気管支炎とは?
気管支炎とは、気管と気管から枝分かれする気管支にウイルスや細菌が入り込み、炎症を起こす病気です。
気管支炎は、風邪・インフルエンザに続いて起きることが多く、数日から数週間で治る急性気管支炎と、数か月から数年にわたって続く慢性気管支炎に分かれます。
気管支炎の症状
気管支炎の主な症状は、咳や痰です。
そのほかにも、胸の不快感や、発熱・食欲不振・倦怠感などの全身症状がともなうこともあります。小さなお子様は、気管支が細いため、呼吸をする度にヒューヒュー、ゼーゼーと音が鳴る症状がみられることもあります。
気管支炎と喘息の違い
気管支炎と似た症状のひとつに喘息があります。
気管支炎と喘息は、どちらも気管支に炎症が生じる病気ですが、原因に違いがあります。
気管支炎は、風邪やインフルエンザなどのウイルスや細菌が原因となるため、感染が収まれば症状も落ち着くことがほとんどです。対して喘息は、アレルギーが原因となることが多く、アレルギーの原因となる物質との接触を避けなければいけません。
「気管支炎の咳」と「喘息の咳」を自分で見分けるのは困難なため、咳の症状が長く続いていたり、激しい咳が続くなど、症状が気になる場合は、一度呼吸器内科などの専門医を受診することをおすすめします。
気管支炎にはどんな漢方薬がいい?咳止めとの違いは?
気管支炎で病院にかかると、そのときあらわれた症状に対して治療を行う対症療法を中心として、咳や痰などの症状をおさえる薬が処方されます。
市販薬で咳や痰の症状に使える薬は、漢方薬と漢方薬以外の咳止めがあります。
漢方薬は、気管支炎による咳や痰だけでなく、鼻炎や風邪の症状が続いている場合などにも使うことができます。対して漢方薬以外の咳止めは、今でている症状が咳・痰のみの場合に使えます。
こんなとき・こんな方に | |
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漢方薬 | ・咳、痰以外に鼻水などの鼻炎症状や、喉の痛みなどの風邪の症状が残っている ・たばこや排気ガスなどで咳、痰がよくでる |
漢方薬以外の 咳止め |
・咳、痰がでている ・咳、痰以外の症状がない |
また、咳止めは、「乾いた咳が出る」「喉のイガイガをともなう咳」「痰が絡む咳」と咳の種類によって適した成分が異なります。
咳の種類別に適した市販薬については、こちらの記事をご覧ください。
気管支炎に効く漢方薬
気管支炎に効く漢方薬は、さまざまな種類があり、それぞれで適した体質と得意とする症状が異なります。
また、剤形も顆粒・細粒や錠剤などに分かれているため、ご自身の気管支炎の症状をもとに、お好みの剤形のものをお選びください。
剤形については、漢方薬特有の味やにおいが苦にならないという方は顆粒や細粒、独特の風味が苦手だという方は錠剤を選ぶとよいでしょう。
ツムラ漢方小青竜湯エキス顆粒
ツムラ漢方小青竜湯エキス顆粒 20包【第二類医薬品】
特徴 |
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・漢方薬|小青竜湯 ・顆粒 ・2歳以上 ・サラサラとした水のような痰をともなう咳に ・鼻水など鼻炎の症状が残っている方にも |
小青竜湯は、冷えた体を温めながら体内の水分代謝をうながし、水っぽい痰を排出させることで気管支炎の症状を鎮めます。
また、小青竜湯は、気管支炎に対して咳の回数や痰の切れなどを改善する効果が報告されています。
成人(15歳以上)の用法・用量は1回1包、1日2回で、1日量に含まれる小青竜湯エキスの量は2500mgです。
効能・効果 |
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体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の諸症: 気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症 |
クラシエ漢方小青竜湯エキスEX錠
クラシエ漢方小青竜湯エキスEX錠 72錠【第二類医薬品】
特徴 |
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・漢方薬|小青竜湯 ・錠剤 ・5歳以上 ・サラサラとした痰が絡む咳に ・鼻水など鼻炎の症状がある方にも |
