アモキシシリンの効能・効果
アモキシシリンは感染症の原因となる細菌を殺す薬です。
成分であるアモキシシリン水和物はペニシリン系抗生物質に分類され、ブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、大腸菌、プロテウス・ミラビリス、インフルエンザ菌、ヘリコバクター・ピロリ、梅毒トレポネーマに対して効果があります。
皮ふ感染症、咽頭・喉頭炎、扁桃炎・急性気管支炎、膀胱炎、中耳炎、淋病や梅毒などの性器感染症、手術後や外傷への二次感染の予防、胃潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌など、さまざまな感染症に使用されます。また、歯周病などにも使用されるため、歯科で処方されることもあります。
さまざまな細菌に対して効果がありますが、クラミジアやニキビの原因菌・アクネ菌への効果は認められていません。
風邪には効果がある?
以前は風邪や下痢症状に抗生物質が処方されていましたが、「一般的な風邪の原因となるウイルスに対しては抗生物質は効果がない」として、2017年6月に厚生労働省は風邪に対して抗生物質の使用を推奨しないというガイドラインを公表しました。
また、急性の下痢についても自然に治ることが多いことから、抗生物質はあまり使用しないようにとされています。
副鼻腔炎への効果
副鼻腔炎には急性のものと慢性のものがあり、アモキシシリンはどちらの症状にも使用されます。
「抗微生物薬適正使用の手引き 第二版」によると、成人に対しては、医師に軽症と診断された急性副鼻腔炎に対しては、抗生物質を使用しないことが推奨されています。ただし、中等症または重症と診断された急性副鼻腔炎に対しては、アモキシシリン水和物の5~7日間の使用が推奨されます。
学童期以降の子どもに対しては、急性副鼻腔炎に対しては、原則抗生物質を使用しないことが推奨されていますが、長引く場合や重症の場合にはアモキシシリン水和物の7~10日間の使用が推奨されます。
また、慢性副鼻腔炎では、アモキシシリンやマクロライド系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬を症状や年齢に合わせて処方します。
アモキシシリンの成分が含まれる市販薬はありませんが、副鼻腔炎に効果を発揮する漢方の市販薬などは販売されています。
チクナインb 112錠(第2類医薬品)【第二類医薬品】
アモキシシリンの用法・用量
アモキシシリンは、使用する症状によって用量が異なります。
ヘリコバクター・ピロリ感染症以外の感染症では、成人には通常、1回250mg(力価)を1日3~4回使用します。
また、15歳未満の子どもには通常、体重1kgあたり1日20~40mg(力価)を3~4回にわけて使用します。(1日量として最大90mg(力価)/kgを超えない)
いずれの場合も、年齢や症状によって用量を調節して使用します。
◼︎ヘリコバクター・ピロリ感染症、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の場合
【アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン・プロトンポンプインヒビター併用の場合】
通常、成人はアモキシシリン水和物を1回750mg(力価)、クラリスロマイシンを1回200mg(力価)、プロトンポンプインヒビターの3種類の薬を同時に1日2回、7日間続けて使用します。
なお、クラリスロマイシンは必要に応じて増量しますが、1日の使用量は1回400mg(力価)を1日2回までとされています。
【アモキシシリン水和物・クラリスロマイシン・プロトンポンプインヒビター併用によるヘリコバクター・ピロリの除菌治療が不成功の場合】
通常、成人はアモキシシリン水和物を1回750mg(力価)、メトロニダゾールを1回250mg、プロトンポンプインヒビターの3種類の薬を同時に1日2回、7日間続けて使用します。
アモキシシリンの使用上の注意点
