バンコマイシンの効能・効果:適応症と適応菌種について
バンコマイシンはグリコペプチド系の抗生物質で、細菌を殺す作用をもつ薬です。
バンコマイシンには飲み薬である「バンコマイシン塩酸塩散」、目の塗り薬である「バンコマイシン眼軟膏」、注射剤である「バンコマイシン塩酸塩点滴静注用」があります。
飲み薬は感染性腸炎などに使用されます。
目の感染症には外用薬(眼軟膏)を、炎症・感染症には注射・点滴が使用されます。
バンコマイシン塩酸塩散
主に偽膜性大腸炎を含む感染性の腸炎に使用されます。
感染性腸炎での適応菌種は、バンコマイシンに感性のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、クロストリジウム・ディフィシルです。
また、骨髄移植時の消化管内の殺菌を目的にも使用されます。
バンコマイシン塩酸塩眼軟膏
ほかの抗菌薬を使用しても治療効果が得られない場合の結膜炎、眼けん炎、けん板腺炎、涙のう炎に使用されます。
適応菌種は、バンコマイシンに感性のMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)、MRSE(メチシリン耐性表皮ブドウ球菌)です。
バンコマイシン塩酸塩点滴静注用
MRSA、MRCNS、PRSPが原因と考えられる敗血症や肺炎・関節炎などの各種炎症、発熱性好中球減少症などに使用されます。
1. <適応菌種>
バンコマイシンに感性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)
<適応症>
敗血症,感染性心内膜炎,外傷・熱傷及び手術創等の二次感染,骨髄炎,関節炎,肺炎,肺膿瘍,膿胸,腹膜炎,化膿性髄膜炎2. <適応菌種>
バンコマイシンに感性のメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MRCNS)<適応症>
敗血症,感染性心内膜炎,外傷・熱傷及び手術創等の二次感染,骨髄炎,関節炎,腹膜炎,化膿性髄膜炎3. <適応菌種>
バンコマイシンに感性のペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)<適応症>
敗血症,肺炎,化膿性髄膜炎4. MRSA又はMRCNS感染が疑われる発熱性好中球減少症
作用機序
バンコマイシンは細菌の細胞壁合成を阻害し、殺菌的な抗菌作用を示します。
バンコマイシンの用法用量:散剤・眼軟膏の使い方
バンコマイシン塩酸塩散
【感染性腸炎の場合】
15歳以上の場合は1回0.125~0.5g(力価)を、1日4回服用します。なお、用量は年齢・体重・症状から医師が必要量を判断し調節します。
【骨髄移植後の消化管内殺菌の場合】
15歳以上の場合は消化管から吸収されないほかの抗菌薬・抗真菌薬と一緒に、バンコマイシン1回0.5g(力価)を1日4~6回服用します。なお、用量は年齢・体重・症状から医師が必要量を判断し調節します。
バンコマイシン眼軟膏
1日4回、適量を患部などに塗ります。
バンコマイシン塩酸塩点滴静注用
年齢に応じて下記の量を点滴静注します。いずれの場合も60分以上かけて点滴を行います。
年齢 | 1日量(力価) | 1回量(力価) | 分割回数 |
15歳以上 | 2g(適宜増減) | 0.5g | 6時間ごと |
1g | 12時間ごと | ||
65歳以上の高齢者 | 適宜増減 | 0.5g | 12時間ごと |
1g | 24時間ごと | ||
生後1か月~15歳未満 | 40mg/kg | - | 2~4回に分割 |
生後28日未満 | - | 10~15mg/kg | 生後1週まで:12時間ごと |
生後1か月まで:8時間ごと |
バンコマイシンの副作用
バンコマイシン塩酸塩散
主に、下痢、吐き気、嘔吐が報告されています。ほかにも、口内炎や舌炎などが報告されています。
また、重大な副作用としては、ショックやアナフィラキシーなども報告されています。
体調の変化には十分に気をつけ、何か変化があった場合は医師に報告してください。
バンコマイシン眼軟膏
主に、眼けん浮腫(まぶたのむくみ)や結膜充血(まぶたの裏の充血)が報告されています。
また、頻度不明でショックやアナフィラキシーといった重大な副作用を起こすおそれがあります。
体調の変化には十分に気をつけ、何か変化があった場合は医師に報告してください。
バンコマイシン塩酸塩点滴静注用
発疹やかゆみなどの過敏症状、貧血、発疹、発赤、かゆみなどが報告されています。
また、いづれも0.5%以下の確率ですが、ショックやアナフィラキシー、急性腎不全などさまざまな重大な副作用が報告されています。
過量投与時には、急性腎不全などの腎障害、難聴などの第8脳神経障害を起こすおそれがあるため、十分に注意する必要があります。
体調の変化には十分に気をつけ、何か変化があった場合は医師に報告してください。
レッドネック症候群とは?
短時間でバンコマイシンを点滴静注すると顔や首、からだの赤みやかゆみなどの症状が現れることがあります。原因はバンコマイシンのヒスタミン遊離作用によるもので、投与速度は60分以上かけるよう添付文書に記載されています。
バンコマイシンの使用上の注意:剤形ごとの注意
散剤(内服薬)の注意
バンコマイシンに対してショックの既往歴がある方は使用できません。
妊娠中の方、妊娠している可能性のある方は、治療する上で有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。
授乳中の方は使用しないことが望ましいとされていますが、どうしても使用しなければならなくなった場合は授乳を中止してください。
眼軟膏の注意
バンコマイシンに対して過敏症のある方は使用できません。
妊娠中の方、妊娠している可能性のある方は、治療する上で有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。
授乳中の方は使用しないことが望ましいとされていますが、どうしても使用しなければならなくなった場合は授乳を中止してください。
眼の症状にのみ使用し、ほかの部位には使用しないでください。
注射用の注意
バンコマイシンに対して過敏症のある方は使用できません。
また、テイコプラニン、ペプチド系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質に対して過敏症の既往歴のある方は原則として使用できません。
また、ペプチド系抗生物質、アミノグリコシド系抗生物質、テイコプラニンによる難聴、またはその他の難聴のある方は、難聴が発現・憎悪するおそれがあるため、原則として使用できません。
妊娠中の方、妊娠している可能性のある方は、治療する上で有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用されます。
授乳中の方は使用しないことが望ましいとされていますが、どうしても使用しなければならなくなった場合は授乳を中止してください。
高齢者では腎機能が低下しているケースが多く、また腎臓の発達段階にある15歳未満の小児(とくに生後4週未満や低出生体重児)では、高い血中濃度が長時間持続するおそれがあるため、血中濃度をモニタリングするなど慎重に使用する必要があります。
バンコマイシンの市販薬はある?
バンコマイシンなど、抗生物質に市販薬はありません。感染症は医療機関での治療が必要となるので、感染症が疑われる場合にはすぐに医療機関を受診してください。