リドカインは局所麻酔剤
リドカインとは局部麻酔などに使われる成分で、正式名称はリドカイン塩酸塩です。
医療用医薬品ではキシロカインという名称で先発医薬品が販売されています。
ジェネリック医薬品では成分名であるリドカインがそのまま薬剤名として使われています。
医療現場では主にゼリーや注射剤、スプレー、またはテープなどいろいろな形で使用されています。検査の時や歯科領域での局所麻酔や痛み止めのほか、不整脈の薬など使い方も広範囲にわたっています。
市販薬では主に痛みやかゆみをおさえる成分として、軟膏・クリーム・坐薬など外用薬に配合されています。
リドカインの作用
リドカインは、神経にはたらきかけて痛みを伝える神経の伝達を止めることにより痛みをなくします。
また、痛みの伝達神経だけではなく運動神経も遮断されるため、リドカインが作用した部位は動かしにくくなります。外用薬としては比較的速効性のある薬で、剤形によって作用時間は違いますが、医療用医薬品のキシロカインゼリー2%であれば以下のようなデータがあります。
作用発現時間・持続時間
作用発現時間:5~10mL(膀胱鏡検査時、尿道麻酔)2 分
作用持続時間:約 30 分キシロカインゼリー2% インタビューフォーム
リドカインを配合した市販薬3選
2023年8月現在では、リドカインのみを有効成分とした市販薬は販売されていません。
市販薬では痛みやかゆみに対する複数の有効成分のひとつとしてリドカインが含まれているものが販売されています。薬によって用法・用量や使用上の注意が異なるので、添付文書をよく読み使用してください。
■フェミニーナ軟膏S
フェミニーナ軟膏S 15g【第二類医薬品】
成分 | 100g中の成分量 | 働き |
リドカイン | 2.0g | かゆみをしずめます |
ジフェンヒドラミン塩酸塩 | 2.0g | かゆみの発生をおさえます |
イソプロピルメチルフェノール | 0.1g | 殺菌成分、雑菌の繁殖をおさえます |
トコフェロール酢酸エステル | 0.3g | 血行を促進して肌の新陳代謝を高めます |
局所麻酔成分であるリドカインが、2.0%配合された市販薬です。かゆみに対して速効性があり、軟膏と書かれていますがクリームタイプなので、ベタつきが少なく水で洗いやすいのが特徴です。
低刺激で清涼成分が含まれておらず、陰部周囲などのデリケートゾーンのかぶれやあせもにも使えます。
【フェミニーナ軟膏Sの効能・効果】
かゆみ、かぶれ、湿疹、虫さされ、皮ふ炎、じんましん、あせも、ただれ、しもやけ
【フェミニーナ軟膏Sの使い方】
1日数回、患部に適量を塗ってください。
フェミニーナ軟膏Sを5〜6日間使用しても症状がよくならない場合は医師の診療を受けてください。
【フェミニーナ軟膏Sの注意点】
・目や目の周囲、粘膜には使用できません
外陰部には使用できますが、腟内や唇、口の中など粘膜への使用はできません。もし目に入った場合には、すぐに水またはぬるま湯で洗ってください。症状が重い場合には、眼科医の診療を受けてください。
・カンジダ症の方は使えません
フェミニーナ軟膏Sはカンジダ症の治療薬ではありません。カンジダ症やトリコモナス症では外陰部のかゆみのほか、おりものの異常がともなうことが多いです。おりものの異常やフェミニーナ軟膏Sを5〜6日間使用しても症状がよくならない場合は医師の診療を受けてください。
・小児や乳幼児への使用
15歳未満の小児に使用させる場合には、保護者の指導監督のもとに使用させてください。7歳未満の乳幼児に使用したい場合は使用前に医師や薬剤師または登録販売者に相談してください。
【フェミニーナ軟膏Sの副作用】
薬が体質に合わず副作用を起こす方がいます。フェミニーナ軟膏Sの副作用には発疹・発赤、かゆみ、はれがあります。皮ふにこのような症状があらわれた場合は使用を中止して、医師や薬剤師に相談してください。
■ボラギノールA軟膏
ボラギノールA軟膏 20g【指定第二類医薬品】
成分 | 1g中の成分量 | 働き |
リドカイン | 30mg | 局所の痛み、かゆみをしずめます |
プレドニゾロン酢酸エステル | 0.5mg | 炎症をおさえ、出血、はれ、かゆみをしずめます |
アラントイン | 10mg | 傷の治りを助け、組織を修復します |
トコフェロール酢酸エステル | 25mg | 末梢の血流を良くし、うっ血の改善を助けます |
ボラギノールA軟膏はリドカインが痔の痛みをおさえ、ステロイドであるプレドニゾロン酢酸エステルの抗炎症作用によって痔の症状を和らげます。
痔が肛門より内部にできている場合は「ボラギノールA注入軟膏」や「ボラギノールA坐剤」を使いましょう。「ボラギノールA軟膏」「ボラギノールA注入軟膏」「ボラギノールA坐剤」はそれぞれ使用できる部位や回数などが違うため、箱の説明や説明書をよく読んで使ってください。なお、15歳未満の方は使うことができません。
