コレステロールを下げる薬はある?
コレステロールはHDLコレステロール(善玉コレステロール)とLDLコレステロール(悪玉コレステロール)の2種類に分けられます。
LDLコレステロールを下げる薬は、処方薬にのみ存在します。市販薬の場合は、血清高コレステロール値を改善するものなら存在します。
LDLコレステロールはなんで悪玉なの?
HDLコレステロール(善玉コレステロール)は、血管にある余分なコレステロールを肝臓へ戻す役割を持っています。
一方、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は肝臓から全身にコレステロールを届ける役割を果たしています。
したがって、LDLコレステロールが増え、必要以上にコレステロールを届けてしまうと、血液中の過剰なコレステロールが動脈の壁に次々と入り込み、動脈硬化を引き起こす原因となります。
そのため、LDLコレステロールが「悪玉」と呼ばれます。
コレステロールの薬はどんなときに使う?
この記事では「コレステロール値」という言葉は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)のことを指します。
LDLコレステロールが基準値よりも高い場合は、値を下げる必要があります。
2024年3月現在、高コレステロールを改善する薬はドラッグストアや薬局などで購入できる市販薬と、病院で医師から発行してもらった処方箋をもとに貰う処方薬の両方で存在します。
しかし、コレステロール値を下げるために第一にしなければならないことは生活習慣の改善です。
LDLコレステロールやTG(トリグリセライド=中性脂肪)が基準値よりも高い、またはHDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準値よりも低い状態を指す脂質異常症(旧称:高脂血症)は、生活習慣が原因となることが多いため、まずは食事療法や運動療法をする必要があります。
ただし、それでもコレステロール値が下がらない場合は薬を使って数値を下げるという方法を用います。
コレステロールの薬は市販薬と処方薬どちらがいい?
健康診断で要経過観察といわれたなど、ちょっとコレステロール値が気になるなといった状態であれば市販薬を使用してみるのも良いでしょう。
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の検査値が140mg/dL以上の場合は脂質異常症の診断基準に該当するため、病院を受診することが基本となります。
また、健康診断で要精密検査・要治療と診断された方についても、一度病院を受診することをおすすめします。
脂質異常症の診断基準(空腹時採血) | ||
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高LDLコレステロール血症 | LDLコレステロール | 140mg/dL以上 |
低HDLコレステロール血症 | HDLコレステロール | 40mg/dL未満 |
高トリグリセライド血症 | 中性脂肪(トリグリセライド) | 150mg/dL以上 |
日本内科学会雑誌|日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版を元に筆者作成
コレステロール値を改善する市販薬
高くなった血清コレステロール値を改善する高コレステロール改善薬は、市販でも販売されています。
ここでは血清コレステロール値を改善する市販薬を紹介します。
コレストン|高コレステロール改善薬
特徴 |
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大豆由来成分の大豆油不けん化物が腸からの余分なコレステロール吸収を抑え、排泄を促します。
また、有効成分のパンテチンがLDL(悪玉)コレステロールの分解を促し、またHDL(善玉)コレステロールを増加させます。さらに、酢酸d-α-トコフェロールが血流をスムーズにし、末梢血行障害(手足の冷え・しびれ)を緩和します。
■用法用量
以下の量を、食後に水またはぬるま湯で服用してください。
・成人(15歳以上):2カプセル/回、3回/日 ・15歳未満:服用しないでください |
シンプトップ|高コレステロール改善薬
特徴 |
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ポリエンホスファチジルコリンの主成分は大豆から抽出・精製した高活性レシチンです。
医療用医薬品のポリエンホスファチジルコリンはHDL(善玉)コレステロールを増やすことで、血清高コレステロールを改善します。
■用法用量
以下の量を食後に服用してください。
・成人(15歳以上):2カプセル/回、3回/日 ・15歳未満:服用しないでください |
ラングロン
特徴 |
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ラングロンは血液中のコレステロール値を低下させ、血清高コレステロールの改善に効果をあらわします。
リボフラビン酪酸エステル(ビタミンB2)は、肝臓におけるコレステロール合成を抑えるとともに血液中のコレステロールの排出と代謝を促します。
■用法用量
以下の量を服用してください。
・成人(15歳以上):1カプセル/回、2回/日 ・15歳未満:服用しないでください |
ローカスタEX
特徴 |
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ローカスタEXは、パンテチンの働きによって脂質代謝を改善し、血中の総コレステロールを減少させる医薬品です。
ソイステロールがコレステロールの腸管からの吸収を抑えるとともに体外への排泄を促し、天然型ビタミンEが血管に障害を与える過酸化脂質の増加を抑えて末消の血行をよくします。
さらに、血管を丈夫にするルチン(ソバに多く含まれるポリフェノール)と、血管を正常に保つビタミンB6などを配合しています。
■用法用量
以下の量を食後に服用してください。
・成人(15歳以上):2カプセル/回、3回/日 ・15歳未満:服用しないでください |
ヘルスオイル
特徴 |
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ヘルスオイルに配合されている4種類の有効成分が協力的に働き、悪玉コレステロールを低下させることで動脈硬化症の予防に効果を発揮します。
