精神安定剤とは?
精神安定剤とは、不安障害などによる不安やイライラなどの症状を軽減、あるいは解消するための薬剤のことを指します。
精神安定剤には「抗不安薬」と「抗精神病薬」などがあります。
抗不安薬は、主にうつ病や心身症、睡眠補助剤などとして利用されます。日本でよく使用されているのはベンゾジアゼピン系の薬で、ベンゾジアゼピン系は乱用すると依存症が現れるおそれがあるので医師の指示に適切に従う必要があります。
抗精神病薬は、主に統合失調症などに用いられ、気分を落ち着かせる作用があります。
いずれの種類の精神安定剤も使用には医師の処方が必要です。
精神安定剤の市販薬はある?
2023年7月現在、精神安定剤と呼ばれる抗不安薬または抗精神病薬はドラッグストアや薬局などで市販されていません。
精神安定剤は個人で購入することができず、使用には必ず医師の処方が必要になる医薬品です。
精神安定剤は、処方された後も副作用や依存性などが起こっていないか継続的に観察する必要があるため、医師と相談しながら使用しましょう。
代わりに使える市販薬はある?
医師から処方されている精神安定剤の代わりに使うことのできる市販薬はありません。
しかし、体質や症状によっては市販薬で改善できる場合もあります。
不眠や神経症に効果のある市販薬|漢方薬で体質改善
不眠や神経症に効果のある市販の漢方薬を紹介します。
漢方薬の選び方
漢方薬を選ぶときは、体質や症状にあった薬を選ぶことをおすすめします。
漢方の考え方では、病気に対する抵抗力(体力)が比較的高い体質を実証、低い体質を虚証と呼びます。
一般的な実証と虚証の特徴は次の表を参考にしてみてください。
虚証 | 実証 |
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不眠や神経症に効果を発揮する漢方薬を選ぶときは、自身が実証・虚証のどれに当たるのか、そして具体的にどのような症状で不眠に悩んでいるのかを基準にしましょう。
体質(虚証・実証) | 症状 | 適した漢方薬 |
---|---|---|
比較的体力がない(中等度〜中等度以下) | 心身の疲れがなかなか抜けない | ▶︎酸棗仁湯(さんそうにんとう) |
イライラして落ち着かない | ▶︎加味逍遙散(かみしょうようさん) | |
貧血気味 | ▶︎加味帰脾湯(かみきひとう) | |
神経が過敏で興奮しやすい | ▶︎桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう) | |
体力が中等度くらい | 気分がふさいで喉のつかえがある | ▶︎半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) |
比較的体力がある(中等度以上) | ||
動悸や便秘がある | ▶︎柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) | |
顔色が赤く、イライラして落ち着かない | ▶︎黄連解毒湯(おうれんげどくとう) |
漢方ナイトミン|酸棗仁湯
漢方ナイトミン 72錠(第2類医薬品)【第二類医薬品】
酸棗仁湯は、どちらかといえば体力がなく、心身が疲れて眠れない方に適した漢方薬です。
漢方の酸棗仁湯処方のお薬である漢方ナイトミンは、心身のバランスを整え、続く不眠を改善します。
錠剤のため、漢方独特の苦味が苦手な方でも比較的飲みやすいお薬です。
効能効果 |
体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの次の諸症: 不眠症、神経症 |
加味逍遙散料エキス顆粒
「クラシエ」漢方加味逍遙散料エキス顆粒 45包【第二類医薬品】
イライラしがちな方に適した漢方薬です。
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの不眠症などに効果を発揮します。
効能効果 |
体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症※、不眠症 ※「血の道症」とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状を指します。 |
加味帰脾湯
和漢箋ユクリズム 36錠(第2類医薬品)【第二類医薬品】
加味帰脾湯は体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感をともなうものの不眠症などに使用できる漢方薬です。
効能効果 |
体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症 |
桂枝加竜骨牡蛎湯
「クラシエ」漢方桂枝加竜骨牡蛎湯エキス顆粒 45包【第二類医薬品】
イライラして眠れない虚弱な方に適した漢方薬です。
体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの神経症や不眠症などに効果を発揮します。
効能効果 |
体力中等度以下で、疲れやすく、神経過敏で、興奮しやすいものの次の諸症: 神経質、不眠症、小児夜泣き、夜尿症、眼精疲労、神経症 |
半夏厚朴湯
