ムコソルバン(成分名:アンブロキソール塩酸塩)は去痰薬
ムコソルバンには肺のサーファクタント(表面活性物質)という物質の分泌を促進する働きがあります。サーファクタントには肺の表面張力を調整する作用があり、サーファクタントが分泌されることにより、気道の痰も排出されやすくなります。
それ以外にも気道液の分泌が促進されたり、気道における線毛運動を活発にする作用があり、痰を出しやすくするのがムコソルバンです。
ムコダインとムコソルバンは併用してもOK
ムコダインとムコソルバンという同じような薬が処方されたけど、一緒に飲んで問題ないのかという疑問を持つ方もいらしゃると思います。
結論としてはこの二剤は併用しても問題ありません。
ムコダインとムコソルバンが一緒に処方された場合は、用法用量を守って使用しましょう。
痰が絡むときや鼻が詰まっているときに、痰や鼻水を出しやすくする去痰薬としてよく使われるのがムコダイン、ムコソルバン、ビソルボンです。
これらの去痰薬の効能・効果や作用の違い、使い分けや併用などについて確認していきます。
ムコダイン、ムコソルバン、ビソルボンの作用の違い
去痰薬として処方されるムコダイン、ムコソルバン、ビソルボンはその作用と目的に少しずつ違いがあります。
まずは薬についている添付文書を元に、それぞれの効能・効果を見ていきましょう。
■ムコダインの効能・効果
○下記疾患の去痰
上気道炎(咽頭炎、喉頭炎)、急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核
○慢性副鼻腔炎の排膿
■ムコソルバンの効能・効果
1. 下記疾患の去痰
急性気管支炎、気管支喘息、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺結核、塵肺症、手術後の喀痰喀出困難
2. 慢性副鼻腔炎の排膿
■ビソルボンの効能・効果
下記疾患の去痰
急性気管支炎、慢性気管支炎、肺結核、塵肺症、手術後
添付文書の内容から分かる通り、ムコダインは上気道炎の去痰に、ムコソルバンは塵肺症や手術後の去痰にも効果があります。
また、ビソルボンは慢性副鼻腔炎や蓄膿症(ちくのうしょう)の排膿には基本的に使用されません。
このように、3つの薬は効能・効果が少しずつ違います。
また、それぞれの成分ですが、ムコダインは「カルボシステイン」、ムコソルバンは「アンブロキソール」、ビソルボンは「ブロムヘキシン」が有効成分であり、効能・効果の違いはそれぞれの成分が痰に対して違う作用を示すことが影響しています。
ムコダインは痰の粘りを下げる
ムコダインは痰の粘りの元となっている物質の分泌を抑え、痰を出しやすくする薬です。
痰の粘りはムチンという、たんぱく質と糖類が結合した成分でできています。
ムコダインは痰に含まれるネバネバ物質ムチンの比率を正常化させる作用、気道内でのムチンの分泌量を減少させる作用などがあり、痰が喉で絡まずに出しやすくなります。
ムコソルバンは気道のすべりを良くする
ムコソルバンは、肺から喉までの気道のすべりを良くすることで痰をスムーズに出しやすくする薬です。
肺の中ではぶどうの房状をした肺胞という組織が、周りに肺サーファクタントという分泌液をまとっています。
肺サーファクタントには肺胞同士がくっつくのを防いだり、肺胞を膨らませるといった役割と、気道粘膜の滑りをよくする役割があります。
ムコソルバンは、この肺サーファクタントの生産を促し、気道の線毛の働きを良くすることで痰のすべりを良くし、気道からスムーズに出しやすくします。
ビソルボンは粘りを溶かす
ビソルボンは気道内の漿液(しょうえき)の分泌を促すことで痰を出しやすくする薬です。
ビソルボンの成分である「ブロムヘキシン」は市販薬にも使われる成分で、痰の粘りの元となっているムチンを溶かす作用があります。
また、漿液という粘性の低い液体の分泌を促す作用もあり、痰に含まれるネバネバの濃度を薄め痰が気道に詰まることを抑えます。
ビソルボンはムチンを溶かす作用、漿液の分泌を促す作用により痰を出しやすくする効果があるのです。
ムコダインとムコソルバンは併用可能
ムコダインとムコソルバンは去痰によく使われる薬ですが、名前や種類が似ているので2つを併用(同時に使用)しても良いのか心配になる人もいるのではないでしょうか。
これまで確認してきた通り、ムコダインとムコソルバンは作用が異なるため、併用しても問題はありません。
そのため、ムコダインとムコソルバンの両方を処方されることもありますが、全く問題ありませんので医師、薬剤師の指示に従い適切に使用するようにしてください。