ナウゼリンの用法用量
ナウゼリンとは主にドンペリドンを成分とする薬の商品名です。主成分であるドンペリドンがドパミン受容体を抑制し吐き気をおさえる効果を持つため、ナウゼリンも吐き気止めとして消化管運動の改善などに使用されることが多いです。
ナウゼリンにはさまざまな剤形が存在します。それぞれ用法や特徴に違いがあるため、用途や状況に合わせて最適な薬が処方されます。処方された際には医師から説明された用法・用量などを守るようにしてください。
錠剤・OD錠の場合
成人 | 通常、ドンペリドンとして1回10mgを1日3回食前に服用する。 |
小児 |
通常、ドンペリドンとして体重1kgあたり1.0~2.0mgを1日3回食前に分けて服用する。 |
ナウゼリン錠はドンペリドン含有量によりナウゼリン錠5/10と2種類存在します。小児が服用する場合は体重により用量が異なるため、医師から処方された用量をきちんと守りましょう。
また、水なしで服用できる口腔内崩壊錠(OD錠)も5mgと10mがありますが、用法用量は上記と同じになります。
ミナカラお薬辞典:ナウゼリン錠5、ナウゼリン錠10、ナウゼリンOD錠5、ナウゼリンOD錠10
座薬(坐剤)の場合
成人 | 通常、ドンペリドンとして1回60mgを1日2回直腸内に挿入する。 |
小児 | 3才未満の場合、通常ドンペリドンとして1回10mgを1日2~3回直腸内に挿入する。 3才以上の場合、通常ドンペリドンとして1回30mgを1日2~3回直腸内に挿入する。 |
ナウゼリン坐剤はドンペリドンの含有量によって、ナウゼリン坐剤10/30/60と3種類存在します。用法にある通り、成人の場合はナウゼリン坐剤60を、3才以上の場合はナウゼリン坐剤30を、3才未満の場合はナウゼリン坐剤10を使用してください。
ミナカラお薬辞典:ナウゼリン坐剤10、ナウゼリン坐剤30、ナウゼリン坐剤60
ドライシロップの場合
成人 | なし |
小児 |
通常、ドンペリドンとして体重1kgあたり1.0~2.0mgを水に混ぜ、1日3回食前に分けて服用する。 |
ナウゼリンドライシロップは小児の薬で、服用する際に水と混ぜて飲みます。吐き気がひどく液体を飲み込むことが難しい場合は、薬の服用補助ゼリーなどと混ぜると飲み込みやすいでしょう。
ドライシロップの詳しい飲ませ方については以下の記事を参考にしてください。
ドライシロップは薬特有の苦みがないため、そのままで砂糖のような甘味があります。そのため、薬が苦手な子どもでも無理なく服用できることが利点です。
ミナカラお薬辞典:ナウゼリンドライシロップ1%
ナウゼリンの効果と作用時間
ナウゼリンの主な効果は吐き気をおさえることです。そのため、吐き気をともなうさまざまな病気の処置に使用されます。吐き気の根本を治療する薬ではありませんが、嘔吐による脱水症状などを防止できるため、ノロウイルスの吐き気に処方されることなどもあります。
ナウゼリンの効果は、服用する人の年齢によりいくつかの違いがあります。それぞれどのような症状に効果があるのか見ていきましょう。
成人の場合
坐剤
下記疾患および薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、上腹部不快感、胸やけ)
・胃、十二指腸手術後
・抗悪性腫瘍剤投与時錠・OD錠
・慢性胃炎、胃下垂症、胃切除後症候群
・抗悪性腫瘍剤またはレボドパ製剤投与時ナウゼリン坐剤10/ナウゼリン坐剤30/ナウゼリン坐剤60添付文書
ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10添付文書
ナウゼリンOD錠5/ナウゼリンOD錠10添付文書
小児の場合
坐剤
下記疾患および薬剤投与時の消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、腹部膨満、腹痛)
・周期性嘔吐症、乳幼児下痢症、上気道感染症
・抗悪性腫瘍剤投与時錠・OD錠
・周期性嘔吐症、上気道感染症
・抗悪性腫瘍剤投与時ドライシロップ
・周期性嘔吐症、乳幼児下痢症、上気道感染症
・抗悪性腫瘍剤投与時ナウゼリン坐剤10/ナウゼリン坐剤30/ナウゼリン坐剤60添付文書
ナウゼリン錠5/ナウゼリン錠10添付文書
ナウゼリンOD錠5/ナウゼリンOD錠10添付文書
ナウゼリンドライシロップ1%添付文書
小児の場合のみ、下痢の症状への効果があります。ただし下痢に効果があるのは坐剤とドライシロップのみのため注意してください。
また、上気道感染症(いわゆる風邪)が原因の吐き気への効果もあります。成人の場合、錠剤を服用すると慢性胃炎や胃下垂症への効果があります。
