イソプロピルアルコールの消毒・殺菌効果を解説|濃度や危険性について
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薬剤師監修日:
病院などでよく使われる消毒液のイソプロピルアルコールの消毒・殺菌効果や濃度、使用上の注意について解説します。

イソプロピルアルコールとは?
イソプロピルアルコール(IPA)は手指や皮膚、医療機器の消毒に使用される有機溶剤※です。
イソプロパノールとも呼ばれます。
IPAはアルコール類に分類され、特徴的なにおいがある無色透明の液体です。
同じアルコール類の「エタノール」の代わりに消毒用として使用されることもあります。
水やエタノールとよく混ざり合い、脂を取り去る作用もあります。
※有機溶剤とは:他の物質を溶かす性質を持つ炭素を含む化合物のことで、常温では液体状ですが蒸発しやすい性質(揮発性)と油脂に溶ける性質(油溶性)もあり人の呼吸や皮膚から吸収される特徴があります。
イソプロピルアルコールの濃度
手指や皮膚、医療機器などの消毒に使用する場合は、濃度50%〜70%での使用が適しています。
特に高い殺菌効果を期待する場合は濃度70%のIPAが推奨されています。
イソプロピルアルコールの消毒・殺菌効果
IPAには微生物のタンパク質を変形させ凝固させる作用や代謝障害、細菌の死滅・溶解による殺菌作用があります。
そのため手や指、皮膚などの人体の消毒から医療機器などの消毒に幅広く使用されています。
菌に対する効果は?
適応範囲は広く、皮膚の感染症や食中毒などの原因にもなる黄色ブドウ球菌などは、濃度が70%程度のIPAであれば15秒以内でほとんどの菌を死滅させることができ、即効性にも優れています。
ただし、消毒・殺菌効果の持続性はありません。
ウイルスに対する効果は?
インフルエンザウイルスやRSウイルスなどに対しても濃度が70%程度のIPAであれば10秒以内でウイルスの感染力や毒性を失わせる効果(不活化効果)があります。
これらのエンベロープという膜構造を持つウイルスに対してはイソプロピルアルコールは消毒用エタノールよりもやや強い効力を持つ傾向があります。
また、新型コロナウイルス対策としてドアノブや手すり、スイッチなどの消毒にイソプロピルアルコールを使用できます。
一方で、ノロウイルスやアデノウイルスなどエンベロープを持たないウイルスに対しては、イソプロピルアルコールよりもエタノールのほうがすぐれた消毒効果を持ちます。したがって、ノロウイルスやロタウイルス、アデノウイルスへの手指消毒では、消毒用エタノールを選んでください。
また、エンベロープを持たないウイルスついてはアルコール類は全般的に消毒に長い時間を要する傾向があります。ノロウイルスの感染症対策として物品消毒をする際は次亜塩素酸ナトリウムを利用しましょう。
イソプロピルアルコールの使用上の注意
イソプロピルアルコール(IPA)を皮膚に使用する場合
IPAは脱脂作用が高く、消毒などで頻繁に使用した場合、乾燥や皮膚の炎症を起こすことがあります。そのため、日常的に使用するのであれば、消毒用エタノールまたは、消毒用エタノールにIPAを添加したものの方が安全に使用することができます。肌の弱い方は、合わせて保湿を行うこともおすすめします。
また、損傷している皮膚や粘膜などには刺激作用があるため使用しないでください。
医療機器等を消毒・殺菌する場合
血清や膿んだ汁などのタンパク質を凝固させ、殺菌・消毒効果が内部まで浸透しない場合があるので、医療機器などを消毒・殺菌する際はしっかりと汚れを洗い流してから使用してください。
合成ゴム・樹脂製品や光学器具にはIPAを使用すると変質するものがあるので長時間液剤に浸すことはしないでください。
使用する時の注意
IPAは引火点がおよそ12℃と非常に引火性が高い液体です。そのため火に近づけると引火するおそれがあるため、火気に近づけないように注意してください。静電気などにも十分に注意が必要です。
また、揮発性があるので、蒸気が空気と混合することにより高濃度の爆発性のあるガスが発生します。密室などではガスが滞留することがあるので使用する際は必ず換気ができる場所で使用してください。
イソプロピルアルコール(IPA)で気分が悪くなったら…
IPAを吸入してしまい気分が悪くなった場合はすぐに、新鮮な空気の場所に移動し休息をとってください。症状が落ち着いたあとは、念のため医師の診療を受けてください。
また、眼などにIPAが入った場合は、眼を流水で15分以上よく洗い流し、異常がある場合はすぐに医師の診療を受けてください。
おわりに
IPAは濃度によって消毒や殺菌だけではなく、さまざまな用途があります。
同時に、引火性の高さや揮発性があり、使用に注意が必要な薬剤でもあります。IPAを使用する際は必ず使用上の注意をきちんと守り、安全に使用してください。
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