メトトレキサートの効果・副作用
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薬剤師監修日:
リウマチやがんに使われるメトトレキサートを現役薬剤師が解説。メトトレキサートは商品別に効果・効能、用法・用量が異なります。血中濃度、副作用の種類、葉酸製剤(フォリアミン、ロイコボリン)の併用についても解説。
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メトトレキサートとは
メトトレキサートは関節リウマチや抗がん剤として使用する成分の名前です。用法・用量によって関節リウマチの薬だったり抗がん剤だったりに変化します。
関節リウマチに使用する代表的な商品名はリウマトレックス、抗がん剤に使用する代表な商品名はメトレキセートです。
メトトレキサートの作用機序
メトトレキサートは免疫抑制剤として働きます。
関節リウマチへの作用機序
・ヒト単核細胞の免疫グロブリン産生、マウス脾細胞の抗ヒツジ赤血球抗体産生を抑制します。
・マウス脾細胞のDNA合成活性の抑制によりリンパ球増殖抑制作用を有すると考えられています。
・血管内皮細胞及び滑膜線維芽細胞の増殖を抑制することから、血管新生や滑膜増生を抑制すると考えられています。
・炎症部位への好中球の遊走を抑制します。この好中球遊走抑制作用には、メトトレキサートの作用によって線維芽細胞や血管内皮細胞から遊離したアデノシンの好中球に対する細胞接着阻害作用や、強力な好中球遊走活性を有し、リソゾーム酵素の遊離作用も知られているロイコトリエンB4の産生抑制が関与する可能性が考えられています。サイトカインへの作用として、ラットのアジュバント関節炎モデルで亢進したマクロファージのインターロイキン-1(IL-1)産生を経口投与で抑制します。
・滑膜組織や軟骨組織の破壊に関与するコラゲナーゼ産生をヒト滑膜線維芽細胞で抑制し、メトトレキサート治療の関節リウマチ患者では滑膜組織中コラゲナーゼmRNA発現が抑制されます。
抗がん剤としての作用機序
葉酸を核酸合成に必要な活性型葉酸に還元させるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の働きをおさえ、チミジル酸合成及びプリン合成系を阻害して細胞増殖をおさえます。
関節炎治療薬としての使い方
関節炎治療薬としてリウマトレックスカプセル2mgを使用します。
関節リウマチへの使い方
通常は1週間単位の投与量を6mgとし、1週間単位の投与量を1回または2~3回にわけて使用します。数回に分けて飲む場合、12時間間隔で使用します。
なお、1週間単位の投与量として16mgを超えないようにします。
休薬期間が必要であり、1回または2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬します。この飲み方を1週間ごとに繰り返します。
例)2回に分けて飲む場合(火曜の朝から飲み始めた場合)
|
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
日 |
朝 | ◯ | ||||||
夕(12時間後) | ◯ |
例)3回にわけて飲む場合(土曜の夕から飲み始めた場合)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
日 |
|
朝(12時間後) | ◯ | ||||||
夕(12時間後) | ◯ | ◯ |
関節症状をともなう若年性特発性関節炎
通常は1週間単位の投与量を4~10mg/m2とし、1回または2~3回に分割して経口投与します。数回にわけて飲む場合、12時間間隔で投与します。
休薬期間が必要あり、1回または2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬します。この飲み方を1週間ごとに繰り返します。
年齢、症状、忍容性及び薬に対する反応などをみて適宜増減します。
抗がん剤としての使い方
白血病 |
絨毛性疾患 |
乳癌 | 尿路上皮癌 | 肉腫 | 悪性リンパ腫 | 胃癌 | |
メソトレキセート錠2.5mg | ◯ | ◯ | |||||
注射用メソトレキセート5mg | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |||