錠剤タイプの小青竜湯です。
錠剤自体が生薬特有の味やにおいを感じにくいようフィルムコーティングされているため、漢方薬に慣れていない方でも比較的服用しやすいです。
成人(15歳以上)の用法・用量は1回4錠、1日3回で、1日量に含まれる小青竜湯エキスの量は3467mgです。
効能・効果 |
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体力中等度又はやや虚弱で、うすい水様のたんを伴うせきや鼻水が出るものの次の諸症: 気管支炎、気管支ぜんそく、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症 |
ツムラ漢方麦門冬湯内服液S
ツムラ漢方麦門冬湯内服液S 30MLX3本(第2類医薬品)【第二類医薬品】
特徴 |
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・漢方薬|麦門冬湯 ・内用液 ・15歳以上 ・喉の痛みや痰があまり出ない乾いた咳に ・むせるような激しい咳がでるときにも |
麦門冬湯は、痰があまり出ない乾いた咳が続くようなときや、喉が乾燥しているとき、そのほか顔が赤くなるほど咳こむときの気管支炎に適している漢方薬です。
気道や気管支の粘膜も含む気道全体を潤して、痰を出しやすくしたり、発作的に生じる咳などに効果を発揮します。
ツムラ漢方内服液麦門冬湯Sは15歳未満は使用できません。
効能・効果 |
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体力中等度以下で、たんが切れにくく、ときに強くせきこみ、又は咽頭の乾燥感があるものの次の諸症: からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声 |
ダスモックb
ダスモックb 40錠【第二類医薬品】
特徴 |
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・漢方薬|清肺湯 ・錠剤 ・15歳以上 ・たばこや排気ガスなどで咳・痰が続く方に |
体が喫煙や排気ガスによる汚れを処理しきれないと、気管支に汚れがたまります。そして体は汚れを取り除こうと多くの粘液を出すことで、痰の粘り気が増し、切れにくい痰になってしまいます。さらにその痰を吐き出そうとして、咳も頻繁に出ます。
清肺湯は、喫煙や汚れた大気によってダメージを受けた気管支の炎症を改善する漢方薬です。気道粘液の分泌を促進し、気管支にこびりついた痰の粘度を低下させて痰を排出させたり、炎症で狭くなっていた気管支を広げ、呼吸を楽にする効果があります。
効能・効果 |
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体力中等度で、せきが続き、たんが多くて切れにくいものの次の諸症: たんの多く出るせき、気管支炎 |
クラシエ漢方五虎湯エキス顆粒A
「クラシエ」漢方五虎湯エキス顆粒A 10包【第二類医薬品】
特徴 |
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・漢方薬|五虎湯 ・顆粒 ・生後3か月以上 ・黄色くネバネバした痰をともなう咳に ・顔が赤くなるほど咳こむときにも |
漢方の考え方では、激しい咳が出て、粘度の高い黄色い痰が絡んでいる状態は、体の中に熱がこもっていると考えられています。
五虎湯には、熱を取り去る作用があり、気管支の炎症をおさえて気管支を広げることで、咳を鎮め、呼吸を楽にします。
喉の痛みもあって、黄色い痰が出る、もしくは激しい咳も出て息苦しいといったときに適しています。
服用年齢については、生後3か月未満の乳児は服用できません。また、1歳未満の乳児には医師の診療を受けさせることを優先し、やむを得ない場合のみ服用させてください。
効能・効果 |
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体力中等度以上で、せきが強くでるものの次の諸症: せき、気管支ぜんそく、気管支炎、小児ぜんそく、感冒、痔の痛み |
