1. ピルとは
ピルとは女性の卵巣から分泌される【黄体ホルモン】と【卵胞ホルモン】という2種類の女性ホルモンの役割を担う成分が配合されたお薬です。
ピルに含まれる【黄体ホルモン】【卵胞ホルモン】とは
2つの女性ホルモン、女性であれば知っているようで、よくわかっていない方も多いと思います。ここで一緒に復習していきましょう。
【黄体ホルモン】と【卵胞ホルモン】は排卵や生理など、子宮に関わる事象を細かくコントロールしています。
1. 卵胞期 卵巣内で卵胞が育ち、【卵胞ホルモン】の分泌量が増加 子宮内膜が厚くなっていく
2. 排卵期 【卵胞ホルモン】の分泌量が最大になり、排卵が起きる
3. 黄体期 排卵後、卵胞は黄体という組織に変化し、【黄体ホルモン】を分泌 基礎体温は高温になり、子宮内膜がさらに厚くなる(フワフワのベッド状に!)
4. 生理
・受精卵が着床した場合: 妊娠が成立し、そのまま黄体の機能が持続し、黄体ホルモンが分泌され続ける。
・受精卵が着床しなかった場合: ホルモンの分泌が減り、不安定になった子宮内膜がはがれ落ちる。(生理として体外に排出)
ピルの種類
含まれるホルモンの量によって種類や効果が異なります。 これらのピルの服用の目的は避妊以外にも生理諸症状の治療であったり、緊急避妊や生理日の移動などさまざまです。
1錠あたりのホルモンの含有量により、ピルは以下の2種類に分けられます。
・中用量ピル (含まれる卵胞ホルモンが50μg以上)
・低用量ピル (含まれる卵胞ホルモンが50μg未満※)
※卵胞ホルモン30μg以下の場合、超低用量ピルと呼ばれることもあります
低用量ピルと比べると中用量ピルは卵胞ホルモンの量が多く、効果が強く出やすい反面、副作用のリスクが高くなります。 そのため、安全性を考えて低用量ピル(超低用量ピルを含む)が現在は用いられることが多くなっています。
2. 低用量ピルの働き・効果
「ピルは避妊以外にどんな効果がある?」 「ピルって種類がいっぱいあって、違いがわからない」 そんな方は是非この章を読み進めてください。
低用量ピルを飲むと身体の中では何が起きてるの?
低用量ピルは【卵胞ホルモン】と【黄体ホルモン】の両方が、低用量含まれた飲み薬です。
低用量ピルを服用すると身体の中ではこのようなことになっています。
1. 低用量ピルを内服する
2. 十分な量の黄体ホルモンが体内にあると感知される
3. 脳は『体が黄体期と同じような状態になっている』と勘違いする
4. 脳は『体内に女性ホルモンがちゃんと出ているのでこれ以上出そうと命令しなくていいんだ』と捉える
5. 卵子は発育せず、排卵が起こらなくなる
排卵が起こらないと、精子が子宮内に入ってきても受精する卵子がありませんので、理論上は妊娠しません。
低用量ピルは避妊以外にも使えるの?
低用量ピルでは避妊以外でも下記のようなメリットを求めて使用されることも多いです。
<低用量ピルの副効用(メリット)>
1. 生理痛が軽くなる
低用量の卵胞ホルモンと黄体ホルモンだけで形成する子宮内膜は薄いため、生理の時に剥がれ落ちる子宮内膜も少ないです。
排卵や生理で分泌される炎症物質を抑えられるため、痛みが少なくなります。
※日常生活に影響を及ぼすような生理痛の場合、月経困難症や子宮内膜症の可能性があります。
2. 生理前の不快な症状(PMS)が軽減する
PMS(月経前症候群)は、生理前の3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、生理開始とともに軽快ないし消失する症状です。卵胞ホルモンと黄体ホルモンの急激な変動によりホルモンバランスが乱れることが、PMSの原因と考えられています。
このホルモンの急激な変化をピルで抑制することや、生理の回数自体を年に3~4回に減らすことで、PMSの症状の改善が期待できます。
3. 生理周期が規則正しくなる
規則的なホルモン補充を行うことにより、生理※の周期が規則的になることが期待できます。
※ピルを飲んでいる期間の出血のことを、正しくは消退出血と言います。
4. ニキビや多毛の改善
卵胞ホルモンや黄体ホルモンは、ニキビや多毛の原因となるテストステロンという男性ホルモンに密接に関わっています。 黄体ホルモン自体も男性ホルモンに似た作用を持ち、多毛、ニキビなどを引き起こします。 一部のピルはこの男性ホルモンの作用を抑えることで、ニキビや多毛を改善します。
低用量ピルの種類ごとの違いって?