注射用メソトレキセート50mg | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
メソトレキセート点滴静注液200mg | ◯ | ◯ | ◯ |
白血病
メトトレキサートとして、通常、次の量を1日量として1週間に3~6日経口投与します。
幼児 1.25~2.5mg(1/2~1錠)
小児 2.5~5mg (1~2錠)
成人 5~10mg (2~4錠)
絨毛性疾患
1クールを5日間とし、メトトレキサートとして、通常、成人1日10~30mg(4~12錠)を経口投与します。休薬期間は、通常、7~12日間です。
前回の投与によって副作用があらわれた場合は、副作用が消失するまで休薬します。いずれの場合でも年齢、症状により適宜増減します。
メトトレキサート・ロイコボリン救援療法
適応は肉腫(骨肉腫、軟部肉腫等)、急性白血病の中枢神経系及び睾丸への浸潤に対する寛解、悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤に対する寛解です。
ある種の癌細胞では十分にメトトレキサートを取り込めないため、大量のメトトレキサートを入れることによりしっかりと取り込ませます。その後にメトトレキサートの解毒剤であるロイコボリンを入れて、ロイコボリンをしっかり取り込むことのできる正常な細胞を救い出します。
メトトレキサートの副作用
関節炎として使った場合
メトトレキサートの量が増えると骨髄抑制、感染症、肝機能障害等の副作用の発現の可能性が増加するので注意しましょう。
主な副作用は肝機能障害、口内炎、だるさ、吐き気、発疹です。
また、重大な副作用として下記の症状が現れる可能性があります。
・ショック、アナフィラキシー
・骨髄抑制
・感染症
・結核
・劇症肝炎、肝不全
・急性腎不全、尿細管壊死、重症ネフロパチー
・間質性肺炎、肺線維症、胸水
・中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
・出血性腸炎、壊死性腸炎
・膵炎
・骨粗鬆症
・脳症(白質脳症を含む)
抗がん剤として使った場合
抗がん剤として使用した場合はメトトレキサートが細胞が増えるのを抑えるため、免疫が弱くなり感染症にかかりやすくなるためしっかり感染予防しましょう。
主な副作用は食欲がなくなる、吐き気・嘔吐、肝機能障害などです。
そのほか、メトトレキサート・ロイコボリン救援療法において頻度の高い副作用として、脱毛、出血、発熱、発疹、口内炎、下痢、腹痛、頭痛などがあります。
また、重大な副作用として下記の症状が現れる可能性があります。
・ショック、アナフィラキシー
・骨髄抑制
・感染症
・劇症肝炎、肝不全
・急性腎不全、尿細管壊死、重症ネフロパチー
・間質性肺炎、肺線維症、胸水
・中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
・出血性腸炎(5%未満)、壊死性腸炎(頻度不明)
・ 膵炎
・骨粗鬆症
・脳症(白質脳症を含む)、その他の中枢神経障害、ギランバレー症候群
葉酸を併用して副作用を予防・治療
メトトレキサートは葉酸の働きを邪魔することで効果を現すので、 副作用の中には葉酸の働きが邪魔された影響で生じるものがあります。
副作用の予防で葉酸(フォリアミン)を併用することがあります。しかし、メトトレキサートと同時に飲むことはできません。通常はメトトレキサートを最後に服用した翌日か翌々日に葉酸を服用します。
葉酸は副作用を治療する目的でも使用することがあります。軽い副作用は葉酸を併用しながらメトトレキサートの継続が可能ですが、重い副作用が起きたときはメトトレキサートを中止して活性型の葉酸(ロイコボリン)を治療のために使用します。
メトトレキサートとの飲み合わせ
飲み合わせに注意が必要なものとして以下のようなものがあります。
・サリチル酸等の非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)
・スルホンアミド系薬剤、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、フェニトイン、バルビツール酸誘導体
・スルファメトキサゾール・トリメトプリム