さらに、頭痛や片頭痛による吐き気への効果もあります。頭痛による吐き気がひどく頭痛薬の吸収が遅い場合、ナウゼリンを服用すると改善することが多いです。
効果時間の比較
ナウゼリンの効果が出る時間は剤形で違います。坐剤ではゆっくり効き始め、錠剤・OD錠・ドライシロップなどの飲み薬では早く効果が出る傾向があります。飲み薬では、ナウゼリンの有効成分であるドンペリドンがすぐに胃腸へ作用することができるからです。
効果が出る時間 |
使用間隔 |
|
坐剤 |
約1時間〜2時間 |
約7時間〜8時間 |
錠剤・OD錠 | 約30分〜1時間 | 約4時間〜6時間 |
ドライシロップ | 約30分 | 約4時間〜6時間 |
■坐剤
坐剤を使用してから体内で最大濃度になるのは約2時間後です。その後、約7時間かけて半分ずつ減っていきます。そのため、続けて使用する場合は約7時間〜8時間間隔をあけてから使用したほうがいいでしょう。
■錠剤・OD錠
錠剤・OD錠を飲んでから体内で最大濃度になるのは約30分〜1時間後です。最大濃度になった後、約1時間で急速に減少し、それから徐々に減っていきます。約2時間〜3時間はしっかりとした効果が続くので、続けて使用する場合は約4時間〜6時間間隔をあけてから使用したほうがいいでしょう。
■ドライシロップ
ドライシロップを飲んでから体内で最大濃度になるのは約30分後です。最大濃度になった後、約1時間で急速に減少し、それから徐々に減っていきます。他の飲み薬と同様に約2時間〜3時間はしっかりとした効果が続くので、続けて使用する場合は約4時間〜6時間間隔をあけてから使用したほうがいいでしょう。
ナウゼリンの副作用
ナウゼリンの副作用の中で最も多く報告されているのは下痢や嘔吐などの消化器障害です。小児の場合、主な症状は下痢です。
また、座薬を使用した場合は肛門部不快感などを感じることも多くあります。
副作用が起こる確率
服作用が起こる確率について、添付文書に書かれた数値をまとめると以下のようになります。
・成人の場合:錠剤・OD錠使用時は0.9%/坐剤使用時は3.7%
・小児の場合:錠剤・OD錠・ドライシロップ使用時は0.5%/坐剤使用時は0.8%
成人が坐剤を使用した場合は比較的頻繁に副作用が発生しますが、それ以外の場合に副作用が起こることは少ないといえます。
眠気・めまいなどの症状
また、眠気やめまいなどの症状も報告されています。発症する確率は低いですが、服用後の車の運転は避けたほうがいいでしょう。
重大な副作用
発症する確率はまれですが、以下のような重大な副作用も報告されています。服用の際には体の状態をよく観察し、違和感を感じたら医師に相談してください。
症状 | |
アナフィラキシーショック | 発疹、発赤、呼吸困難、顔面浮腫、口唇腫など |
錐体外路症状 | 上肢の伸展、筋硬直など |
その他 | 意識障害、けいれん |
ナウゼリンの使用上の注意
大人から子どもまで使用できるため安全な薬のように思えるナウゼリンですが、使用方法を間違えるとさまざまな危険があります。
服用する人の年齢別の注意やほかの薬との飲み合わせについて、解説していきます。
小児や妊娠中・授乳中の使用について
■小児の使用
どの剤形の場合も一日の摂取量を超えないようにしましょう。また、一度薬を服用してから次に服用するまでは4~6時間は時間を空けてください。
長期の服用も危険です。3歳児以下の乳児の場合、7日以上連続で服用するのは避けてください。
また、ナウゼリンは吐き気を抑えますが、酔い止めではありません。車など乗り物に乗る前に酔い止めとして服用するのは避けましょう。
■成人の使用
二日酔いによる吐き気に使用した場合、アルコールとの飲み合わせで副作用などを起こす危険性があります。二日酔いのときに服用するのは避けてください。
また、ナウゼリンの副作用として眠気があげられます。ナウゼリン服用後に車などの機械を運転すると事故につながります。服用後しばらくは車などの運転は避けてください。
■妊娠中・授乳中の使用
添付文書には妊娠中の使用は原則として禁止と記載されています。医師に妊娠中であることを伝え、別の薬を処方してもらうようにしましょう。
授乳中の服用は問題ありません。プリンペランなどのその他吐き気止めよりも授乳中の安全性は証明されています。心配であれば処方の際に医師に相談し、用量を調節してもらいましょう。
■全年齢共通の注意
錠剤の場合、必ず食前に服用してください。食後に服用するとナウゼリンの効果が弱まる可能性があります。
使用期限についてですが、一般的に薬の使用期限は1~3年程度です。処方された薬はそのときに飲み切り、残ってしまった薬は使わないようにしましょう。
特に座薬の場合、保管場所によっては温度による劣化の危険性があります。保管する場合には冷蔵庫などの涼しい場所に入れ、処方された期間内に使い切ってください。
