子どもの陰部のかゆみに市販薬は使える?
小さな子どもが急に陰部のかゆみを訴えた時に、どう対処したらよいのか分からず困ってしまう方も多いでしょう。子どもの陰部のかゆみは主に、汗や下着のムレによるかぶれが原因となるものと、細菌やウイルスが皮膚に感染することによるものの、2つに分かれます。
しかし、原因が何かを見極めることは難しく、誤った薬を使用すると症状が悪化する危険性もあるため、まずは病院を受診しましょう。
かぶれの場合は市販薬で一時的に対処が可能
汗や下着によるムレ、石鹸やボディソープによる洗いすぎが原因でおこる陰部のかゆみの場合、すぐに病院へ行くことができない時は、市販薬で一時的に対処することができます。
細菌やウイルス感染が原因の場合も
細菌やウイルスが皮膚に感染して起こるかゆみの場合は、その原因菌に合った皮膚治療薬を使用する必要があります。基本的に、細菌には抗生物質を、ウイルスには抗真菌薬を使用します。
かゆみを引き起こす感染症についてはこちらをご覧ください。
子どもの陰部のかゆみに効く市販薬とその選び方
子どもの陰部のかゆみに使える市販薬は、成分・剤形・使用感をもとに好みや使用するシーンに応じて選びましょう。
たとえば、伸びがよく、べたつかない方がよいときはクリームタイプ、患部を保護しながら、しっかり塗り込みたい方は軟膏タイプを選ぶとよいでしょう。
下で紹介しているいずれの薬も、ステロイドは配合されておりません。
ただし、症状がうまく伝えられないような小さいお子様の場合は、医師の診断が優先されるため、まずは病院を受診しましょう。
商品画像 | 特徴 |
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・かゆみ止め成分+抗炎症成分+殺菌成分+血行促進成分配合 ・クリームタイプ ・スースーする成分はない方がいい方に |
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・かゆみ止め成分+殺菌成分+皮膚の保護成分+2種類のビタミン配合 ・軟膏タイプ ・おむつかぶれに ・患部がジュクジュクしている時などにも |
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・2種類のかゆみ止め成分+殺菌成分+血行促進成分+清涼成分配合 ・クリームタイプ ・スーッとする使い心地 |
ムヒ・ベビーb
ムヒ・ベビーb 15G(第3類医薬品)【第三類医薬品】
剤形 | クリーム | |
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成分 | ジフェンヒドラミン | かゆみ止め成分 |
グリチルレチン酸 | 抗炎症成分 | |
イソプロピルメチルフェノール | 殺菌成分 | |
トコフェロール酢酸エステル | 血行促進成分 |
ムヒ・ベビーbは、弱酸性のクリームタイプの薬です。
かゆみをおさえる成分に加えて、抗炎症成分が赤くヒリヒリした炎症に効果を発揮します。また、殺菌成分が雑菌の繁殖をおさえ、血行促進成分が血流を改善することで肌の新陳代謝を高め、患部の回復を早めます。
スースーする成分(l-メントール)は、含まれておらず、メーカーHPでは、生後1か月から使えるとの案内があります。
皮膚の赤みがみられるような炎症をともなうかゆみに適しています。
ポリベビー
ポリベビー 30g【第三類医薬品】
剤形 | 軟膏 | |
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成分 | ジフェンヒドラミン | かゆみ止め成分 |
トリクロロカルバニリド(T.C.C) | 殺菌成分 | |
酸化亜鉛 | 皮膚の保護成分 | |
ビタミンA油 エルゴカルシフェロール(ビタミンD2) |
皮膚を健康に保つ成分 |
ポリベビーは、患部を保護する機能に優れた軟膏タイプの薬です。また、肌の温度で溶けてやわらかくなり、伸びのよい使用感でもあります。
かゆみ止め成分や殺菌成分のほか、酸化亜鉛が分泌物を吸着して患部を乾かします。加えて、2種類のビタミンが皮膚を健康に保ちます。
患部がジュクジュクしている時や、赤ちゃんのおむつかぶれにおすすめですが、酸化亜鉛には患部を乾燥させる作用があるため、乾燥しているときは向かないことがあります。
ポリベビーがお子様の皮膚の状態や症状に使えるかどうかご不明の場合は、医師・薬剤師にご相談ください。
デリナースクール
デリナースクール【第二類医薬品】
剤形 | クリーム | |
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成分 | リドカイン ジフェンヒドラミン塩酸塩 |
かゆみ止め成分 |
イソプロピルメチルフェノール | 殺菌成分 | |
トコフェロール酢酸エステル | 血行促進成分 | |
l-メントール | 清涼成分 |
デリナースクールは、2種類のかゆみ止め成分が、おむつや下着の刺激からくるかゆみを鎮めます。殺菌成分は、雑菌の繁殖をおさえます。
清涼成分であるl-メントールが配合されているため、スーッとするクール感があります。
かゆみ止めなどの塗り薬に関するQ&A
Q 子どもの陰部にステロイドは使用してもいい?
