腹痛の種類と原因
腹痛の原因は様々あり、お腹の中にある胃腸や肝臓などの内臓疾患以外でも、心臓、肺、腎臓、卵巣・子宮などの臓器の病気でも起こることがあります。
腹痛は、体の不調に気づくための重要なサインです。万が一腹痛の症状が以下に当てはまる場合や腹痛の他に気になる症状がある場合は、なるべく早く内科か消化器内科を受診してください。
- 立っていられないほどの痛み
- 吐き気・嘔吐がある
- 痛みがどんどん強くなってくる
- 痛みが長く続いている
- 次のいずれにも当てはまらず、原因が分からない場合 など
考えられる原因 | 特徴 |
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胃痛 | 食べ過ぎ、睡眠不足、ストレスなど生活習慣が原因となり胃に痛みを感じる |
便秘 | 便に含まれる水分が不足して硬くなったり、腸内で発生する有害ガスがお腹に溜まることで腹痛が起こる |
下痢 | 暴飲暴食・冷え・ストレスなどによって腸の動きが過敏になり腹痛が起こる |
生理痛 | 生理中に下腹部に痛みを感じる |
胃痛
胃粘膜は、食べ物を消化する役割である胃酸などから胃を守る役割をしています。
胃酸が過剰に分泌されると胃を攻撃する力が強まり、胃粘膜が傷つくことで、胃に痛みを感じます。また、胃粘液分泌が減ることで胃酸の刺激に耐えられず、胃に痛みを感じます。
胃の粘膜が傷つけられることで、胃痛以外に胃もたれ・胸やけ・げっぷなどの症状が現れることもあります。
主な原因 |
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暴飲暴食、アルコール、たばこ、香辛料、ストレス、ステロイドや鎮痛剤の日常的な服用など |
便秘による腹痛
便秘になると便に含まれる水分が不足して硬くなったり、腸内で発生する有害ガスがお腹に溜まったりすることで、腹痛が起こることがあります。腹痛以外に、お腹の張り・食欲不振・吐き気・肌荒れなどの症状が現れることもあります。
また、便秘には4つの種類があります。一般的に便秘と呼ばれるものは、機能性便秘を指していることが多いです。その他の種類の便秘は、病気や服用している薬が原因となり、市販薬では対応できないため、何か気になることがある場合は一度医師にご相談いただくことをおすすめします。
特徴 | |
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①機能性便秘 | 生活習慣やストレス、 加齢などによって腸の働きが乱れて起こる |
②器質性便秘 | 腸に腫瘍や炎症、閉そくなどがあることで起こる |
③症候性便秘 | 全身疾患に伴うホルモン分泌異常や神経系の異常により腸管のぜん動運動が弱くなって起こる |
④薬剤性便秘 | 抗うつ薬、抗コリン薬など薬による副作用で起こる |
下痢による腹痛
便を出そうとする腸の動きにより腹痛が起こります。
便を肛門まで送り出す、ぜん動運動が過剰になると、便の水分が腸に吸収されずに下痢となって排便されます。また、腸が便から十分に水分を吸収できていない場合も下痢を起こします。
主な原因 |
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暴飲暴食、冷え、ストレス、食中毒、ウイルス感染など |
生理痛
女性は、生理中に経血を押し出そうとする子宮の収縮により下腹部が痛むことがあります。
主な原因 |
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子宮の収縮が過剰になる、子宮の出口が狭い、血行不良、ストレスなど |
腹痛に使える市販薬の選び方
腹痛を市販薬で対処する場合は、腹痛の原因や種類によって薬を使い分ける必要があります。腹痛の原因別に市販薬を紹介します。
腹痛に使える市販薬(胃腸薬)|胃痛の場合
ストレスや不規則な生活習慣によって自律神経が乱れると、胃の防御機能が弱まり、胃痛や胃もたれを引き起こします。
