メトトレキサートとは
メトトレキサートは関節リウマチや抗がん剤として使用する成分の名前です。用法・用量によって関節リウマチの薬だったり抗がん剤だったりに変化します。
関節リウマチに使用する商品名にはリウマトレックス、抗がん剤に使用する商品名にはメソトレキセートなどがあります。
メトトレキサートの作用機序
メトトレキサートには免疫抑制作用があります。
関節リウマチへの作用機序
以下の作用によって関節リウマチ等の活動性を低下させる。
・抗体産生
・リンパ球増殖
・血管新生
・滑膜増生
・炎症部位への好中球遊走
・インターロイキン-1産生
・コラゲナーゼ産生を抑制
抗がん剤としての作用機序
葉酸を核酸合成に必要な活性型葉酸に還元させるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の働きをおさえ、チミジル酸合成及びプリン合成系を阻害して細胞増殖をおさえます。
関節炎治療薬としての使い方
関節炎治療薬としてのリウマトレックスカプセル2mgの使用方法をご紹介します。
関節リウマチへの使い方
通常は1週間単位の投与量を6mgとし、1週間単位の投与量を1回または2~3回にわけて使用します。数回に分けて飲む場合、初日から2日目にかけて12時間間隔で使用します。
なお、症状や年齢に合わせて調整しますが、1週間単位の投与量として16mgを超えないようにします。
休薬期間が必要であり、1回または2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬します。この飲み方を1週間ごとに繰り返します。
例)2回に分けて飲む場合(火曜の朝から飲み始めた場合)
|
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
日 |
朝 | ◯ | ||||||
夕(12時間後) | ◯ |
例)3回にわけて飲む場合(土曜の夕から飲み始めた場合)
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
日 |
|
朝(12時間後) | ◯ | ||||||
夕(12時間後) | ◯ | ◯ |
関節症状をともなう若年性特発性関節炎
通常は1週間単位の投与量を4~10mg/m2とし、1回または2~3回に分割して経口投与します。数回にわけて飲む場合、12時間間隔で投与します。
休薬期間が必要あり、1回または2回分割投与の場合は残りの6日間、3回分割投与の場合は残りの5日間は休薬します。この飲み方を1週間ごとに繰り返します。
年齢、症状、忍容性及び薬に対する反応などをみて適宜増減します。
抗がん剤としての使い方
白血病 |
絨毛性疾患 |
乳癌 | 尿路上皮癌 | 肉腫 | 悪性リンパ腫 | 胃癌 | |
メソトレキセート錠2.5mg | ◯ | ◯ | |||||
注射用メソトレキセート5mg | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | |||
注射用メソトレキセート50mg | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
メソトレキセート点滴静注液200mg/100mg | ◯ | ◯ | ◯ |
白血病
メトトレキサートとして、通常、次の量を1日量として1週間に3~6日経口投与します。
幼児 1.25~2.5mg
小児 2.5~5mg
成人 5~10mg
絨毛性疾患
1クールを5日間とし、メトトレキサートとして、通常、成人1日10~30mgを経口投与します。休薬期間は、通常、7~12日間です。ただし、前回の投与によって副作用があらわれた場合は、副作用が消失するまで休薬します。いずれの場合でも年齢、症状により適宜増減します。
メトトレキサート・ロイコボリン救援療法
適応は肉腫(骨肉腫、軟部肉腫等)、急性白血病の中枢神経系及び睾丸への浸潤に対する寛解、悪性リンパ腫の中枢神経系への浸潤に対する寛解です。
メトトレキサートは、葉酸を核酸合成に必要な活性型葉酸に還元させる酵素dihydrofolate reductase(DHFR)の働きを阻止して細胞増殖を抑制します。
骨肉腫細胞などある種の癌細胞において、通常量では十分にメトトレキサートを取り込めないため、大量のメトトレキサートを投与することで癌細胞にしっかりと取り込ませます。このままでは、正常で健康な細胞にも影響を与えるため、副作用 (骨髄抑制、粘膜障害、肝障害など) を回避するために、メトトレキサートが体内から排泄されるまで、解毒剤(葉酸製剤)であるロイコボリンを定期的に投与します。これがメトトレキサート・ロイコボリン救援療法です。
メトトレキサートの副作用
関節炎として使った場合
メトトレキサートの使用で骨髄抑制、感染症、肝機能障害等の副作用の発現の可能性があるため体調の経過に注意しましょう。
主な副作用は肝機能障害、口内炎、だるさ、吐き気などです。