【ボラギノールA軟膏の効能】
いぼ痔・きれ痔(さけ痔)の痛み・出血・はれ・かゆみの緩和
【ボラギノールA軟膏の使い方】
ボラギノールA軟膏は肛門にできた痔にきれいにした指で直接塗るか、またはガーゼなどに伸ばして適量を塗ってください。1日1〜3回までの範囲で使用してください。
【ボラギノールA軟膏の注意点】
・15未満の方は使用できません
・ボラギノールA軟膏またはボラギノールA軟膏の成分にアレルギー反応を起こしたことのある方は使用できません
・患部が化膿している場合は使用できません
患部が化膿している場合は病院を受診してください。
・肛門部のみに使用してください
肛門部以外には使用しないでください。痔が肛門より内部にできている場合は「ボラギノールA注入軟膏」や「ボラギノールA坐剤」を使ってください。
・長期連用はしないでください
10日間ぐらい使用しても症状が良くならない場合は使用を中止し、医師や薬剤師または登録販売者に相談してください。
【ボラギノールA軟膏の副作用】
薬が体質に合わず副作用を起こす方がいます。ボラギノールA軟膏の副作用には発疹・発赤、かゆみ、はれ、刺激感、化膿があります。このような症状があらわれた場合は使用を中止して、医師や薬剤師に相談してください。
■メンソレータムADクリームm
メンソレータムADクリームm 50g
成分 | 1g中の成分量 | 働き |
リドカイン | 20mg | かゆみをおさえます |
クロタミトン | 50mg | 温感神経にはたらき、かゆみを軽減します |
ジフェンヒドラミン | 10mg | かゆみの原因であるヒスタミンの作用をおさえます |
トコフェロール酢酸エステル | 5mg | 血行を促進し、傷の修復を助けます |
グリチルレチン酸 | 2mg | 炎症をしずめます |
メンソレータムADクリームmはリドカインをはじめ、複数のかゆみ止め成分が入っている鎮痒消炎薬です。お風呂や布団に入って体が温まった時や、下着がこすれてでるかゆみに使われます。
【メンソレータムADクリームmの効能・効果】
かゆみ、皮ふ炎、かぶれ、じんましん、虫さされ、しっしん、ただれ、あせも、しもやけ
【メンソレータムADクリームmの使い方】
1日数回、適量を患部に塗ってください。
【メンソレータムADクリームmの注意点】
・傷口には使用できません
・目や目の周囲、唇や口の中などの粘膜には使用できません
目に入らないように注意してください。もし目に入った場合は、すぐに水またはぬるま湯で洗ってください。症状が重い場合には眼科医の診療を受けてください。
・15歳未満の小児に使用させる場合には、保護者の指導監督のもとに使用させてください
・5~6日間使用しても症状がよくならない場合は使用を中止し、説明書を持って医師や薬剤師または登録販売者に相談してください
【メンソレータムADクリームmの副作用】
薬が体質に合わず副作用を起こす方がいます。メンソレータムADクリームmの副作用には発疹・発赤、かゆみ、はれ、かぶれ、乾燥感、刺激感、熱感、ヒリヒリ感があります。このような症状が皮ふにあらわれた場合は使用を中止して、医師や薬剤師に相談してください。
リドカインの処方薬
リドカインの代表的な処方薬をいくつか紹介します。
局所麻酔に処方されるのが通常ですが、下記で説明する症状以外にも適用外としてさまざまな症状に使われるケースが見られます。処方された場合は医師の指示を守って使用してください。
ペンレステープ18mg
ペンレステープは、主に針を刺したままにしておく場合の点滴や水いぼ治療、皮膚レーザー治療の場合などに痛みを緩和するために使用する場合が多く見られます。
薄く透明なシート状で、約1時間ほどで効果があらわれます。
キシロカインゼリー2%
キシロカインゼリー2%は無色~薄い黄透明色のゼリー状の塗り薬で、膀胱鏡検査時や尿道麻酔、気管内への挿管時などに使用されます。5~10mLを膀胱鏡検査時、尿道麻酔に使用した例では2分で効果があらわれ、その後約30分作用が持続するというデータがあります。
ネリプロクト軟膏
ネリプロクト軟膏は1g中にジフルコルトロン吉草酸エステルを0.1mgとリドカインを20mg含み、痔の治療に使われる薬です。白色~黄白色のクリーム状でリドカインが痛みをおさえ、ステロイドであるジフルコルトロン吉草酸エステルによる抗炎症作用により痔の症状を和らげます。
おわりに
リドカインは市販にも使われる局所麻酔成分です。外用薬としては比較的速効性があり、痛みやかゆみをおさえる成分として使われています。かゆみや痛みは日頃からのストレスになりやすいものです。リドカインが成分として入っている医薬品を上手に利用して、かゆみや痛みによる日々のストレスを軽減しましょう。
出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構ホームページ