ストレスや生活習慣が原因の胃痛・胃もたれの場合、症状の出方が大きく3つに分けられます。
●空腹時に胃がキリキリ痛む
空腹時に胃がキリキリ・シクシク痛む場合は、胃酸が過剰に分泌されて、胃の粘膜が攻撃されている可能性が高いです。この場合は過剰な胃酸の分泌をおさえる薬や、胃の粘膜を保護する薬を使用します。
ガスター10 S錠|空腹時のキリキリとした胃痛に
ガスター10 S錠 12錠【第一類医薬品】
過剰に分泌された胃酸をコントロールして、胃痛、胃もたれに効果を発揮します。
ファモチジンが過剰な胃酸分泌を抑制し、つらい胃痛をやわらげます。15歳から服用できます。
■有効成分
ファモチジン(H2ブロッカー薬) |
■用法用量
胃痛、もたれ、胸やけ、むかつきの症状があらわれた時、以下の量を、口中で溶かして服用するか、水またはお湯で服用してください。
・成人(15歳以上、80歳未満):1錠/回、2回/日 ・小児(15歳未満):服用しないでください ・高齢者(80歳以上):服用しないでください |
●食後の胃の痛み・胃もたれ
食後の胃の痛みや胃もたれのほとんどは、消化不良が原因となります。この場合は胃の消化を助ける消化酵素が配合されている胃薬で消化を促したり、出過ぎた胃酸を中和する薬(制酸薬)を使用します。
第一三共胃腸薬細粒s|食後の胃の痛み・胃もたれに
第一三共胃腸薬細粒s 12包【第二類医薬品】
消化酵素であるタカヂアスターゼN1とリパーゼAP12が消化を促進し、3種の制酸剤が過剰な胃酸を中和します。
生薬が弱った胃の働きを高めて胃の不快感・食欲不振などに効きめをあらわすほか、胃粘膜のあれ・ただれを修復します。
■有効成分
タカヂアスターゼN1、リパーゼAP12、アカメガシワエキス、カンゾウ末、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、水酸化マグネシウム、オウバク末、ケイヒ末、ウイキョウ末、チョウジ末、ショウキョウ末、l-メントール |
■用法用量
以下の量を食後に、水またはお湯で服用してください。
・15歳以上:1包/回:3回/日 ・11歳以上15歳未満:2/3包/回:3回/日 ・8歳以上11歳未満:1/2包/回:3回/日 ・5歳以上8歳未満:1/3包/回:3回/日 ・3歳以上5歳未満:1/4包/回:3回/日 ・3歳未満:服用しないでください |
●キューッとさしこむような胃の痛み
さしこむような胃の痛みは、胃がけいれんしていることが原因で引き起こされます。胃けいれんはストレスや緊張によって起こることが多いです。この場合は胃のけいれんをおさえる抗コリン薬を使用します。
ブスコパンA錠|キューッとさしこむような胃の痛み
ブスコパンA 20錠(第2類医薬品)【第二類医薬品】
胃の痛み・けいれんをやわらげるブチルスコポラミンを配合した市販薬です。胃腸の異常な緊張を和らげ、胃痛・腹痛・さしこみなどの痛みに効果をあらわします。
■有効成分
ブチルスコポラミン臭化物 |
■用法用量
以下の量を、水またはぬるま湯で服用してください。服用間隔は4時間以上おいてください。
・成人(15歳以上):1錠/回、3回まで/日 ・15歳未満:服用しないでください |
その他の胃がキリキリ痛むときに使える薬や、食後に胃の痛み・胃もたれを感じる方、キューッとさしこむような胃の痛みがある方に適した市販薬は、こちらの記事で詳しく解説しています。
腹痛に使える市販薬|便秘の場合
日本内科学会では3日以上排便がない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態を便秘と定義しています。実際に便が出ていない状態以外に、出ていたとしても腸に便が残っていると感じる場合は便秘となります。便秘は慢性化しやすいため、生活習慣を改善したり薬で早急に治療をすることが重要です。
便秘の市販薬は内服薬や浣腸、坐剤と多岐にわたり、軽度の便秘であれば、市販薬で対処できます。便秘の症状や服用する方の年齢等によって適した薬が変わるため、薬の特徴を理解し、ご自身の症状に合った便秘薬を選択しましょう。
