アトロピンとは

アトロピンは自然界に存在する成分であり、ナス科の植物に含まれています。アトロピン成分を抽出したい場合は、水に溶けやすいアトロピン硫酸塩にします。アトロピンを含む代表的な植物はハシリドコロです。ハシリドコロの根茎や根は生薬として使用され、ロートコン呼ばれます。ロートコンからはロートエキスが抽出され、下痢止めの医薬品として使用されています。

アトロピンはその構造からトロパンアルカロイドに分類されます。アルカロイドとは窒素原子を含む塩基性植物成分の総称で、生物に強い影響を及ぼすものです。

アトロピンの作用

アトロピンは作用する部位によって効果が変わります。それぞれ作用させたい部位に使用するためにアトロピンは様々な剤形があります。

代表的な剤形の使用目的として、アトロピン点眼液は調節麻痺、アトロピン注シリンジは救急時の治療、ロートエキス散は軟便を伴う腹痛時に使用されます。

【剤形と部位別の作用】

  アトロピン点眼液 アトロピン注シリンジ ロートエキス散
瞳孔が開く    
心臓   少量では脈が遅くなる
(使用量が増えると脈が早くなる)
 
  お腹の痛みや動きをおさえる お腹の痛みや動きをおさえる
呼吸   呼吸が早くなる  

アトロピンの作用機序

アトロピンは副交感神経の働きに関わるアセチルコリンという物質の働きをおさえます。アセチルコリンはムスカリン受容体やニコチン受容体にくっつくことで、その作用を現します。アトロピンはアセチルコリンがムスカリン受容体にくっつくことを邪魔します。その結果、副交感神経の働きをおさえてくれるのです。これを抗コリン作用と呼びます。

アトロピンの副作用

アトロピンの作用が出すぎると副作用になることがあります。副作用が認められた場合には、使用を中止するなど適切な処置を行ってください。

今回は全身に作用するアトロピン注射剤の副作用を紹介します。

重大な副作用

ショック、アナフィラキシー (頻度不明) があらわれることがあるので、観察を十分に行い、頻脈、全身潮紅、発汗、顔面浮腫等があらわれた場合には投与を中止し、適切な処置を行ってください。

その他の副作用

その他の副作用には、次のようなものがあります。

散瞳、視調節障害、緑内障
消化器 口渇、悪心、嘔吐、嚥下障害、便秘
泌尿器 排尿障害
精神神経系 頭痛、頭重感、記銘障害
呼吸・循環器 心悸亢進、呼吸障害
過敏症 発疹
その他 顔面潮紅

アトロピンの注意点

アトロピンは抗コリン作用があるため、使用する方の体質や病歴には十分に注意が必要です。

アトロピンに注意が必要な方

アトロピンを使用する際は注意が必要な方が決まっています。しかし、使用する剤形によっては注意が必要ない方もいますので、使用前にしっかりと医師や薬剤師に確認しましょう。

●緑内障のある方

アトロピンが瞳孔を開く(散瞳)ことで、眼圧を高め症状を悪化させることがあります。

●前立腺肥大(ぜんりつせんひだい)で尿が出にくい方

アトロピンが膀胱(ぼうこう)や尿道に作用することで、尿が出にくくなる恐れがあります。

●重篤な心臓の病気がある方

アトロピンが心拍数を増やすことがあるので、症状が悪化することがあります。

●麻痺性イレウスのある方

アトロピンが腸の運動をおさえるので、症状が悪化することがあります。

アトロピンの禁忌

アトロピンは剤形によって禁忌が異なります。自分の体質、病気が禁忌に該当しないか、しっかりと医師、薬剤師に申告するようにしてください。

  アトロピン点眼液 アトロピン注シリンジ ロートエキス散
緑内障
前立腺肥大  
重篤な心臓病    
麻痺性イレウス  
アトロピン過敏症    

[☓は禁忌を示しています。]

アトロピンは子どもに使えるの?

アトロピンは医師の判断により、子どもに使われることがあります。アトロピンの代表的な剤形による使用の可否を見てみましょう。

  アトロピン点眼液 アトロピン注シリンジ ロートエキス散
子どもの使用
備考 0.25%液に薄めて使用することが望ましい。 安全性は確立していない。 年齢・症状に応じて使用する。

アトロピンと併用に注意が必要なもの

添付文書上、併用注意の薬として、三環系抗うつ剤、フェノチアジン系薬剤、モノアミン酸化酵素阻害剤、抗ヒスタミン剤、イソニアジドがあります。これらの薬を一緒に飲むことで、アトロピンの抗コリン作用(口渇、眼の調節障害、心悸亢進等)が増強することがあるので注意しましょう。

また添付文書上、アルコールは併用注意にはなっていません。しかし、一般的に過度なアルコールを飲むことで病気が悪化したり、薬の吸収や代謝に影響を及ぼす可能性があるので十分に注意しましょう。

おわりに

アトロピンが含まれる薬は子どもから高齢者まで幅広く使用されています。しかし、本人が使ってはいけないことを知らずに使用しているケースもあります。特に高齢者の方は緑内障や前立腺肥大にかかっている方が多いです。自分の病気でも使って良いか、事前にしっかりと確認しましょう。