A 皮膚のかゆみによく使用されるステロイド外用薬は、薬によって強さのランクが分かれています。ランクによっては子どもの陰部に使用ができない薬もあり、使用する薬のランクや部位を誤ると、副作用が出る危険性があります。
医師の指導の元であれば使用ができますが、ご自宅でのセルフケアとして陰部に市販薬を使用する場合は、ステロイド無配合の薬がよいでしょう。
Q 粘膜部分にも使えますか?
A 市販のかゆみ止め薬の多くは、膣内や膣の入り口、肛門の中などの粘膜部分への使用ができません。粘膜は他の皮膚に比べて薬の吸収率が高く、効果が強く出てしまう危険性があるためです。市販薬を使用する際は添付文書をよく読み、用法・用量を守って使用しましょう。
また、膣内の粘膜にもかゆみの症状を感じる場合は、カンジダ膣炎などの感染症にかかっている可能性も考えられます。感染症によるかゆみは、基本的に病院の診療が必要になるため、自己判断による市販薬の使用はやめましょう。
Q リンデロンは陰部に使えますか?
A リンデロンは、病院で処方される処方薬と、薬局やドラッグストアで買える市販薬の2種類があります。
子どもの皮膚は大人に比べて薬の吸収率が高く、陰部はさらにその吸収率が高くなります。また、リンデロンにはステロイドが含まれているため、自己判断で使用できる市販薬は、副作用が生じるおそれを考慮すると、使用はおすすめできません。
ただし、病院で処方されたリンデロンなどのステロイド外用薬は、患者さん一人一人の皮膚の状態や症状に合わせて処方されているため、陰部に使う際は医師の指示に従いましょう。
Q 手元にある処方薬(ロコイド、アクアチム軟膏、レスタミンコーワクリームなど)を陰部に使うことはできる?
A 処方薬は、その時の患者様の症状に合わせて医師が処方する薬です。症状が似ている場合でも、原因が異なる場合には使用する薬も異なります。そのため、残ってしまった処方薬を別の機会に自己判断で使用するのはやめましょう。
まずは、医師の診察を通して、適切な治療を受けていただくことをおすすめします。
子どもの陰部のかゆみの原因はなに?
