喘息に市販薬は使える?
喘息は、気道にアレルギーなどが原因の炎症が生じ、気道が狭くなり呼吸が苦しくなる病気です。主な症状として、激しい咳や呼吸をする度にヒューヒュー、ゼーゼーという音が鳴る喘鳴があります。時には、呼吸困難を起こすこともあります。
一般的に喘息といわれている病気のほとんどは気管支喘息であり、気管支が炎症を起こし狭くなることで症状がでます。
喘息というと子どもの病気というイメージが強いですが、大人になり初めて発症する方も増えており、注意が必要です。
市販薬は一時的に症状をおさえるもの
喘息に効果がある、という市販薬は販売されていますが、どれも喘息を根本的に治療するものではありません。喘息の発作は重症化すると命に関わることもあり、長期にわたって適切な治療を受けるためには早めの受診が大切です。
しかし、急な咳の場合や、すぐに病院に行けない場合などは市販薬で一時的に症状をおさえることもできます。ただし、あくまでも市販薬は病院へ行くまでのつなぎとして使用し、長期にわたって使い続けることは避けましょう。
吸入タイプの市販薬はある?
多くの場合、喘息に対する治療薬として、病院では吸入タイプの薬が処方されています。吸入タイプの薬は、気道に直接薬を届け、発作や炎症を鎮める作用があります。
ただし、吸入タイプの薬は医師の診断をもとに使われるものであるため、2023年12月現在市販されていません。
喘息の症状をおさえるための市販薬の選び方
喘息の症状をおさえるための市販薬は、気管支を広げて呼吸を楽にすることで咳を鎮める薬を選びましょう。
ただし、市販薬の中には、喘息の症状を悪化させる恐れのある成分が含まれている薬もあるため、いくつか注意が必要です。
市販薬を選ぶときの注意点
脳の咳中枢に働くことで咳を鎮める鎮咳成分は、「麻薬性」のものと「非麻薬性」のものに分かれ、それぞれ特徴が異なります。
麻薬性鎮咳成分(リン酸コデイン、ジヒドロコデインリン酸塩)は、喘息の症状を悪化させる恐れがあるため使用してはいけません。これらの成分は一般的な咳止めの薬に配合されている場合があるため、ご注意ください。
また、一般的に非麻薬性鎮咳成分は、麻薬性鎮咳成分に比べて効果が穏やかといわれていますが、デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物は、麻薬性のコデインリン酸塩とほぼ同等の鎮咳効果を持つことが確認されています。
麻薬性 | 非麻薬性 | |
---|---|---|
効果 | 強力 | 穏やか |
特徴 |
便秘や眠気などの副作用がでやすい |
便秘がある方でも使用しやすい |
加えて、以下の点にも注意が必要です。
- アスピリンなどの解熱鎮痛薬が喘息を誘発することがあるため、喘息のある方は注意が必要です。
- 小児、妊婦、授乳中の女性、アレルギー持病のある方などは、避けるべき成分があるため、医師や薬剤師にご相談ください。
- 既に服用している薬がある方についても、医師や薬剤師にご相談いただき、成分が重複しないようにしましょう。
また、薬によっては、服用に注意が必要な方や服用してはいけない方もいるため、服用前には添付文書をご確認ください。気になる場合は、医師や薬剤師にご相談いただくとよいでしょう。
咳喘息や気管支炎の症状にも使える?
喘息の種類の中には、気管支喘息の他に、喘鳴や呼吸困難が起こらず、痰が出ない咳が続く咳喘息もあります。また、喘息と似た症状が出る病気に、気管支炎などもあります。気管支炎は、アレルギーなどが原因となる喘息と異なり、風邪や細菌性のウイルスが原因となります。
咳喘息や気管支炎も、症状に合った適切な治療を行うためになるべく早く病院を受診することをおすすめしますが、気管支を広げる成分が含まれた薬で一時的に症状をやわらげることができます。
喘息の症状をおさえるための市販薬
気管支を広げる成分を含む市販薬を紹介します。
アスクロン|微粒タイプ
アスクロン 24包【第二類医薬品】
気管支を広げる作用のあるメトキシフェナミン塩酸塩をはじめ、6種の有効成分を配合した微粒タイプの薬です。
咳や、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴をともなうような咳、痰に効果があります。8才以上のお子様から使用することができます。
使用後は眠気が現れることがあるため、車の運転などは避けるようにしてください。
ミルコデ錠A|錠剤タイプ
ミルコデ錠A 24錠【第一類医薬品】
気管支を拡張する成分を2種類(テオフィリン、dl-メチルエフェドリン塩酸塩)配合し、さらに3種類の生薬(キキョウ、セネガ、カンゾウ)とグアイフェネシンが痰の排出を助けます。
咳や、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴をともなうような咳、痰を改善します。15歳から使用できます。
眠くなる成分は含まれていません。
アストフィリンS|糖衣錠タイプ
アストフィリンS 45錠(指定第2類医薬品)【指定第二類医薬品】
2種類の気管支を広げる成分(ジプロフィリンとdl-メチルエフェドリン塩酸塩)に加え、せきの発生をおさえるノスカピン、アレルギー性の咳をおさえるジフェンヒドラミン塩酸塩を配合した薬です。
