排便時に痛む、出血がある、腫れているなど、痔の症状が疑われたら早期治療のためにも病院の受診をお勧めします。
しかし、痔の治療といえば入院して手術が必要では?と、ためらっている方も多いのではないでしょうか。
痔の症状の多くは手術をせずに薬で治療することが可能です。
この記事では、病院での痔の診察の流れと手術以外の治療方法について解説します。
痔は病院の何科を受診する?
痔の疑いのある場合は、肛門科・肛門外科を受診しましょう。肛門科や肛門外科には専門医がおり、診断から治療まで一環して行うことができます。
近所に肛門科や肛門外科が見つからないときは、外科や消化器外科でも診察は可能です。ただし、診断後に手術が必要になった場合など、症状によっては肛門科や肛門外科を紹介されることもあります。
肛門を専門とする病院では、肛門科や肛門外科を受診することを恥ずかしく思う患者に対し、診察するまでの流れに配慮を重ねている医院も多くなっています。
女性の場合は?
痔は女性にも多い症状ですが、病院を受診することに抵抗のある方も多くいます。
そのため、肛門科や肛門外科の中には女性専門外来を設けているところもあります。
男性医師に診察されることに抵抗がある方は、住まいの近くの女性医師のいる病院を探して受診しましょう。
病院での診察・検査の流れは?
痔の診察の一般的な流れは次のようになります。
なお、痔ではない大腸などの疾患が疑われる場合は、さらにX線での撮影や便の中の血液の成分を調べる精密検査が行われます。
問診
まずは、問診票をもとに医師による問診を受けます。
便秘は生活習慣の影響が大きいため、生活習慣も尋ねられます。
視診
横向きに寝た体勢で肛門部の視診を受けます。
触診・指診
医師がゴム手袋をした指にゼリーなどを塗って、肛門の周りを調べます。
さらに、肛門内に指を挿入し、内部や直腸の粘膜に触れて診察をする指診を行い、痔の状態を確認します。
肛門鏡検査
肛門に肛門鏡という器具を挿入して、肛門内部の粘膜の状態を確認します。
内視鏡検査
下剤などで腸内の便を排出してから、先端に高性能なカメラを装着したチューブを肛門に挿入し、大腸の内部をモニターで観察します。
痔の病院での治療法は?
診察により痔の状態が特定されると、痔の種類にあった治療方法が当てられます。
痔の治療には、薬を使った治療、注射による治療、手術があります。痔の中でも「痔ろう」は手術が必要になりますが、「いぼ痔」や「切れ痔」では状態によって手術を行わなずに治療が可能です。実際に痔の悩みがある方の多くは手術の必要はなく、そのほかの治療方法で治療することがほとんどです。
ただし、薬による治療を2~3か月行っても症状の改善が見られない場合や、重度の内痔核、切れ痔、痔ろうの場合は手術が必要です。
いぼ痔・切れ痔の治療は薬がメイン
病院で処方される痔の治療薬には、痔の症状や種類に合わせて使いやすいように坐薬・塗り薬の外用薬と、飲み薬の3種類があります。
■坐薬
肛門に挿入しやすいようにやわらかい素材でできた固形の薬です。
通常は就寝前に1回使用し、寝ている間に溶けた成分が肛門の痛みを止めたり、止血の効果をあらわします。主に肛門の内側にできたいぼ痔や切れ痔の治療に使われます。
■塗り薬
塗り薬は、肛門周辺に塗るタイプと肛門に注入するタイプがあります。坐薬と同じく痛み止めや止血の効果があります。
軟膏剤やクリーム剤があり、坐薬が使えない肛門出口周辺にあるいぼ痔や切れ痔に使われます。
■飲み薬
痔の治療に使われる飲み薬には、便をやわらかくする緩下剤、炎症をおさえる消炎剤、抗生物質などが使われます。血流を改善する作用、創傷の治癒を促進する作用、局所麻酔作用などを持つ薬を使用することもあります。
飲み薬は、痔の状態や症状によって外用薬と組み合わせて治療の効果を高めるために使うことがあります。
軽度の切れ痔・いぼ痔は市販薬で対処することもできます。詳しくは関連記事をごらんください。
いぼ痔は注射での治療も
近年では、痔を注射で治療する方法も増えています。特に注射治療は、いぼ痔が肛門の内部にできる内痔核の治療に向いています。
「ALTA療法(ジオン注)」という注射治療は、患部の痔核(いぼ)に注射し、痔核の組織を硬化させ退縮させることにより、患部を切らずに治療する方法です。
痔核を切り取る手術よりも治療時間は短く、痛みを感じない直腸部に注射するので、治療中や治療後の痛みが比較的少ないことが特徴です。注射治療は日帰りで行われるため、入院の必要がありません。
痔ろうと重度のいぼ痔・切れ痔は手術を行う
痔の手術の方法は痔の種類や症状の段階によって異なります。必ずしも入院しなければいけない訳ではなく、日帰り手術が可能な場合があります。
いぼ痔や切れ痔で手術を行うのは症状が重度の場合です。
ただし、痔ろうは他の痔と異なり手術をしないと治らず、開放術式や括約筋温存術式(くりぬき法)、シートン法といった痔ろう根治手術を行います。
痔の治療費はどれくらい?
痔の治療は基本的に保険適用になり、治療費は3割負担となります。初診料は3割負担の場合3000円程度です。
以前は1~2週間程度の入院が必要でしたが、現在では入院しても2~3日程度です。また、日帰りで手術が可能なケースが多くなっています。
手術を行う場合は、いぼ痔や切れ痔は2~4万円程度、痔ろうは2~6万円程度の費用が目安となります。
ただし、痔の症状によっては複数の治療を組み合わせたり保険適用でない治療法を使用することもあり、自由診療になることもあります。
おわりに
いぼ痔や切れ痔は早期に治療を始めれば、手術をせずに治せることがほとんどです。
痔は毎日の排便時にも影響を及ぼしてしまう病気です。日常生活に大きな影響が出る前に専門医に相談しましょう。