メタスルー
メタスルー 360錠【第三類医薬品】
酸化マグネシウムが配合された非刺激性の便秘薬です。腸を直接刺激しないため、腹痛や腹部の不快感が起こりにくく、連続服用してもクセになりにくいという特徴があります。
酸化マグネシウムには、固くなった便に水分を集めることで、便を柔らかくし自然なお通じを促す働きがあります。便秘や便秘にともなう頭重、腹部膨満感、肌荒れなどに効果をあらわします。
メタスルーは、続けやすいリーズナブルな価格です。便秘薬と気づかれにくいパッケージも特徴の一つです。
■有効成分
酸化マグネシウム |
■用法用量
以下の量を、コップ1杯の水またはぬるま湯で服用してください。
・大人(15歳以上):3〜6錠/回、1回/日(就寝前) ・11歳〜14歳:2〜4錠/回、1回/日(就寝前) ・7歳〜10歳:2〜3錠/回、1回/日(就寝前) ・5歳〜6歳:1〜2錠/回、1回/日(就寝前) ・乳幼児(5歳未満):服用しないこと |
*初回は最小量を用い、便通の具合や状態をみながら少しずつ増量または、減量してください
コーラックⅡ
コーラック 80錠(第2類医薬品)【第二類医薬品】
大腸に直接作用するビサコジルを配合し、錠剤がコーティングされているため胃で溶けずに腸でしっかり効果を発揮します。
また、DSSによって硬くなった便に水分が浸透し、排便しやすくなります。
■有効成分
ビサコジル、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS) |
■用法用量
以下の量を、水またはぬるま湯で服用してください。
・15歳以上:1〜3錠/回、1回/日(就寝前または空腹時) ・11〜14歳:1〜2錠/回、1回/日(就寝前または空腹時) ・11歳未満:服用しないでください |
*初回は最小量を用い、便通の具合や状態をみながら少しずつ増量または、減量してください
■その他の便秘に効く市販薬
その他の便秘に効く市販薬については、こちらをご覧ください。
腹痛に使える市販薬(胃腸薬)|下痢の場合
下痢は症状によって適切な市販薬の選び方が異なります。
暴飲暴食・冷えなどによる下痢に使える市販薬を紹介します。
ピタリット
ピタリット 12錠【指定第二類医薬品】
有効成分としてロペラミド塩酸塩、ベルベリン塩化物水和物、消化酵素ビオヂアスターゼ2000を配合した下痢止めの薬です。15歳から使用できます。
ロペラミド塩酸塩が腸に直接作用し、活発になりすぎた腸のぜん動運動をしずめ、腸内の水分量を調節します。
■有効成分
ロペラミド塩酸塩、ベルベリン塩化物水和物、ビオヂアスターゼ2000、チアミン硝化物(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2) |
■用法用量
以下の量を水またはぬるま湯で服用してください。
・成人(15歳以上):2錠/回、2回/日 ・15歳未満:服用しないでください |
*下痢が止まれば服用しないでください
*服用間隔は4時間以上おいてください
ビオフェルミン下痢止め
ビオフェルミン下痢止め 30錠(第2類医薬品)【第二類医薬品】
5種類の有効成分が配合されています。鎮痛作用のあるシャクヤクエキスが腹痛に効果を発揮するため、お腹の痛みを伴った下痢に使用しやすい商品です。
11歳から使用できます。
■有効成分
タンニン酸ベルベリン、ゲンノショウコ乾燥エキス、ロートエキス、シャクヤクエキス、ビフィズス菌 |
■用法用量
以下の量を、食後に水またはお湯で服用してください。
・15歳以上:3錠/回、3回/日 ・11歳〜14歳:2錠/回、3回/日 ・11歳未満:服用しないでください |
この他にも、食あたりや細菌感染などによる下痢、微熱をともなう下痢、腸の環境を整えたいなどといった場合に使える市販薬については、次の記事をご参考にしてください。
ウイルス性胃腸炎に使用できる市販薬はある?