低用量ピルは使用されている黄体ホルモン別に大きく以下の4種類に分けられます。
第一世代(ノルエチステロン)
出血量の減少、ニキビや肌荒れの改善が期待できる、不正出血は起こりやすい
第二世代(レボノルゲストレル)
不正出血が起こりにくい、安定した周期を作りやすい
※初めて低用量ピルを使う人にはこれがおすすめ!
第三世代(デソゲストレル)
PMSの改善も期待できる、ニキビや毛が濃い症状の改善に期待が持てる
第四世代(ドロスピレノン)
ニキビやむくみなどの副作用が起こりにくい、薬によって月経困難症や子宮内膜症にともなう疼痛などの症状の場合保険の対象となる
※避妊を目的に使用できません
※保険適応については診察や検査の結果に基づいて医師が判断
3. 低用量ピルは体に悪い?
冒頭でお話ししたとおり、低用量ピルのイメージは「体に悪そう」「将来妊娠できなくなる」といった“誤解”を受けた情報がいまだに残っています。
ここでよく聞く“誤解した情報”について解説をしていきます。
副作用はどのようなものがあるの?太るって本当?血栓症は怖い?
<一般的な副作用>
低用量ピルの一般的な副作用としては吐き気、頭痛、不正出血などがあります。しかしながら、これらの症状は1〜3か月程度服用を続けるうちになくなるとされています。 一方でなかなか改善しない方も中にはいらっしゃいますが、その場合は別の低用量ピルに変えることでそういった副作用が出なくなることもあります。
・不正出血
・吐き気
・頭痛
・胸の張り
・むくみ
<低用量ピルの服用で太る?>
なお、副作用で太るという話も聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、低用量ピルの服用により太ることはほとんどありません。
低用量ピルの副作用のひとつに「むくみ」があり、むくみによって体重が増加することがありますが、この症状も数か月で落ち着きます。
<血栓症は?>
一方で、重大な副作用として、血栓症があります。 血栓症は低用量ピルの服用により年間1万人に3〜9人の確率で起こるとされておりますが、一方で、低用量ピルを服用していない女性であっても年間1万人に1〜5人は同様に血栓症を起こすという報告があります。 そのため、総合的に考えると低用量ピルを服用するメリットの⽅が⼤きいと考えられます。 とはいえ、もし⼼配な症状が出た際には、すぐに医師に相談することが大切です。
下記のような症状が出たら、一度服用を中止し、医師の診察を受けましょう。
・激しい腹痛
・激しい胸の痛みや、呼吸が苦しい
・激しい頭痛
・目が見えにくい、視野が狭くなる、舌がもつれる、失神やけいれん
・ふくらはぎの痛みや肌が赤くなる
<妊娠できなくなるのでは?>
低用量ピルを飲むと妊娠できなくなるという情報、それは“誤解”です。
低用量ピルは内服を中⽌すると多くの場合、3か⽉以内に排卵を起こすようになります。 その後の妊娠率は低用量ピルを使⽤していない⼥性と同じです。比較的大きな研究結果では、低用量ピルを中止して1年以内に84〜88%の方が妊娠したとの報告もあり、妊娠に与える影響はないとされています。
<低用量ピルを飲むとがんのリスクが高まる?>
・卵巣がん
卵巣がんのリスクは30%低減することがわかっています。
・大腸がん
大腸がんのリスクは14%低減することがわかっています。
・子宮体がん
子宮体がんのリスクは43%低減することがわかっています。
・子宮頸がん
子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染により発症する病気です。ピルの服用により発症率は高くなるものの、差はごくわずかであるといわれています。 子宮頸がんの予防にはHPV感染予防ワクチン接種、及びコンドームの着用が勧められます。
・乳がん
低用量ピルの服用により発症率は高くなることは明らかになったものの、こちらも差はわずかであると言われています。
子宮頸がん、乳がんともに検診による早期発見が可能です。 年に1回の定期検診を受診いただくと良いでしょう。
4. なぜPMSや生理痛の緩和に低用量ピルを選ぶ?