喘鳴(ぜーぜー、ひゅーひゅー)をともなう咳、咳、痰に効果を現します。15才から使用できます。
眠気を生じることがあるため、服用後は車の運転などは避けるようにしてください。
気管支喘息に効く漢方薬
喘息の症状をおさえるための市販薬には、漢方薬もあります。漢方薬の中には、効果・効能に気管支喘息も含まれているものがあります。
気管支喘息に効く漢方薬は様々ありますが、長引く咳を改善するとされる薬を2種類紹介します。
▶︎痰の出ない咳の場合|乾いた気道を潤して咳を鎮める麦門冬湯
▶︎水のような痰がともなう咳や、咳よりもくしゃみや鼻水が多く出ている場合|小青竜湯
この他にも気になる症状がある方は、医師または薬剤師にご相談ください。
麦門冬湯
ツムラ漢方麦門冬湯エキス顆粒 48包(第2類医薬品)【第二類医薬品】
効能効果 |
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体力中等度以下で、たんが切れにくく、ときに強くせきこみ、又は咽頭の乾燥感があるものの次の諸症:からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声 |
麦門冬湯は、喉の奥にたんがへばりついて、顔が赤くなるほどせき込むような咳やなかなかたんが切れない咳に適した漢方薬です。
ツムラ漢方麦門冬湯エキス顆粒は2歳から使用できます。
小青竜湯
ツムラ漢方小青竜湯エキス顆粒 20包【第二類医薬品】
効能効果 |
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体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の諸症:気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症 |
小青竜湯は、うすい水の様な痰を伴った咳や鼻水がでる方に適した漢方薬です。
ツムラ漢方小青竜湯エキス顆粒は2才から使用できます。
症状の悪化を防ぐために気をつけたいこと
気管支喘息の症状の悪化を防ぐために気をつけたいポイントを紹介します。
喘息の起こる原因やタイミングには個人差があるため、ご自身の喘息が起こるきっかけを見極めるために、喘息発作が起こった日付や状況などを記録しておくことも効果的です。
ストレスをためないようにしましょう
ストレスは自律神経の乱れなどを引き起こすため、喘息発作の原因になります。休息を充分にとるなどして、ストレスをためないようにしていきましょう。ぬるめのお湯にゆっくり浸かるのも、リラックスできるためおすすめです。
また、発作が起きたらどうしよう、という不安感がストレスになることもあります。あまり心配しすぎず、好きなことに熱中するということも喘息と上手に付き合うためのポイントです。
禁煙しましょう
喘息にたばこは厳禁です。たばこの煙が気道への刺激になるだけでなく、喉や気管支の炎症悪化の原因にも繋がります。
ご自身がたばこを吸わなくても、周りの方が吸っているたばこの副流煙も悪影響を与えます。家族など身近な方には、近くではたばこを吸わないようにしてもらいましょう。
体調を整えましょう
体が疲れていると、アレルギーの原因物質に対して敏感に反応してしまうことがあります。日ごろから体調を整えることを心がけましょう。
■しっかりと睡眠をとりましょう
睡眠不足は疲労の原因となり、喘息を発生または悪化させることがあります。十分な睡眠時間を確保し、安眠できるような環境を整えましょう。
■風邪やインフルエンザを予防しましょう
風邪やインフルエンザなどで喉の炎症が強まると、喘息の発作が悪化してしまいます。普段からうがいや手洗いなどを心がけ、風邪などを予防しましょう。また、秋から冬にかけての風邪やインフルエンザが流行する時期にはできるだけ人ごみを避け、やむを得ず人ごみに行く場合にはマスクなどを着用しましょう。
室内の環境を整えましょう
喘息発作はアレルギーが原因で起こることが多いため、室内のアレルギー原因物質を取り除くことが重要です。
室内の掃除をこまめに行い、喘息が悪化しないようにしましょう。
■カーペットはできるだけ避けましょう
ひきっぱなしのカーペットにはダニなどが発生しやすく、喘息発作の原因になります。特に畳の上にカーペットを敷くのは避けたほうがよいでしょう。
また、喘息の症状がある場合、フローリングの部屋で寝ることをおすすめします。畳の部屋で寝る場合は、布団ではなくベッドに寝るようにしましょう。その際は、防ダニ布団カバーを使用するのもよいでしょう。
■布団・枕はこまめに干しましょう
布団や枕にはダニが発生しやすいため、こまめに天日干しを行って掃除機をかけるようにしましょう。
■布製品はできるだけ置かないようにしましょう
布製品はダニなどが発生しやすく、またホコリやカビの原因にもなります。ソファなどは皮や合成皮のものを使用し、ぬいぐるみなども置かないようにしましょう。
■こまめに掃除をしよう
喘息発作を防ぐにはホコリを室内にためないことが重要です。
また、肌から落ちる垢や食べこぼしなどはダニの餌になり繁殖の原因になるため、こまめな掃除が必要です。
掃除機をこまめにかけることも重要ですが、同時に拭き掃除も行うようにしましょう。