「クラシエ」漢方半夏厚朴湯エキス顆粒 45包【第二類医薬品】
体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などをともなう不安神経症や神経性胃炎などに効果を発揮します。
効能効果 |
体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症: 不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感 |
柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒
「クラシエ」漢方柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒 24包【第二類医薬品】
体型が割とガッチリしていて、精神不安があり、動悸、便秘などをともなう不眠に使用される漢方薬です。
ストレスが強くイライラしやすいと、脳が興奮状態になるため寝つきが悪くなります。
「気」をめぐらせ、体にこもった熱を冷ますとともに、心を落ち着かせることで、脳の興奮からくる不眠を改善します。
顆粒タイプなので錠剤を飲み込むことが苦手な方にもおすすめです。
効能効果 |
体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う次の諸症: 高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜泣き、便秘 |
ツムラ漢方黄連解毒湯エキス顆粒A
ツムラ漢方黄連解毒湯エキス顆粒A 20包(第2類医薬品)【第二類医薬品】
体力中等度以上で、のぼせ気味で顔色が赤く、イライラして落ち着かない傾向の方の不眠症や神経症に効果を発揮する漢方薬です。
効能効果 |
体力中等度以上で、のぼせぎみで顔色赤く、いらいらして落ち着かない傾向のあるものの次の諸症: 鼻出血、不眠症、神経症、胃炎、二日酔、血の道症※、めまい、動悸、更年期障害、湿疹・皮膚炎、皮膚のかゆみ、口内炎 ※血の道症とは、月経、妊娠、出産、産後、更年期など女性のホルモンの変動に伴って現れる精神不安やいらだちなどの精神神経症状および身体症状のことです |
市販薬を使用する上での注意点
市販薬は処方薬の精神安定剤とは異なるものです。特に漢方薬は体質を改善することにより体に作用するため、即効性はなく、すぐに効果を実感できない場合もあります。
また、市販薬は処方薬の精神安定剤の代わりとなる薬ではないことにも注意してください。あくまで症状の改善の選択肢のひとつとして挙がるものであり、現在使用している処方薬がある場合は、使用をやめずに医師の指示に従って使用を継続してください。
なお、現在他の薬を使用していて市販薬と併用したい場合は、医師と相談の上で使用するかどうかの判断をしてください。
精神安定剤が効かないときはどうすればいい?
現在使用している抗不安薬などの精神安定剤が効かない場合は、原則として主治医と相談して他の薬にするか、あるいは他の治療法を試すのかを決めましょう。
自己判断で薬の使用をやめたり服用量を増やしたりすると、期待する効果が得られなかったり、副作用のリスクが高まったりするおそれがあります。
精神科や心療内科領域の病気の治療は、医師と二人三脚で治療を進めていく必要性が比較的高い領域です。
もし、今の主治医と治療方針や相性が合わないと感じるのであれば、セカンドオピニオンなどを活用することもひとつの手段です。
現在使用している精神安定剤が効かないなどで不安を感じている場合は、自己判断で薬の服用量を変えたりせず、必ず医師の指示を仰ぎながら治療をしていきましょう。
精神安定剤を通販や個人輸入で購入しないこと
精神安定剤が通販サイトや個人輸入サイトで販売されていることがありますが、購入することは避けてください。
精神安定剤の一部である、向精神薬の通販での購入および個人輸入は『麻薬及び向精神薬取締法』という法律で禁止されています。
「麻薬及び向精神薬取締法」又は「覚醒剤取締法」の規定により、医療用の麻薬又は向精神薬若しくは医薬品覚醒剤原料を、医師から処方された本人が携帯して入国する場合を除いて、一般の個人が輸入することは禁止されており、違反した場合には処罰されます。 (本人が携帯せずに、他の人に持ち込んでもらったり、国際郵便等によって海外から取り寄せることはできません。) 引用:厚生労働省ホームページ
一部の精神安定剤については個人輸入ができるものもありますが、以下の理由からなるべくしないことを推奨します。
- 日本での有効性や安全性の確認がされていない場合がある
- 虚偽または誇大な効能・効果をうたっている場合がある
- 正規の流通品とは異なる劣化品・偽造品のおそれがある
- 不衛生な場所や方法で製造されたおそれがある
- その他、自己判断による使用で人体に悪影響を及ぼす可能性がある
- 副作用などが起きた場合、医薬品副作用被害救済制度が適応とならない
精神安定剤は乱用すると依存症が現れるおそれがあるので、医師と効果について相談しながら服用をしていく必要があります。
万が一、個人輸入を考えているならば、事前に医師や薬剤師などの専門家と相談し、その必要性について十分に検討しましょう。