低用量ピルは、生理痛や生理前の不快な症状(PMS)も改善できるお薬です。
生理の時には子宮内膜から痛みを発生させる物質である「プロスタグランジン」を出します。これが生理痛の原因です。低用量ピルには子宮内膜を厚くさせないことで、この痛みの原因となる物質の発生を抑え痛みを抑える効果もあります。 明らかに痛み止めを使う回数が多いような生理痛には病気が隠れている可能性があり、放っておくと不妊症などにつながる可能性もあります。
また、PMSは女性ホルモンの大きな変動がそもそもの原因なので、排卵を止め女性ホルモンの変動を抑えることで症状が軽快すると考えられています。
このように、生理痛やPMSの不調に惑わされずに過ごすために低用量ピルは有効です。
生理痛に対して海外では、低用量ピルが「最初に選ばれる薬」として広く知られており普及していますが、日本の低用量ピル利用率は2019年の調査の時点で2.9%と最低レベルです。
実際に、低用量ピルを使用している人がどのような目的で服用しているかを調査した結果によると、避妊を目的とした人よりも生理痛の緩和などを目的として使用している人の方が多いということが明らかになっています。
10代の女性を含む生理のある⼥性の 7〜8割が、生理にまつわるトラブルで⽣活、学業、仕事、スポーツなどに⽀障をきたしています。 低用量ピルの内服により、生理にまつわるトラブルを減らすことが期待できますので、ぜひ上⼿に利⽤してくださいね。
5. オンラインで低用量ピルを試してみる方法
低用量ピルは、主に産婦人科から処方を受けることで入手が可能です。
ただし、全ての産婦人科で処方されるわけではありませんので、低用量ピルの取り扱いのあるクリニックの受診もご検討ください。
現在はオンライン診療という形での低用量ピルの処方も進んできています。 地域による差もありますが、「婦人科を受診すると妊娠していると誤解を受ける」「低用量ピルを服用していると遊んでいると思われる」などといった心無い誤解をおそれて、現在も生理の痛みや生理前の不快な症状を我慢しているかたもいらっしゃいます。
オンライン診療ですと、全国どの地域でも低用量ピル処方のための診察を受けていただくことが可能です。 ぜひ、そういった手段も用いて、お子様の症状に寄り添ってくださいね。
また、初めて低用量ピルを使う場合は、どのピルが体に合うのかよくわからない状況だと思います。 医師に以下のような項目を伝えるようにしましょう。
・経血量の程度
・生理痛の程度
・PMS症状の程度
・ニキビなどの肌悩みの有無
なお、低用量ピルを使っていくうちに、気になる症状が変わってくるということもあります。 その場合は、医師に「今気になっている症状」について伝えましょう。 ピルの種類を変更することで、お悩みの軽減ができる可能性もあります。
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FAQ 〜低用量ピルでよくあるご質問〜
Q. ピルの値段が高い。海外輸入はだめなの?
海外から個人輸入する場合、以下のようなリスクがあります。
・正規品かどうかの判別が難しい
・日本国内で流通している医薬品とは異なり、品質が保証されているとは限らない
・個人輸入で入手した医薬品で発生する問題はすべて自己責任となる
・副作用があったときに国の補償などを受けられない
・販売ページに商品についての詳細な説明がないため、購入後に自分で外国語の取扱説明書を読む必要がある
日本国内で製造されている薬であれば偽物という可能性は極めて低いですが、海外では偽物の薬が大きな問題となっています。海外から個人輸入する場合、本当にその薬が本物なのか確かめる術はありません。実際に届いた薬を見たとしても、外見だけでは本物だと見極めることは現状不可能です。
また、病院で処方してもらった医薬品で重大な副作用が起きた場合は、医薬品副作用被害救済制度などで補償されることがありますが、個人輸入の医薬品はすべて補償の対象外になります。 ご自身の健康のためのお薬が、反対に不健康を導くことにもつながりかねませんので、個人輸入は避けましょう。
Q. 飲み忘れるとどうなる?
ピルを飲み忘れると、ピルによって調節されていた体内の女性ホルモンの量に変化が起こります。 ホルモンバランスが乱れると、子宮内膜が不安定になりますので、出血が起こる可能性があります。 ピルを内服していない場合、目安として2日程度続けて飲み忘れがあると生理(消退出血)がくるとされています。
また、避妊を目的として使用している場合、避妊効果が十分に得られなくなることもあるので注意が必要です。
Q. 飲み忘れた時の対処法
ピルの飲み忘れに対する一般的な対処法は次のとおりです。詳しくは、実際に服用する薬の説明書をご確認ください。
飲み忘れに気づいたときは、すぐに飲み忘れていた分の1錠を服用し、当日の1錠もいつもの時間に服用してください。
2日以上服用し忘れた場合は、気づいた時点で前日分の1錠を服用し、当日の1錠をいつもの時間に服用し、その後は当初のスケジュールどおりに服用を続けてください。
Q. 子どもでも服用は可能?
世界保健機構(WHO)によると、生理が始まっていればピルの服用が可能です。
医師が必要と判断すれば、10代でも服用が可能です。 ドイツやオランダなど欧州でのピルの普及率は40〜50%と非常に高く、子どもでも生理の調節のために飲んでいます。