気管支炎の治し方
気管支炎は、安静にしていれば自然治癒することもありますが、放っておくと症状の悪化を招いたり慢性化することもあるため、早く治すためには、市販薬でケアしたり、病院を受診するなど、早めの対処が重要です。
病院での治療
気管支炎の病院における治療は、急性気管支炎と慢性気管支炎で治療方法が異なります。
●急性気管支炎
原因菌の多くはウイルスであり、インフルエンザ以外の病原体に特化した治療薬はないことから、治療は安静にしたり、水分・栄養補給などを行いつつ、そのときあらわれた症状をおさえる対症療法が中心となります。
たとえば、咳の症状に対しては、鎮咳薬、気管支拡張薬などが使用されます。
抗生物質については、ウイルスが原因となる気管支炎には役立ちませんが、細菌による感染症であることが明らかな場合にのみ使われます。
●慢性気管支炎
最大の原因は喫煙であることから、喫煙している場合は禁煙が勧められます。自身の意志だけでは禁煙することが難しい場合は、禁煙補助薬の使用が検討されることもあります。
それ以外にも、去痰薬などの処方や吸入器を使用して痰をうながす治療が行われることもあります。
また、慢性気管支炎では、痰をともなう咳がでることが多く、鎮咳薬などでむやみに咳をおさえてしまうと、痰で気道がふさがってしまい、かえって症状が悪化することがあります。そこで、咳をおさえるよりも痰の排出がスムーズになるような去痰薬が使われることがあります。
日常生活におけるセルフケア方法
気管支炎は風邪やインフルエンザから移行するケースが多いため、普段から規則正しい生活を送り、栄養補給と休息を心がけることが大切です。
また、日々の生活でも次のことを意識するとよいでしょう。
◎部屋の湿度を適度に保ちましょう
特に冬は気温が低くなって空気が乾燥することで、気管支や喉の粘膜も乾燥し、炎症も起こしがちです。
加湿器などで部屋での湿度を保ち、温かく安静にし、十分な水分や栄養を摂りましょう。
◎喫煙を避ける
慢性気管支炎は、原因がたばこによるものが多いと言われています。
たばこの煙が気道への刺激になるだけでなく、喉や気管支の炎症の悪化の原因にも繋がります。
ご自身がたばこを吸わなくても、周りの方が吸っているたばこの副流煙が悪影響を与えます。家族など身近な方には、近くではたばこを吸わないようにしてもらいましょう。
◎マスクをつける
アレルゲンや感染症を避けるため、人が集まる場所などではマスクを着用しましょう。
マスクをつけて、乾いた空気を直接吸わないようにすることも大切です。
気管支炎は人にうつる?
気管支炎自体が人にうつるというよりも、気管支炎の原因となるウイルスや細菌による風邪やインフルエンザなどが、人から人へ飛沫や接触をきっかけにうつることによって、気管支炎になることはあります。
気管支炎に効く薬に関するQ&A
Q 病院で処方される吸入薬や抗生物質は市販されていますか?
A 吸入薬も抗生物質の内服薬も、医師の診断を受けながら使われるものであるため、市販されていません。
また、抗生物質はひとつで全ての細菌に有効なわけではなく、抗生物質によって効く細菌と効かない細菌があるため、医師の専門的な判断によって有効な抗生物質を選ばなければなりません。
Q 気管支炎にロキソニンは使える?
A ロキソニン自体には気管支炎の適応がありませんが、気管支炎が風邪やインフルエンザによるもので、発熱がともなう場合、ロキソニンなどの解熱鎮痛剤を「解熱」のために使いたいと考えられる方もいるかもしれません。
しかし、インフルエンザにともなう発熱は、病院によってはロキソニンではなく、アセトアミノフェン配合の解熱剤が推奨されています。
アセトアミノフェン配合の解熱剤は、風邪・インフルエンザどちらの発熱にも使うことができるため、インフルエンザ流行時期の発熱に市販薬を使いたい場合は、アセトアミノフェン配合の解熱剤をおすすめします。
アセトアミノフェン配合の解熱剤については、別記事で詳しく解説しています。
Q 気管支炎に市販の風邪薬が使えますか?
A 市販の風邪薬については、咳をおさえる成分のほかにも、鼻水をおさえる成分や熱を下げる成分なども含まれているため、気管支炎の症状に合わず、思わぬ副作用を起こす可能性もあります。市販の風邪薬を気管支炎の改善を目的として使うのはやめましょう。