抗てんかん薬イーケプラは副作用の現れやすい薬?
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薬剤師監修日:
てんかんに使用する薬・イーケプラについて現役薬剤師監修のもとわかりやすく解説。イーケプラの効果、眠気などの副作用や現れる割合などについて、妊娠中の方の使用、飲み忘れた場合の対処法、飲み合わせなどを掲載。

イーケプラは、てんかんの発作をおさえる薬です。過剰に興奮した脳内神経をおさえる働きがあります。
イーケプラは錠剤、ドライシロップ(粉薬)、点滴静注(点滴薬)の3種類があります。どの剤形でも効能効果に違いはありません。
効能又は効果
〇てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
〇他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
【てんかんの部分発作とは】
脳の全体または大部分が過剰な興奮状態になっておこる発作を「全般発作」といい、脳の一部が興奮状態になることでおこる発作を「部分発作」といいます。
部分発作と全般発作ではてんかんの種類が異なり、現れる症状も異なる場合もあります。
部分発作の場合に現れる症状は、運動・身体感覚の麻痺、自律神経の乱れ、感情のコントロールがきかなくなるなどの精神症状などがあります。また、意識障害はある場合とない場合があります。
イーケプラの血中濃度
イーケプラは、薬を使用してからおよそ1時間後に血液中で薬の濃度が最も高くなっている状態になります。また、血液中の薬の濃度が半分になるのにかかる時間は、およそ7〜9時間程度です。
イーケプラの特徴
他の抗てんかん薬では効果がなかった場合にイーケプラを使用することもあります。
てんかんに対してイーケプラ単剤で治療する場合もありますが、けいれんをともなう発作(強直間代発作)などが激しかったり、抗てんかん薬が効きづらい方に対しては、他の抗てんかん薬とイーケプラを併用して治療する場合もあります。イーケプラは他のてんかん薬とは異なる働きをするためで、働きの違う薬を併用することで、効果的な治療が期待されます。
イーケプラの副作用
イーケプラは副作用が現れることがある薬です。
添付文書によると、使用者の年齢によって副作用の現れ方に違いがあります。また、イーケプラを単剤で治療した場合と、他の薬と併用した場合によっても副作用の現れ方に違いがあります。
15歳以上の副作用
【てんかんの部分発作に対してイーケプラのみで治療した場合】
飲み薬での主な副作用は、眠気(傾眠)の他にめまい、だるさなどです。なお、飲み薬での臨床試験ではおよそ55%の方に副作用が現れています。
【てんかんの部分発作に対して他の薬と併用治療した場合】
飲み薬での主な副作用として鼻咽頭炎、眠気、頭痛、体がフラフラするように感じるめまい(浮動性めまい)、下痢、便秘などが確認されています。なお、飲み薬での臨床試験ではおよそ90%の方に副作用が現れています。
【けいれんをともなう発作をおさえるために他の薬と併用治療した場合】
飲み薬での主な副作用は、眠気の他に上気道感染、尿中タンパク陽性などが確認されています。なお、飲み薬での臨床試験ではおよそ20%の方に副作用が現れています。
4歳以上15歳未満の子どもの副作用
【てんかんの部分発作に対して他の薬と併用治療した場合】
飲み薬での主な副作用は眠気ですが、血液検査などの検査値異常が現れることも確認されています。なお、飲み薬での臨床試験ではおよそ60%の方に副作用が現れています。
【けいれんをともなう発作をおさえるために他の薬と併用治療した場合】
飲み薬での主な副作用は眠気ですが、心電図検査などの検査値異常が現れることも確認されています。なお、飲み薬での臨床試験ではおよそ45%の方に副作用が現れています。
最も現れやすい副作用は眠気