・ペニシリン(ピペラシリンナトリウム等)、プロベネシド
・シプロフロキサシン
・レフルノミド
・プロトンポンプ阻害剤
・ポルフィマーナトリウム
メトトレキサートの血中濃度
メトトレキサートが最もとりこまれた状態は薬を飲んでから1~2時間(Tmax)後となります。
関節炎として使う場合
1週間あたり6mg(1回2mg、12時間間隔で3回投与)経口投与時の最高血中濃度(Cmax)(単位:10-6mol/L)
第1週目のCmax | 最終週のCmax | |
初回 | 0.215 | 0.252 |
3回目投与時 | 0.223 | 0.357 |
第1週目と最終週の投与後の血清中濃度を比較した結果から、メトトレキサートの蓄積性はほとんどないと考えられています。
1週間あたり6mg(1回2mg、12時間間隔で3回投与)経口投与時の半減期(t1/2)
第1週目の半減期(t1/2) | 最終週の半減期(t1/2) | |
初回 | 2.4時間 | 2.3時間 |
3回目投与時 | 3.2時間 | 2.2時間 |
抗がん剤として使う場合
メトトレキサートの2.25mg、4.50mg、9.00mg、31.5mgを経口投与したときの血中濃度(単位:10-6mol/L)と尿中排泄率
血中濃度(単位:10-6mol/L) | 尿中排泄率 | |
1時間後 | 0.53~2.4(Cmax) | 43% |
6時間後 |
ー |
88% |
24時間後 | ー | ほぼ100% |
メトトレキサートの5、10、25、50mgを単回静脈内投与したときの血中濃度と尿中排泄率
血中濃度(単位:10-6mol/L) | 尿中排泄率 | |
投与1~2時間後 | 最高(Tmax) | ー |
4時間後 | ー | 65% |
24時間後 | 0.055以下 | 90% |
各投与量における小児の急性白血病及び悪性リンパ腫等の患者に対してメトトレキサート・ロイコボリン救援療法の血中濃度(単位:10-6mol/L)
25~100mg/kg (血清) | 25~50mg/kg(髄液) | 75~100mg/kg(髄液) | |
6 時間後 | 147~254 | 0.815 | 2.73 |
24時間後 | 1.24~8.60 | 0.459 | 0.547 |
48時間後 | 0.1 | ー | ー |
72時間後 | ー | 0.1以下 | 0.1以下 |
各投与量における小児悪性腫瘍患者24例にメトトレキサート・ロイコボリン救援療法の血中濃度(単位:10-6mol/L)
750~1500mg/m2 | 2250~3000mg/m2 | 9000mg/m2 | |
24時間後 | 1.47 | 1.37 | 1.52 |
48時間後 | 0.192 | 0.195 | 0.154 |
72時間後 | 0.126 | 0.108 | 0.097 |
中毒症状を発現する血中濃度 メトトレキサートの血中濃度の危険限界
血中濃度(単位:10-6mol/L) | |
24時間 | 10 |
48時間 | 1 |
72時間 | 0.1 |
危険限界以上の濃度の際は十分な水分の補給、尿のアルカリ化及びロイコボリンの増量投与・ロイコボリン救援投与の延長等の処置を行うようにとされています。
メトトレキサートのジェネリック
メトトレキサートのジェネリックは関節リウマチ、関節症状を伴う若年性特発性関節炎に適応のあるものだけです。抗がん剤として使用するものにジェネリックはありません。(2017年7月現在)
主なジェネリックとしてメトトレキサートカプセル2mg「サワイ」、主なジェネリックとしてメトトレキサートカプセル2mg「サンド」などがあります。
おわりに
メトトレキサートは関節炎やがんに使用される薬です。
非常に特徴的な飲み方なので、初めて飲む方は間違えやすいといわれています。特に関節炎に使用している方がメトトレキサートを毎日飲むと非常に危険です。関節炎に使用しているつもりが、抗がん剤として作用してしまうことに繋がります。医師や薬剤師の指示する用法用量を正しく守って飲み方には十分に注意しましょう。
出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページ
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