また、ナウゼリンはどのような原因でも吐き気を抑えてしまうため、吐き気の原因を見逃してしまう危険性があります。
つらい嘔吐ですが、場合によっては体内に入り込んだ異物を吐き出そうという体の正常な反応である可能性もあります。原因の分からない吐き気をナウゼリンで止めることはせずに、一度病院で診察を受けるようにしましょう。
薬との飲み合わせ
ナウゼリンは比較的安全な薬といわれていますが、併用する薬の種類によっては危険な場合もあります。以下の表を参考にしたうえで、何か不安なことがある場合には必ず医師に相談してください。
飲み合わせ | |
プリンペラン | 相互作用はないので、問題ありません。 しかし、併用には効果がない、という意見が一般的です。 |
ガスター | 問題ありません。 |
ブスコパン | ナウゼリンの効果が弱まる可能性があります。 併用する際には一度医師に相談してください。 |
ムコスタ | 問題ありません。 |
ロキソニン | 問題ありません。 |
ドグマチール | 併用に注意する必要があります。 服用する際には一度医師に相談してください。 |
そのほかにも飲み合わせに注意が必要な薬があります。詳しい飲み合わせの注意についてはミナカラ薬辞典を参考にしてください。
アルコールとの飲み合わせ
アルコールとの飲み合わせは副作用を起こしやすくなるなど危険があります。ナウゼリンを服用したあとの飲酒は避けてください。また、飲みすぎや二日酔いの症状にナウゼリンを使用することも危険です。
ナウゼリンに市販薬はあるか?
ナウゼリンなどのドンペリドンを成分とする薬は、現在処方薬およびジェネリック医薬品としてのみ販売されています。
ドンペリドンの市販は認められたため今後市販薬が発売される可能性はありますが、2017年8月現在、市販用の薬を製造しているメーカーはありません。ナウゼリンを服用したい場合は、一度医師の診察を受けたうえで処方してもらってください。
万が一病院へ行く時間が無く、とりあえず吐き気の症状を止めたい場合は五苓散という漢方薬に吐き気止めの効果があります。薬局やドラックストアで市販されているので、病院へ行くまでの代替薬として使用してもよいでしょう。
ナウゼリンとその他吐き気止め薬の違い
ナウゼリン以外にもプリンペランやガスモチンなど吐き気をおさえる薬は存在します。では、ナウゼリンとそれらの薬はどう違うのでしょうか?
■プリンペランとの違い
ナウゼリンとプリンペランでは薬の主成分が異なります。ナウゼリンの主成分はドンペリドン、プリンペランの主成分はメトクロプラミドで、どちらもドパミン受容体を抑制する効果があります。
そしてこの2成分は効果は同じですが、その作用方法に違いがあります。
ナウゼリンの主成分であるドンペリドンは脳には届きにくく、胃腸炎などの炎症や物理的な刺激が原因の吐き気へ効果が見込みやすい一方、プリンペランの主成分であるメトクロプラミドは脳まで届くので、脳腫瘍やうつ病など脳の異常が原因で起こる吐き気への効果が見込めます。
そのため、ナウゼリンは脳での副作用(錐体外路障害)を起こす危険性が少ないという利点があります。
また一般的に、妊娠中の使用については、ナウゼリンよりプリンペランのほうが安全、授乳中はプリンペランよりナウゼリンを使用することが多いです。
■ガスモチンとの違い
ガスモチンの主成分はモサプリドクエン酸という成分で、この成分はドンペリドンと違い、ドパミン受容体に作用しません。モサプリドクエン酸は胃や腸の動きを活発にし、消化を促して吐き気を抑えます。
ドパミン受容体に作用しないので、ガスモチンはナウゼリンよりもさらに副作用の危険が少ない薬といえます。しかし、消化器官が原因でない吐き気の場合、ガスモチンではおさえることができません。
ジェネリック医薬品について
ナウゼリン錠5、ナウゼリン錠10、ナウゼリンドライシロップ1%は現在ジェネリック医薬品の販売があります。それ以外の剤型に関してはジェネリック医薬品の販売はありません。※2017年8月現在
先発薬とジェネリック医薬品の価格比較は以下です。
先発薬 | ジェネリック医薬品 | |
ナウゼリン錠5 | 9.8 | 5.6 |
ナウゼリン錠10 | 15.1 | 5.8 |
ナウゼリンドライシロップ1% | 35.8 | 11.2 |
※ジェネリック医薬品は2017年8月現在最も薬価の低い商品で比較。
まとめ
つらい吐き気をおさえる効果のあるナウゼリン。小児でも飲みやすい工夫がされているなど大変便利な薬ですが、使い方によっては副作用の危険もあります。
服用する際には医師からの用法・用量などの指示をきちんと守り、少しでも異常を感じたら早めに医療機関を受診するようにしてください。