イーケプラの副作用で、現れやすい副作用は眠気です。使用者の年齢や使用用途に関係なく現れやすいことが確認されています。眠気は単剤使用でも現れやすい副作用ですが、薬を併用して治療することでさらに現れやすくなるという結果がでています。
イーケプラを使用してあまりに眠気が強く出る場合は医師に相談してください。併用する薬の整理や再検討をしてもらいましょう。
なお、眠気だけでなく、注意力・集中力・反射運動能力の低下などがおこるおそれもあります。イーケプラを使用中は自動車の運転や危険をともなう機械の操作を行わないでください。
まれにうつ症状が現れることも
イーケプラを使用することでイライラして攻撃的になる、ちょっとしたことで落ち込む、焦りや不安が募るといった精神症状が現れることがあります。また、場合によっては自殺を企てるような精神状態になることもあります。
眠気などの副作用と比べるとうつ症状が現れることは少ないとされていますが、精神症状の副作用にも注意してください。
万が一副作用と思われる症状が現れた場合は医師の指示をあおぎましょう。
その他の副作用
その他の副作用として以下の症状が現れるおそれもあります。眠気などと比べると現れる頻度は少ないですが注意しましょう。
精 神 神 経 系 |
浮動性めまい、頭痛、不眠症、傾眠、けいれん、抑うつ、不安、体位性めまい、感覚鈍麻、気分変動、睡眠障害、緊張性頭痛、振戦、精神病性障害、易刺激性、激越、健忘、注意力障害、幻覚、運動過多、記憶障害、錯感覚、思考異常、平衡障害、感情不安定、異常行動、協調運動異常、怒り、ジスキネジー、錯乱状態、敵意、気分動揺、神経過敏、人格障害、精神運動亢進、舞踏アテトーゼ運動、パニック発作、嗜眠、てんかん増悪 |
---|---|
眼 | 複視、結膜炎、眼精疲労、眼そう痒症、麦粒腫、霧視 |
血 液 |
白血球数減少、好中球数減少、貧血、血中鉄減少、鉄欠乏性貧血、血小板数減少、白血球数増加 |
循 環 器 |
高血圧、心電図QT延長 |
消 化 器 |
腹痛、便秘、下痢、胃腸炎、悪心、口内炎、嘔吐、齲歯、口唇炎、歯肉腫脹、歯肉炎、痔核、歯周炎、胃不快感、消化不良 |
肝 臓 |
肝機能異常、ALP増加 |
泌 尿 ・ 生 殖 器 |
月経困難症、膀胱炎、頻尿、尿中ブドウ糖陽性、尿中血陽性、尿中蛋白陽性 |
呼吸器 | 鼻咽頭炎、咽喉頭疼痛、上気道の炎症、鼻炎、気管支炎、咳嗽、鼻出血、肺炎、鼻漏、インフルエンザ |
代謝 ・ 栄養 |
食欲不振 |
皮 膚 |
湿疹、発疹、ざ瘡、皮膚炎、単純ヘルペス、帯状疱疹、そう痒症、白癬感染、脱毛症、多形紅斑、血管性浮腫 |
筋 骨 格 系 |
関節痛、背部痛、筋力低下、肩痛、筋肉痛、四肢痛、筋骨格硬直、頸部痛 |
感 覚 器 |
耳鳴、回転性めまい |
そ の 他 |
けん怠感、発熱、体重減少、体重増加、血中トリグリセリド増加、胸痛、末梢性浮腫、抗けいれん剤濃度増加、無力症、疲労、事故による外傷(皮膚裂傷など) |
重大な副作用
頻度は不明ですが、以下のような重大な副作用が現れるおそれもあります。副作用と思われる体調の悪化が現れた場合は医療機関を受診してください。
・中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)
・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
・薬剤性過敏症症候群
・重篤な血液障害
・肝不全、肝炎
・膵炎
・攻撃性、自殺企図
・横紋筋融解症
・急性腎不全
・悪性症候群
イーケプラの使用に注意が必要な方
イーケプラの成分であるレベチラセタムやピロリドン誘導体に対してアレルギー反応や過敏症をおこしたことのある方はイーケプラを使用できません。
また、腎機能障害や重度肝機能障害のある方、高齢者は用法用量を調節する必要がある場合があります。医師の指示のもと用法用量を正しく守って使用してください。
妊娠中・授乳中の使用
妊娠中の方は必ず医師に申告し、医師が使用するかどうかを判断します。
