肺炎は日本人の死因第3位であり、特に高齢者においては命に関わるケースもある疾患です。日常生活で感染する肺炎の原因菌は、肺炎球菌がもっとも多いとされており、肺炎球菌ワクチンを接種することは肺炎の予防に非常に効果的と言えます。
ニューモバックスとプレベナーは肺炎などを引き起こす肺炎球菌のワクチンです。
この記事では、主に使われているそれぞれのワクチンについて、ニューモバックスNPとプレベナー13の違いを比較し、併用の可否などについても確認してきましょう。
ニューモバックスとプレベナーの違いを比較
ニューモバックスとプレベナーの違いの比較は以下のとおりです。
ニューモバックスNP | プレベナー13 | |
---|---|---|
効果のある菌の血清型 | 23種類 | 13種類 |
対象年齢 | 2歳以上 | 2か月齢以上6歳未満 65歳以上 |
ワクチンの種類 | 莢膜ポリサッカライドワクチン | 蛋白結合ワクチン |
効果のある菌の種類の違い
ニューモバックスとプレベナーは共に肺炎球菌に対して予防効果のあるワクチンですが、その対象となる肺炎球菌の種類が異なります。
肺炎球菌は莢膜(きょうまく)と呼ばれる細菌本体を守る役割の膜を持っており、この莢膜の性質により90種類以上の肺炎球菌が存在しています。
このうち病気の元になるものが30種類程度とされており、ニューモバックスはこのうち23種類の肺炎球菌に対しての予防効果、プレベナーは13種類の肺炎球菌に対しての予防効果を持っています。
肺炎球菌の血清型 | ニューモバックスNP | プレベナー13 |
---|---|---|
1、3、4、5、6B、7F、9V、14、 |
◯ | ◯ |
2、8、9N、10A、11A、12F、 15B、17F、20、22F、33F |
◯ | |
6A | ◯ |
対象年齢の違い
ニューモバックスとプレベナーは対象年齢や助成(公費)の対象になるかが異なっています。
ニューモバックスの対象年齢は2歳以上であり、65歳から5歳刻みで助成の対象となります。一方プレベナーの対象年齢は2 か月齢以上6歳未満の小児及び65歳以上の高齢者であり、助成の対象となるのは、小児のみです。
助成の対象になるかどうかでかかる費用が大幅に異なるケースもあるため、必ず助成の対象であるか確認してから接種をしましょう。
ワクチンの種類の違い
ニューモバックスとプレベナーは同じ肺炎球菌に対するワクチンですが、そのワクチンの種類が異なっています。
ニューモバックスは莢膜ポリサッカライドワクチン、プレベナーは蛋白結合ワクチンとされています。
ニューモバックスの莢膜ポリサッカライドワクチンとは細菌の莢膜のポリサッカライドと言われる部分を使用したもので、これを人に接種すると肺炎球菌に対する抗体が体の中で作られ、予防効果が期待できます。
一方、プレベナーは蛋白結合ワクチンであり、これはポリサッカライドに蛋白質を結合させたもので、人に接種すると記憶免疫と呼ばれる免疫を得ることができ、強力な予防効果が期待できます。
ニューモバックスとプレベナーの併用
2014年9月にACIP(米国予防接種諮問委員会)よりニューモバックスとプレベナーの併用が推奨されています。併用方法はプレベナーを先に接種し、6〜12ヶ月の間隔を空けてからニューモバックスを接種するというものです1)。ただし、二つのワクチンを接種する間隔は1年以上空けるという内容に修正されています2)。
ニューモバックスとプレベナーを併用すると予防効果が高まる
ニューモバックスとプレベナーを併用するメリットとして、両方のワクチンに共通している血清型の抗体の効果が高まるブースター効果が認められています。その効果は両ワクチンを6ヶ月〜4年以内の間隔で接種することで得られると考えられています3)。
ただし、ニューモバックスとプレベナーの併用は日本人を対象としたデータがあまりないため、高齢者に関しては、まず助成制度のあるニューモバックスの定期接種制度を利用することを日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会は推奨しています4)。
プレベナーは高齢者では助成の対象とならない
ニューモバックスとプレベナーを併用する場合の注意点として、高齢者の場合、プレベナーは助成の対象となりません。任意接種の扱いとなるため、費用が高額に感じることがある点には注意が必要です。
1)Tomczyk S, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014 Sep 19;63(37):822-5.
2)Kobayashi M, et al. MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2015 Sep 4;64(34):944-7.
3)Greenberg RN, et al. Vaccine. 2014 Apr 25;32(20):2364-74.
4)日本感染症学会/日本呼吸器学会 合同員会 https://www.jrs.or.jp/modules/information/index.php?content_id=864