メトホルミンとは?
メトホルミンは血糖値を下げる薬です。糖尿病の治療に使用される薬で、ビグアナイド系に分類されます。
糖尿病に使われる薬には、ビグアナイド系とスルホニルウレア系があります。ビグアナイド系は、中東原産のマメ科の植物から発見されたグアニジン誘導体から開発された薬でインスリン抵抗性改善薬の一つです。
メトホルミンは、食事療法や運動療法で血糖値が下がらなかった2型糖尿病の方が使用します。
また、スルホニルウレア系の糖尿病薬で治療をして効果がなかった方や、副作用が出てスルホニルウレア系の薬が使えなかった方にも処方されます。
メトホルミンの効果
メトホルミンは、腸から吸収される糖質の量を抑えて血糖値を上げない作用があります。
メトホルミンは、肝臓で糖が生成されることや小腸で糖が吸収されることを抑制したり末梢組織でインスリン感受性を改善したりして血糖値を下げます。
メトホルミンの効果を最大限に得るためには
メトホルミンのような血糖降下剤は、食事療法や運動療法を正しく行った上で利用しないと薬の効果が出ません。
メトホルミンの効果を上げるために、食事療法と運動療法を続けながらメトホルミンを使用してください。
特に、肥満の方は薬の効きが悪いので食事療法と運動療法で肥満を解消しましょう。
メトホルミンの副作用
低血糖に要注意
もっとも注意する副作用は低血糖です。低血糖は血糖値が下がりすぎて脳にエネルギーが不足する症状で、体に力が入らなくなったり意識が薄れたりけいれんが起こったりします。
また、下痢・高熱・おう吐の症状があり体調が悪い場合は、薬が効きすぎてしまい低血糖がおこることがあります。
低血糖の初期症状は、手の震えや体のふらつきです。低血糖の初期症状が起こったら、糖分を含む缶ジュースや缶コーヒーやを摂ることで低血糖を予防することができます。
低血糖が生じると、治まったあとでも数日間は低血糖が再発することがあるので、すぐに予防できるようにブトウ糖ゼリーやペットシュガーなどを持ち歩くようにしましょう。
低血糖をおこさないために、食事は一日三食規則正しく摂ってください。食事の時間が遅くなったり一食抜いたりすると、薬の効果で血糖値が下がりすぎ低血糖をおこしてしまいます。
その他の重い副作用
まれに生じる重大な副作用には、乳酸アシドーシスがあります。乳酸アシドーシスは、血中乳酸値などの上昇や血液pHの低下で生じます。
乳酸アシドーシスの初期症状は、下痢・食欲不振・消化不良・おう吐・腹痛・全身倦怠感・過呼吸などです。これらの症状があらわれた場合には、メトホルミンの使用を中止しすぐに医師の診療を受けてください。
その他の副作用
その他の副作用は、肝機能障害、黄だん、吐き気、おう吐、下痢、便秘、腹部不快感、だるさ、頭痛、筋肉痛、薬によるアレルギー症状などがあります。メトホルミンの使用中にこのような症状があらわれたらすぐに医師に相談してください。
メトホルミンの用法・用量
メトホルミンの用法・用量は成人と小児では異なります。
成人の場合、1日2~3回にわけて食前か食後に飲みます。成人は1日750~1500mgを使用します。
10歳以上の小児の場合、1日2~3回にわけて食前か食後に飲みます。10歳以上の小児は1日500~1500mgを使用します。
メトホルミンは、体の状態によって減量する必要があるため、必ず医師や薬剤師に指示された量を守りましょう。
メトホルミンの使用上の注意
メトホルミンが使用できない方
重い乳酸アシドーシスをおこすことがあるので、乳酸アシドーシスを起こしやすい方や過去に乳酸アシドーシスを起こしたことがある方は、メトホルミンを使用しないでください。重い乳酸アシドーシスで、死亡した例も報告されています。
乳酸アシドーシスとは、血中乳酸値の上昇や血液pHの低下などの病態です。
他に、以下に該当する方もメトホルミンが使用できません。
・重症ケトーシス
・糖尿病性昏睡または前昏睡
・1型糖尿病の方
・重い感染症の方
・手術前後の方
・重い外傷がある方
・栄養不良を起こしている方
・衰弱している方
・脳下垂体機能不全または副腎機能不全の方
・妊婦または妊娠している可能性のある方
・高齢者
・メトホルミンの成分やビグアナイド系薬剤に対して過敏症がある方
メトホルミンの使用に注意する方
食事が不規則な方・食事の摂取が少ない方・激しい運動をする方がメトホルミンを使用すると、低血糖を起こすおそれがあり危険です。メトホルミンを使用する際は、規則正しく食事をしたり運動量を調整するなど低血糖にならないように注意し使用してください。
メトホルミンとの併用に注意する薬
ヨード造影剤を用いてCTなどの検査を行う方は、乳酸アシドーシスをおこすことがあるのでメトホルミンの使用を一時的に中止してください。
ヨード造影剤を使用した方で、メトホルミンの使用を再開していいのは造影剤使用後48時間以上経ってからです。
また、ゲンタマイシンなどのように腎毒性の強い抗生物質もメトホルミンと併用すると乳酸アシドーシスをおこすことがあります。抗生物質を使用する方は、医師に相談しメトホルミンの減量や中止などを行ってください。
他の糖尿病治療薬を使用している方はあらかじめ医師に伝えてください。
まとめ
メトホルミンは血糖値を下げる血糖降下剤で糖尿病の治療に使用します。
メトホルミンのような血糖降下剤は、食事療法や運動療法を正しく行った上で使用しないと効果が出ないため、メトホルミンを飲みはじめてからも食事療法と運動療法は続けましょう。
メトホルミンを使用する人は、薬により副作用の低血糖がおこることがあるため食事を抜いたり食事の時間を遅らせたりしないようにしてください。
また、医師から指示された低血糖症の対策を行い、毎日規則正しい食事をしましょう。