ウイルス性胃腸炎は、胃腸にウイルスや細菌が感染した状態をさします。腹痛や嘔吐、下痢などの症状が起こります。
感染自体を治す薬はなく、症状をおさえる薬が使用されることがあります。ただし、下痢止めなどを使用するとウイルスの排出をおさえてしまい、かえって症状を長引かせてしまうこともあるため、基本的には市販薬を自己判断で使用することはおすすめしません
下痢や嘔吐の症状がひどい場合には脱水状態になりやすく、特に乳幼児や高齢者では重症化することもあるため、症状が強い場合は早めに医療機関に受診しましょう。
腹痛に使える市販薬|生理痛の場合
生理痛の原因は、生理によって子宮内膜が剥がれ、経血が排出される際に生成される、プロスタグランジンという物質です。この物質が子宮の筋肉を収縮させることで、痛みを感じます。
ロキソニンS
ロキソニンS 12錠【第一類医薬品】
ロキソニンSは、有効成分がロキソプロフェンナトリウム水和物だけのシンプルな薬です。
月経痛(生理痛)や頭痛などの痛みや、悪寒・発熱時の解熱に効果をあらわします。
■有効成分
ロキソプロフェンナトリウム水和物 |
■用法用量
以下の量を水またはお湯で服用してください。
・成人(15歳以上):1錠/回、2回まで/日 ・15歳未満:服用しないでください |
*症状があらわれた時、なるべく空腹時をさけて服用してください
*再度症状があらわれた場合には3回目を服用できます
*服用間隔は4時間以上おいてください
生理痛に効く薬は、成分や剤形などからご自身に合った薬をお選びいただけます。薬の種類と選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
ロキソニンSは腹痛に使える?
痛み止めとして使用される市販のロキソニンS、バファリン、イブなどの鎮痛剤は、腹痛には効果が保証されていないため使用することはできません。
ただし、腹痛の中でも生理痛と判断できる場合は、ロキソニンSなどの鎮痛剤を使うことで痛みをおさえることができます。
薬以外で腹痛を和らげる方法
腹痛は、薬で対処する以外にも、普段の生活でいくつか意識することで痛みをやわらげることができます。
胃に優しいものを食べる
胃からくる痛みがあり、不規則な食生活や暴飲暴食をしている場合は、胃に負担をかけないものを食べましょう。
刺激物や油の多い肉、バターなどの脂肪分の多いものを控え、おかゆ・うどん・白身魚・卵・豆腐などの消化の良い食べ物を選びましょう。
自律神経を整える
ストレスなどによる自律神経の乱れが腹痛の原因の場合は、次のような方法を試してみてもよいでしょう。
■スポーツや森林浴などでリフレッシュする
ストレスの原因を忘れられる場所に行くことで、心身ともにリフレッシュできます。
■質の良い睡眠をとる
寝る前に、ぬるめのお湯にゆっくり入ることで体が温まり、リラックスした状態で眠ることができます。また、寝る前のアルコール摂取や食事も避けましょう。
■腹式呼吸をする
腹式呼吸は、ちゃんと吐くことから始めます。まずは、「いーち、にー、さーん」と頭の中で数えながら、ゆっくりと口から息を吐き出します。息を吐き出せたら、同じように3秒数えながら、今度は鼻から息を吸い込むのを5~10分程繰り返します。
腹部を温める
冷えが腹痛の原因の場合は、腹部を温めましょう。カイロや湯たんぽを腹部に当てる、湯船に入るなどが効果的です。
ただし、腹痛の原因が冷えかどうかわからない場合は、むやみに腹部を温めないようにしましょう。内臓の炎症などが原因の場合は、温めることで症状が悪化することがあります。
腹筋を鍛える
腹筋の筋力低下による便秘が腹痛の原因の場合は、腹筋を鍛えましょう。
胃腸の動きを活発にするだけでなく、運動によって血行がよくなることで便秘解消が期待できます。
使用上の注意|治らない場合は病院へ
原因が分かっている軽度の腹痛であれば、市販薬で痛みをおさえることができます。ご自身の腹痛の原因にあわせて、正しい市販薬を使用しましょう。
また、市販薬を使用する際は、薬の説明書(添付文書)に記載された使用期間や用法・用量を守り、症状がよくならない場合や他にも気になる症状がある場合には早めに医療機関を受診しましょう。