アモキシシリンを使用して呼吸困難やけいれんなどの重篤なアレルギー反応を起こしたことがある方、伝染性単核症の方はアモキシシリンを使用できません。
また、ペニシリン系抗生物質や、化学構造式が似ているセフェム系抗生物質を使用してじん麻疹などの過敏反応を起こしたことがある方は、注意が必要です。過去にこれらの抗生物質でアレルギー反応を起こした方は必ず医師にお伝えください。
アモキシシリンをはじめ抗生物質が処方された場合は、薬への耐性を持った細菌が出現して薬が効かなくなるという状況を防ぐため、体調に異常がない限りは医師から指示された用量・期間を必ず守って使用してください。
妊娠・授乳中の使用
妊娠中や妊娠している可能性がある方は、医師が必要と判断した場合のみ使用できます。なお、ラットでの実験においては胎児の発育への影響が報告されています。
また、授乳中の方がアモキシシリンを使用する場合は、授乳を継続または中止の検討が必要です。
小児への使用
生後4週以後~15歳未満の子どもについては特に注意点はありません。医師の処方の通りに使用してください。
低出生体重児や生後4週未満の子供には使用した経験が少なく安全性が確立されていませんが、医師が必要と判断した場合には使用するケースがあります。
アモキシシリンの飲み合わせ
アモキシシリンとワルファリンを併用すると、ビタミンKが欠乏し、ワルファリンの作用が強まる可能性があります。また、経口避妊薬との併用では経口避妊薬の効果が弱まることが、プロベネシドとの併用ではアモキシシリンの作用が強くなることがあります。
現在使用している薬がある場合は、アモキシシリンを使用する前に必ず医師・薬剤師に伝えましょう。
アモキシシリンとアルコールの飲み合わせ自体は問題ありませんが、治療中の病気によってはアルコールを飲むことで症状が悪化するおそれがあります。お酒を飲む可能性がある場合は医師・薬剤師に相談してください。
アモキシシリンとロキソニンの併用は問題ありません。
アモキシシリンの副作用
アモキシシリンで比較的起こりやすい副作用は下痢、食欲不振、吐き気・嘔吐、発疹などです。また、好酸球増多など臨床検査値の異常が起こることもあります。
抗生物質を使用するとお腹がゆるくなりやすいのですが、これは腸内細菌に対しても抗菌効果が働くために起こる症状なのでほとんど心配はありません。抗生物質の服用が終了して、腸内細菌が元の状態に戻れば下痢や軟便も改善します。ただし、激しい腹痛や血便、1日に5回以上の下痢が続くような場合は、重大な副作用の可能性もあるため医師に相談してください。
そのほか、ペニシリン系またはセフェム系抗生物質を使用してアレルギー反応を起こしたことがある方、本人や両親・兄弟が気管支喘息・発疹・蕁麻疹などのアレルギー症状を起こしやすい体質の方、高度の腎障害がある方、高齢者の方は、アモキシシリンの使用前に必ず医師に報告・相談してください。
重大な副作用
滅多に起こることはありませんが、ショック、アナフィラキシー、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、急性汎発性発疹性膿疱症、紅皮症(剥脱性皮膚炎)、顆粒球減少、血小板減少、肝障害、急性腎障害などの重篤な腎障害、偽膜性大腸炎・出血性大腸炎などの血便を伴う重篤な大腸炎、間質性肺炎、好酸球性肺炎、無菌性髄膜炎があらわれるおそれがあります。
不快感、口内異常感、ゼーゼーヒューヒューという呼吸音、めまい、耳鳴、発汗、発熱、頭痛、吐き気・嘔吐、関節痛、皮膚や粘膜異常、腹痛、血便、1日に5回以上の下痢などの症状が現れた場合は直ちにアモキシシリンの使用を中止し、医療機関を受診してください。
アモキシシリンの先発品とジェネリック
アモキシシリンを主成分とする薬の先発品は「サワシリン」や「パセトシン」などの名前で販売されています。剤型には錠剤、カプセル、細粒があり、年齢や症状によって使い分けられます。
アモキシシリンのジェネリック医薬品は複数の製薬会社から「アモキシシリン」という成分名で販売されており、先発品よりも安価になる可能性があります。ジェネリック医薬品の処方を希望する場合は、医師・薬剤師に相談しましょう。