また、イーケプラの成分は乳汁へ移行することも確認されています。薬の成分が移行した乳汁を乳児が飲むと悪影響を及ぼすおそれがあります。授乳中の方がイーケプラを使用する場合は授乳の継続または中止を検討してください。
イーケプラを小児が使用する場合
通常、イーケプラ錠は4歳から、イーケプラドライシロップは症状によっては生後1か月から使用できる薬です。ただし、使用者の体重・症状などによっては医師の判断で使用する場合があります。
イーケプラの使用方法
イーケプラの用法用量は、年齢によって異なります。また、使用量の増量や増量のために必要な間隔期間は医師の指示に従いましょう。
【15歳以上の成人に使用する場合】
イーケプラの成分であるレベチラセタムを1日1000mg、1日2回にわけて使用します。症状によって医師の判断により使用量を調整しますが、1日の最大使用量はレベチラセタムとして3000mgまでとします。
使用量の増量や増量のために必要な間隔期間は医師の指示に従いましょう。
なお、レベチラセタム500mgを各剤形・規格ごとの量に換算すると以下のとおりです。
剤形・規格 | 量 |
---|---|
250mg錠 | 2錠 |
500mg錠 | 1錠 |
ドライシロップ | 1g |
点滴静注500mg | 1瓶 |
【錠剤を4歳以上15歳未満の子どもに使用する場合】
イーケプラの成分であるレベチラセタムを1日20mg/kgを1日2回にわけて使用します。症状によって医師の判断により使用量を調整しますが、1日の最大使用量はレベチラセタムとして60mg/kgとします。
ただし、体重50kg以上の子どもは、15歳以上の成人と同じ用法・用量を使用します。
【ドライシロップを生後6か月以上15歳未満の子どもに使用する場合】
イーケプラの成分であるレベチラセタムを1日20mg/kg(ドライシロップとして40mg/kg)を1日2回にわけて溶かして使用します。症状によって医師の判断により使用量を調整しますが、1日の最大使用量はレベチラセタムとして60mg/kgとします。
ただし、体重50kg以上の子どもは、15歳以上の成人と同じ用法・用量を使用します。
【ドライシロップを生後1か月以上6か月未満の子どもに使用する場合(部分発作のみ)】
イーケプラの成分であるレベチラセタムを1日14mg/kg(ドライシロップとして28mg/kg)を1日2回にわけて溶かして使用します。症状によって医師の判断により使用量を調整しますが、1日の最大使用量はレベチラセタムとして42mg/kgとします。
イーケプラを飲み忘れてしまった場合
イーケプラを飲み忘れてしまった場合は気づいた時点で使用してください。次に使用する時間が近い場合は、忘れてしまった1回分はとばします。
次の使用時には、2回分を一度に使用せず、通常どおり1回分使用してください。
飲み忘れる頻度が多い場合や、誤って多く使用してしまった場合は、医師・薬剤師に相談してください。
イーケプラの飲み合わせ
イーケプラは、基本的に飲み合わせに気をつける薬はありません。すでに何らかの薬を使用しているなどの理由で飲み合わせが気になる場合は医師・薬剤師に相談しましょう。
また、一般的にアルコール(お酒)を飲んだあとに薬を使用すると、薬の吸収・代謝・効果などに影響がでることがあるため注意してください。
イーケプラのジェネリック
イーケプラにはジェネリック医薬品が発売されています。複数のメーカーから成分名である「レベチラセタム」という名称で発売されています。ジェネリック医薬品を希望する場合は、医師や薬剤師にご相談ください。
また、イーケプラの成分であるレベチラセタムのみを使用した市販薬は発売されていません。
※2023年7月時点
おわりに
イーケプラは、副作用が現れることのある薬です。薬を使用して身体に違和感を感じたり、薬の使用について疑問がある場合は医師・薬剤師に相談してください。
出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページ
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