アトロピンの作用
アトロピンは作用する部位によって効果が変わります。作用させたい部位に使用するためにアトロピンは様々な剤形があります。
代表的な剤形の主な使用目的として、アトロピン点眼液は調節麻痺、アトロピン注シリンジは中毒時の治療や胃痙攣などに使用されます。
アトロピンの作用機序
アトロピンは副交感神経の働きに関わるアセチルコリンという物質の働きをおさえます。アセチルコリンはムスカリン受容体やニコチン受容体にくっつくことで、その作用を現します。アトロピンはアセチルコリンがムスカリン受容体にくっつくことを邪魔します。その結果、副交感神経の働きをおさえてくれるのです。これを抗コリン作用と呼びます。
アトロピンの副作用
アトロピンの副作用が認められた場合には、使用を中止するなど適切な処置を行ってください。
今回は全身に作用するアトロピン注射剤の副作用を紹介します。
重大な副作用
ショック、アナフィラキシー (頻度不明) があらわれることがあるので、観察を十分に行い、頻脈、全身潮紅、発汗、顔面浮腫等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行ってください。
その他の副作用
その他の副作用には、次のようなものがあります。
眼 | 散瞳、視調節障害、緑内障 |
消化器 | 口渇、悪心、嘔吐、嚥下障害、便秘 |
泌尿器 | 排尿障害 |
精神神経系 | 頭痛、頭重感、記銘障害 |
呼吸・循環器 | 心悸亢進、呼吸障害 |
過敏症 | 発疹 |
その他 | 顔面潮紅 |
アトロピンの注意点
アトロピンは抗コリン作用があるため、使用する方の体質や病歴には十分に注意が必要です。
アトロピン注の使用に注意が必要な方
アトロピンを使用する際は注意が必要な方が決まっています。しかし、使用する剤形によっては注意が必要ない方もいますので、使用前にしっかりと医師や薬剤師に確認しましょう。
●開放隅角緑内障のある方
アトロピンが瞳孔を開く(散瞳)ことで、眼圧を高め症状を悪化させることがあるため、基本的に使用することができません。
●前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)で尿が出にくい方
アトロピンが膀胱(ぼうこう)や尿道に作用することで、尿が出にくくなる恐れがあるため、基本的に使用することができません。
●麻痺性イレウスのある方
アトロピンが腸の運動をおさえるので、症状が悪化することがあるため、基本的に使用することができません。
●うっ血性心不全のある方
心拍数が増加し、心臓に負荷をかけることがあるため、症状を悪化させる恐れがあります。
●重篤な心臓の病気がある方
アトロピンが心拍数を増やすことがあるので、症状が悪化することがあります。
●潰瘍性大腸炎の方
中毒性巨大結腸があらわれることがあります。
●甲状腺機能亢進症の方
頻脈、体温上昇などの症状が増強するおそれがあります。
●高温環境にある方
発汗抑制が起こり、体温調節が困難になるおそれがあります。
アトロピンの禁忌
アトロピンは剤形によって使用してはいけない方が異なります。診察の際にはご自身の体質や他の病気について医師に相談することが大切です。
アトロピン点眼液 | アトロピン注シリンジ | |
緑内障 | ☓ | ☓ |
前立腺肥大 | ☓ | |
麻痺性イレウス | ☓ | |
アトロピン過敏症 | ☓ |
[☓は禁忌を示しています。]
アトロピンは子どもに使えるの?
アトロピンは医師の判断により、子どもに使われることがあります。アトロピンの代表的な剤形による使用の可否は以下になります。
アトロピン点眼液 | アトロピン注シリンジ | |
子どもの使用 | ◯ | △ |
備考 | 0.25%液を使用することが望ましい。 | 安全性は確立していない。 |
アトロピンと併用に注意が必要なもの
アトロピン注では、添付文書上、併用注意の薬として、三環系抗うつ剤、フェノチアジン系薬剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、抗ヒスタミン剤、イソニアジド、ジギタリス製剤、プラリドキシムヨウ化メチルがあります。
また、アトロピン点眼では、三環系及び四環系抗うつ剤、フェノチアジン系薬剤、抗ヒスタミン剤等があります。
アトロピンのほかに使用している薬がある場合には医師や薬剤師に相談しましょう。