子どもの陰部のかゆみの原因はさまざまありますが、それぞれ特徴があります。
接触皮膚炎などのかぶれが原因となる陰部のかゆみは市販薬でも対処ができますが、それ以外の病気に関しては一度病院を受診して検査を受けることをおすすめします。
原因 | |
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男女共通 |
・接触皮膚炎(かぶれ) ・皮膚カンジダ症 ・いんきんたむし など |
女の子特有 |
・外陰膣炎 |
男の子特有 | ・亀頭包皮炎 |
接触皮膚炎(かぶれ)
汗やムレ、下着の摩擦などの刺激によって皮膚がかぶれてかゆみが出てしまうことを接触皮膚炎といいます。子どもは大人に比べて、皮膚を守る角質層が薄く、大人よりも皮膚トラブルを起こしやすいです。また、股間などのデリケートゾーンは、他の部位よりも皮膚が薄いため、身体の中でも特にかぶれや炎症を引き起こしやすくなっています。
また、尿や便が外陰部に付着した状態が持続することが刺激となる赤ちゃんのおむつかぶれなども接触皮膚炎にあたります。
皮膚カンジダ症
カンジダという真菌による感染症です。「カンジダ=性病」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、カンジダは常に皮膚に存在している常在菌で、子どもの皮膚にも存在しています。主に疲労やストレスなどによって体力や抵抗力が落ちたときに、カンジダが増殖してさまざまな症状を起こします。
女の子の主な症状は、外陰部の腫れや強いかゆみ、チーズや酒かすのような白いおりものが増加します。
男の子の場合は陰部の強いかゆみや、白い膜状の汚れがたまることが特徴です。
こどもの皮膚カンジダ症は、市販薬では対処できません。以上のような症状、特にかゆみやおりものの変化があり、カンジダが疑われる場合は病院を受診しましょう。
いんきんたむし
いんきんたむしは白癬菌というカビの一種によって発症する感染症です。水虫と同じ原因菌なため、股間の水虫ともいわれており、女性に比べて、男性に発症することが多いのが特徴です。
「水虫=大人の病気」というイメージも定着していますが、水虫は年齢を問わず、子どもにも感染する可能性があります。家族内で水虫に感染している方が使用したタオル等を、そのまま子どもが使用し、股間や足などの部位に水虫がうつってしまう、というケースもあります。
症状は、股間周辺の強いかゆみと痛みです。
家族に水虫に感染している方がいる場合は、一度いんきんたむしを疑った方が良いでしょう。また、男の子の場合、いんきんたむしはほとんど陰嚢には症状が出ないため、かゆみの症状が陰嚢以外の場合もいんきんたむしの可能性があります。
いんきんたむしかどうかは病院での検査が必要となります。思い当たることがある場合、何か気になることがある場合は一度病院を受診しましょう。
外陰膣炎
小さな女の子がよく起こす陰部のトラブルに外陰膣炎があリます。外陰腟炎はかぶれの一種でもあり、柔軟剤などのアレルギーや、下着や自転車に長時間乗って擦れることで炎症を起こす子どももいます。主な症状は外陰部のかゆみや腫れ・赤みで、加えておりものが増えることもあります。
また、ブドウ球菌や大腸菌が膣内に感染することによって起こることもあります。
亀頭包皮炎
小さな男の子は陰部を無意識に触ってしまうことが多いです。いろいろなところに触れた手には細菌が付着していることもあり、細菌が包皮の内側や亀頭から入り込み亀頭包皮炎を引き起こします。
かゆみや赤いブツブツが出ますが、症状が悪化すると痛みや腫れ、膿が出ることもあります。
亀頭包皮炎は市販薬では対処できません。思い当たる症状がある場合は病院を受診しましょう。
子どもの陰部のかゆみの対処法
子どもの陰部のかゆみがかぶれだった場合は、市販薬による治療に合わせて、次のことに注意しましょう。
下着は通気性の良いものを
子どもに履かせる下着は、綿素材などの通気性の良いものを選び、汗をかいたらなるべく下着を取り替えるようにしましょう。また、サイズの合っていない下着も、締め付けや摩擦が皮膚の刺激となって、かぶれやかゆみを引き起こします。お子様のサイズにあった下着を購入するようにしましょう。
赤ちゃんのおむつも長時間の着用はかぶれの原因となります。こまめに取り替えるようにしましょう。
陰部を常に清潔に
陰部の汗をそのままにしたり、お風呂に入らずにいると、陰部に雑菌が繁殖してかぶれる原因となります。汗を拭き取れる時は拭き取り、毎日シャワーを浴びて清潔を保ちましょう。
刺激が強い石鹸やボディーソープはNG
子どもの陰部は皮膚が特に薄いため、強く洗いすぎてしまうと傷がつき、かゆみを引き起こす原因となります。
また、汚れを落とす成分が強いボディソープは、陰部の薄い皮膚には刺激となってしまうおそれがあり、かゆみの原因になります。
陰部を洗うときは皮膚を傷つけないように、やさしく手で洗いましょう。