天然型ビタミンEが抗酸化作用を示すとともに末梢血管の循環を改善し、ビタミンB6が脂質の代謝をサポートし、カルバゾクロムが毛細血管を強化し、混合植物油が悪玉コレステロールを低下させます。
■用法用量
以下の量を食後に服用してください。
・成人(15歳以上):2カプセル/回、3回/日 ・15歳未満:服用しないでください |
市販薬の使用後も定期的に医療機関で検査を
市販薬を使用しているからといって必ずコレステロールが改善できるとは限りません。
並行して食事や運動などの生活習慣を改善するとともに、コレステロール値がどのように変動しているかを定期的に医療機関で計測することをおすすめします。
また、市販薬を1か月程度使用しても効果が現れない場合は、医師や薬剤師、または登録販売者に相談しましょう。
コレステロールの吸収をおさえるトクホ飲料
コレステロールの吸収をおさえる飲料を食事に取り入れることもおすすめです。
コレステロールの吸収をおさえる飲み物の中でも特定保健用食品(トクホ)は消費者庁が認めた健康飲料で、生活習慣が原因となる健康リスクを下げるよう工夫されています。
なお、ここで紹介する商品は、コレステロールの値が高めの人を対象とした食品です。
原則として、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)値が境界域※1および軽症域※2にある人を対象として行った有効性試験の結果をもとに作られた商品であることに注意してください。
- ※1境界域:LDLコレステロール120~139 mg/dL
- ※2軽症域:LDLコレステロール140~159 mg/dL
コレカットレモン|トクホ飲料
コレカットは水溶性食物繊維(低分子化アルギン酸ナトリウム)を配合したトクホ飲料です。
腸内のコレステロールやコレステロールを原料とする胆汁酸を包み込み、体外に排出することでコレステロール値を改善します。
1本にレタス中玉約1個分の食物繊維が含まれており、気軽に摂取することができます。
脂質異常症(高脂血症)の治療に使われる処方薬
市販薬を使用してもコレステロール値が改善されなかったり、健康診断で病院受診を推奨された場合は、処方薬による薬物治療がおこなわれる可能性があります。
脂質異常症の治療に使われる主な処方薬には、次のようなものがあります。
コレステロール値を下げる薬剤
■HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)
スタチンはLDLコレステロールの値を下げるために、もっともよく使われる薬です。
HMG-CoA還元酵素阻害薬は、肝臓でコレステロールが合成されるときに必要な酵素の働きを妨げる薬です。
主なスタチンには、ロスバスタチン・アトルバスタチン・ピタバスタチン・プラバスタチン・シンバスタチン・フルバスタチンなどがあります。
■陰イオン交換樹脂製剤
陰イオン交換樹脂製剤は、腸内で胆汁酸と結合して便として排出することにより、血液中のLDLコレステロールを低下させます。HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用されることもあります。
■小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬は、小腸でコレステロールが吸収されるのを阻害する薬です。HMG-CoA還元酵素阻害薬と併用されることがあります。
コレステロール値と中性脂肪値を下げる薬剤
■ニコチン酸誘導体製剤
ニコチン酸誘導体製剤には肝臓における中性脂肪の合成を抑制して、血中の総コレステロール値や中性脂肪の値を低下させる作用があります。
また、末梢血管の血流を改善する作用も持ち合わせています。
■フィブラート系薬剤
フィブラート系薬剤には、コレステロール合成阻害作用やトリグリセライド(中性脂肪)分解促進作用があり、LDLコレステロール値や中性脂肪値を下げるとともに、HDLコレステロールを増やす働きがあります。
コレステロール値改善のための3つのポイント
LDLコレステロール(悪玉コレステロール)および、HDLコレステロール(善玉コレステロール)値を改善するためには、薬を使用するだけではなく次の3つのポイントをおさえておきましょう。
- 食事療法の実施|コレステロールの摂取量をおさえる
- 運動療法の実施|適度な運動をする
- 薬を使用していても生活習慣の改善は必須
食事療法の実施|コレステロールの摂取量をおさえる
コレステロール値を改善するためには、日頃の食事と運動に気を遣うことがとても重要となります。
食事療法の基本は、過食を避けカロリーをとり過ぎないことです。可能な限り標準体重を保ちましょう。
【標準体重の目安】 標準体重(kg) = 身長(m)×身長(m)×22 |
また、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げるには、飽和脂肪酸が含まれる食品やコレステロールの含まれる食品を避け、食物繊維が含まれる食品を積極的に摂取するなどを意識しましょう。
コレステロールの摂取量は1日200mg以下を目安にしましょう。
コレステロールを下げる具体的な食べ物や、コレステロールを下げるための食事療法については以下の記事で詳しく解説しています。
運動療法の実施|適度な運動をする
コレステロール値を改善するためには運動を継続的に実施することが大切です。
運動の中でも、ウォーキング・ジョギング・水泳・自転車などの有酸素運動が、コレステロールを下げる運動として推奨されています。
バスや電車で1つ前の駅で降りて歩くなどして、生活の中で運動を取り入れましょう。
運動の強度としては「楽」から「ややきつい」と感じる運動が望ましいです。
運動時間の目安は1日30分以上、週180分以上が望ましいですが、無理な場合は少なくとも週に3日は運動をすることを目標にして少しずつ時間を増やしていくと続けやすくなります。
また「10分×3回でトータル30分」といった形で、1日に運動する時間を数回に分けても問題ありません。
薬を使用しても生活習慣の改善は必須
薬は血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪が多い状態を治すわけではなく、あくまでコントロールをしているだけです。
根本的な原因を解消するためには、薬物療法だけでなく食事療法と運動療法を併用することが必須となります。
市販薬・処方薬問わず薬を使用しても、食生活の改善と適度な運動は継続するようにしてください。