また、まれなことではありますが、重大な副作用として下記の症状が現れる可能性があります。
・ショック、アナフィラキシー
・骨髄抑制
・感染症
・結核
・劇症肝炎、肝不全
・急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー
・間質性肺炎、肺線維症、胸水
・中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
・出血性腸炎、壊死性腸炎
・膵炎
・骨粗鬆症
・脳症(白質脳症を含む)
・進行性多巣性白質脳症(PML)
抗がん剤として使った場合
メトトレキサートの使用で骨髄抑制、感染症、肝機能障害等、粘膜・消化管障害等の細胞毒性に起因する副作用発現の可能性があるため体調の経過に注意しましょう。
食欲不振、吐き気・嘔吐、肝機能障害などが現れる可能性があります。
また、まれなことではありますが重大な副作用として下記の症状が現れる可能性があります。
・ショック、アナフィラキシー
・骨髄抑制
・感染症
・劇症肝炎、肝不全
・急性腎障害、尿細管壊死、重症ネフロパチー
・間質性肺炎、肺線維症、胸水
・中毒性表皮壊死融解症(TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)
・出血性腸炎、壊死性腸炎
・膵炎
・骨粗鬆症
・脳症(白質脳症を含む)
・進行性多巣性白質脳症(PML)
葉酸を併用して副作用を予防・治療
メトトレキサートは葉酸の働きを邪魔することで効果を現すので、 副作用の中には葉酸の働きが邪魔された影響で生じるものがあります。
メトトレキサートを関節炎の治療で用いる場合、副作用予防で葉酸(フォリアミン)を併用することがあります。しかし、メトトレキサートと同時に飲むことはできません。通常はメトトレキサートを最後に服用した翌日か翌々日に葉酸を服用します。
軽い副作用は葉酸を併用しながらメトトレキサートの継続が可能ですが、重い副作用が起きたときはメトトレキサートを中止して活性型の葉酸(ロイコボリン)を治療のために使用します。
メトトレキサートとの飲み合わせ
飲み合わせに注意が必要なものとして以下のようなものがあります。
・サリチル酸等の非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)
・スルホンアミド系薬剤、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、フェニトイン、バルビツール酸誘導体
・スルファメトキサゾール・トリメトプリム
・ペニシリン(ピペラシリンナトリウム等)、プロベネシド
・シプロフロキサシン
・レフルノミド
・プロトンポンプ阻害剤
・ポルフィマーナトリウム など
リウマトレックスカプセル2mg添付文書 メソトレキセート錠2.5mg添付文書
メトトレキサートの血中濃度
メトトレキサートが最もとりこまれた状態は薬を飲んでから1~2時間(Tmax)後となります。
関節炎として使う場合
■1週間あたり6mg(1回2mg、12時間間隔で3回投与)の経口投与を12週間繰り返したときの最高血中濃度(Cmax)(単位:10-6mol/L)
第1週目のCmax | 最終週のCmax | |
初回 | 0.215 | 0.252 |
3回目投与時 | 0.223 | 0.357 |
第1週目と最終週の投与後の血清中濃度を比較した結果から、メトトレキサートの蓄積性はほとんどないと考えられています。
■1週間あたり6mg(1回2mg、12時間間隔で3回投与)の経口投与を12週間繰り返したときの半減期(t1/2)
第1週目の半減期(t1/2) | 最終週の半減期(t1/2) | |
初回 | 2.4時間 | 2.3時間 |
3回目投与時 | 3.2時間 | 2.2時間 |
抗がん剤として使う場合
メトトレキサートの2.25mg、4.50mg、9.00mg、31.5mgを経口投与したときの血中濃度(単位:10-6mol/L)と尿中排泄率
血中濃度(単位:10-6mol/L) | 尿中排泄率 | |
1時間後 | 0.53~2.4(Cmax) | 43% |
6時間後 |
ー |
88% |
24時間後 | ー | ほぼ100% |
メトトレキサートのジェネリック
メトトレキサートのジェネリック医薬品は関節リウマチ、関節症状を伴う若年性特発性関節炎に適応のあるものだけです。抗がん剤として使用するものにジェネリック医薬品はありません。(2023年2月現在)
ジェネリック医薬品にはメトトレキサートカプセル2mg「サワイ」、メトトレキサートカプセル2mg「トーワ」などがあります。
おわりに
メトトレキサートは関節炎やがんの治療に使用される薬です。
特徴的な飲み方のため、初めて飲む方は注意が必要です。医師の指示する用法用量を正しく守って服用しましょう。
出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構のホームページ