や著明なCKの上昇 |
重症筋無力症 | 筋力低下など |
肝炎、肝機能障害、黄疸 | 黄疸、AST、ALTの上昇など |
血小板減少 | 血液値異常など |
過敏症状 | 血管浮腫など |
間質性肺炎 | 発熱、咳嗽、呼吸困難、胸部X線異常など |
末梢神経障害 | 四肢の感覚鈍麻、しびれ感等の感覚障害、疼痛、あるいは筋力低下など |
その他の副作用:皮膚、消化器、精神症状など
クレストールを服用したときその他の副作用として以下のような症状があらわれることがありますのでご注意ください。
発現部位 | 副作用 |
---|---|
皮膚 | そう痒症、発疹、蕁麻疹、苔癬様皮疹 |
消化器 | 腹痛、便秘、嘔気、下痢、膵炎、口内炎 |
筋・骨格系 | CK上昇、無力症、筋肉痛、関節痛、筋痙攣 |
精神神経系 | 頭痛、浮動性めまい、健忘、睡眠障害(不眠、悪夢等)、抑うつ |
内分泌 | 女性化乳房 |
代謝異常 | HbA1c上昇、血糖値上昇 |
肝臓 | 肝機能異常(AST上昇、ALT上昇) |
腎臓 | 蛋白尿、腎機能異常(BUN上昇、血清クレアチニン上昇) |
以上のような症状があらわれたときは、医師または薬剤師に相談してください。
クレストールのジェネリックについて
クレストールのジェネリック医薬品
クレストールのジェネリック医薬品は、ロスバスタチン錠という名前で様々な製薬会社から販売されています。
クレストールの個人輸入に注意!
クレストールは医師の処方箋が必要な薬です。しかし、個人輸入等により市販され、通販サイトなどで流通しているものも一部存在します。
個人輸入で手に入れた薬は全て副作用救済制度が受けられない可能性があるなど、個人輸入には様々な危険がともなう恐れがあるため、避けましょう。ご自身の安全のためにも、病院で相談し、適切に処方してもらうようにしましょう。
クレストールの用法・用量
用法・用量
通常、成人は2.5㎎または5㎎を1日1回服用します。年齢や症状などにより用法用量は変化することがあります。
クレストールを服用するとき、原則として最小の2.5㎎から服用を開始しますが、早期にコレステロール値を低下させる必要のある場合には、医師の判断により5㎎から服用を開始する場合もあります。
服用から4週経過しても効果が不十分な場合は10㎎まで増量することができ、それでも効果が不十分であれば重症患者に限って1日最大20㎎まで服用することができます。
通常、成人にはロスバスタチンとして1日1回2.5mgより投与を開始するが、早期にLDL-コレステロール値を低下させる必要がある場合には5mgより投与を開始してもよい。
なお、年齢・症状により適宜増減し、投与開始後あるいは増量後、4週以降にLDL-コレステロール値の低下が不十分な場合には、漸次10mgまで増量できる。
10mgを投与してもLDL-コレステロール値の低下が十分でない、家族性高コレステロール血症患者などの重症患者に限り、さらに増量できるが、1日最大20mgまでとする。クレストール添付文書
用法・用量に関連する使用上の注意
腎機能の検査においてクレアチニンクリアランスが30mL/min/1.73m2未満と診断された方(腎機能が悪い方)は、2.5mgより投与を開始し、1日最大投与量は 5mgとなっています。
成人の1日最大量の20㎎服用においては腎機能に影響を与える可能性が高まるため、定期的に腎機能検査を行うなど、慎重に経過を観察する必要があります。
クレアチニンクリアランスが30mL/min/1.73m2未満の患者に投与する場合には、2.5mgより投与を開始し、1日最大投与量は5mgとする。
特に20mg投与時においては腎機能に影響があらわれるおそれがある。20mg投与開始後12週までの間は原則、月に1回、それ以降は定期的(半年に1回等)に腎機能検査を行うなど、観察を十分に行うこと。
クレストール添付文書
粉砕しての服用・半錠服用について
クレストールを粉砕して服用することや、半錠での服用における安全性は確立していないため、医師から特別な指示がない限り通常どおり服用してください。
自己判断による粉砕服用、半錠服用は薬の効果に影響をおよぼす可能性もありますのでご注意ください。
クレストールを飲み忘れたら?
飲み忘れたときは、2回分を一気に服用することはしないでください。気づいたときから1回分ずつの服用をしてください。飲み忘れが続いたときや、体調の変化を感じたら漫然と使用を続けず、処方した医師または薬剤師に相談してください。
クレストールの使用上の注意
クレストールを服用してはいけない人
クレストールの有効成分ロスバスタチンに過敏症をおこしたことのある方、肝機能が低下している可能性のある方、妊婦または妊娠している可能性のある方、授乳をしている方、シクロスポリンを服用している方はクレストールを使用できません。
禁忌(次の患者には投与しないこと)
1.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
2.肝機能が低下していると考えられる以下のような患者
急性肝炎、慢性肝炎の急性増悪、肝硬変、肝癌、黄疸
3.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び授乳婦
4.シクロスポリンを投与中の患者クレストール添付文書
クレストールを服用する際に注意が必要な人
横紋筋融解症の報告例の多くが腎機能障害を有する方であり、横紋筋融解症による急激な腎障害の悪化も懸念されるため、腎障害またはその既往歴をもつ方は注意してください。
クレストールは主に肝臓で作用するため、アルコール中毒、肝障害の症状悪化の可能性があります。また、腎障害と同じくアルコール中毒者にも横紋筋融解症が発生しやすいとの報告もあります。
エリスロマイシンなどの抗生物質を服用中の方、甲状腺機能低下症の患者、遺伝性の筋疾患をもつ方、薬剤性の筋障害の既往歴のある方も注意が必要です。
クレストールとエリスロマイシンをはじめとするフィブラート系薬剤を併用することで横紋筋融解症があらわれやすくなります。
甲状腺機能低下症、遺伝性の筋疾患や薬剤性の筋障害、またはその既往歴や危険因子にある方においても同じく横紋筋融解症があらわれやすくなりますので注意してください。
その他にも注意事項が多い薬ですので、なにか気になることがあれば医師や薬剤師に相談しましょう。
高齢者は使用できる?
高齢者のクレストールの服用については添付文書上特別な記載はないため、服用することは
可能です。ただし、一般的に高齢者は肝機能や腎機能などの生理機能が低下していることが多いため、副作用が出ていないか定期的に確認しておくことが大切です。
妊娠中に使用できる?
妊娠中のクレストール服用については、以下のような報告があるため、服用することはできません。
妊娠中の方だけでなく、妊娠している可能性のある方もクレストールを服用することはできません。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。
[ラットに他のHMG-CoA還元酵素阻害剤を大量投与した場合に胎児の骨格奇形が報告されている。更にヒトでは、他のHMG-CoA還元酵素阻害剤で、妊娠3ヵ月までの間に服用したとき、胎児に先天性奇形があらわれたとの報告がある。]クレストール添付文書
授乳中に使用できる?
授乳中にクレストールを服用すると薬の成分が乳汁へ移行する可能性がありますので、服用することはできません。
授乳中の婦人には投与しないこと。[ラットで乳汁中への移行が報告されている。]
クレストール添付文書
子どもは使用できる?
子どもの使用については安全性が確立されていません。医師の判断により処方されることもありますので、その場合には医師の指示に従ってください。
小児等を対象とした有効性及び安全性を指標とした臨床試験は実施していない。
クレストール添付文書