ウテメリンとは?
ウテメリンは、「塩酸リトドリン」を主成分とする子宮収縮抑制薬です。
ウテメリンは切迫早産や切迫流産と診断された場合に処方される薬です。切迫早産は妊娠22週から妊娠37週までの方で早産になりかかっている状態のことで、子宮収縮が頻繁に起こり子宮が開いて赤ちゃんが出てきそうになっていたり、破水していたりする状態のことです。また、切迫流産は妊娠22週未満の方で胎児が子宮に残っていて、流産の手前の状態のことです。
ウテメリンは子宮の収縮を抑えることで、切迫早産や切迫流産が進行することを抑えます。
ウテメリンはいつ使える?
ウテメリンは妊娠16週以降37週未満の人が使います。妊娠5か月未満の人は使用できません。
ウテメリンには、錠剤「ウテメリン錠」と注射薬「ウテメリン注」の2種類があります。比較的軽い症状の場合には、錠剤を1日3回食後に飲みます。緊急性のある場合には入院して点滴で治療します。
ウテメリンの副作用
ウテメリンは、緊張しているときに活躍する交感神経を刺激することにより、睡眠時やリラックスしているときに優位になる副交感神経を抑制し、動悸、手指の震え、吐き気など運動した時のような症状が出ることがあります。錠剤での臨床試験時の副作用の発生頻度は、動悸(2.8%)、手指の震え(0.7%)、吐き気(0.4%)です。
副作用は薬の飲み始めにみられることが多く、身体が薬に慣れてくると症状も落ち着いてきます。服用開始から2~3日程度で副作用はおさまる傾向にありますが、副作用の出始め、症状がひどい場合やおさまらない場合、また不安があれば医師や薬剤師に相談してください。
動悸
ウテメリンを飲み始めると、動悸が起こることがあります。薬の量が多い場合にも、動悸が起こるおそれがあるので、症状が出た場合は医師に相談しましょう。
吐き気・胃痛
ウテメリンを使用中の副作用としての胃の不調のほかに、つわりによる吐き気や胃痛が起こっている場合もあります。
薬の副作用なのか、つわりの症状なのか見極めることが難しい場合は、早めに医師に相談しましょう。
重大な副作用
錠剤の重大な副作用として、横紋筋融解症、汎血球減少、血清カリウム値の低下、高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、新生児腸閉塞があらわれることがあります。
注射剤では、肺水腫、心不全、無顆粒球症、白血球減少、血小板減少、ショック、不整脈、肝機能障害、黄疸、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、胸水、母体の腸閉塞、胎児及び新生児における心不全、新生児心室中隔壁の肥大、新生児低血糖があらわれたとの報告があります。
使用中に気になる症状が出た場合は、医師に相談しましょう。
ウテメリンを使用できない人
下記に当てはまる人は、ウテメリンを使用できません。
1.強度の子宮出血,子かん,前期破水例のうち子宮内感染を合併する症例,常位胎盤早期はく離,子宮内胎児死亡,その他妊娠の継続が危険と判断される患者[妊娠継続が危険と判断される。]
2.重篤な甲状腺機能亢進症の患者[症状が増悪するおそれがある。]
3.重篤な高血圧症の患者[過度の昇圧が起こるおそれがある。]
4.重篤な心疾患の患者[心拍数増加等により症状が増悪するおそれがある。]
5.重篤な糖尿病の患者[過度の血糖上昇が起こるおそれがある。また,糖尿病性ケトアシドーシスがあらわれることもある。]
6.重篤な肺高血圧症の患者[肺水腫が起こるおそれがある。]
7.妊娠16週未満の妊婦(「重要な基本的注意」の項参照)
8.本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
ウテメリン錠5mg 添付文書
ウテメリンの使用上の注意
切迫流産や切迫早産の治療中は、安静にすることが最も大事なので、薬を飲んだ後は30分くらい横になって休みましょう。
服用を忘れたときには、次の服用まで4時間以上あればすぐに服用します。次の服用まで3時間以内のときには、飲み忘れた分は服用しないでください。
β-刺激剤、β-遮断剤を飲んでいる人は、医師に伝えましょう。
以下に該当する病気をもっている方は医師に申告してください。
・甲状腺機能亢進症
・高血圧症
・心疾患
・肺高血圧
・高血糖あるいは肥満等の糖尿病の危険因子を有する方
・糖尿病またはその家族歴を有する方
・カリウム減少性利尿剤を使っている方
・筋緊張性(強直性)ジストロフィーなどの筋疾患、またはその既往歴のある方
ウテメリンの治療はいつまで続ける?
内服薬のウテメリン錠による治療は、胎児の状態が出産に問題ない体重か、早産(妊娠37週以前)にならないか、母体が今出産できる状態かなど、医師の総合的な判断により継続・中止します。
出産間近となる妊娠37週まで使う場合もあります。
一方、注射薬のウテメリン注は、早産・流産が起こりそうな緊急時に使うものです。
添付文書による用法は以下の通りです。
子宮収縮の抑制後は症状を観察しながら漸次減量し、毎分50μg以下の速度を維持して収縮の再発が見られないことが確認された場合には投与を中止すること。
ウテメリン錠5mg 添付文書
ウテメリンで張り返しが起こる?
妊娠中に起こる「張り返し」とは、ウテメリンなどの子宮収縮抑制薬をやめることで起こる「お腹の張り」のことを指します。
お腹の張りには、軽い張りから強い張りまで、症状はさまざまです。
ウテメリンをやめると張り返しが起こる?
ウテメリンによる治療中は、陣痛とお腹の張りを止めている状態です。
そんななか、内服や点滴によるウテメリンの治療をやめると、再び張りが強くなってしまう「張り返し」が起こることがあります。
張り返しは、陣痛とは違うので、そのままにしても治ることが大部分ですが、ウテメリンの中止により異変を感じたら、すぐに医師に相談しましょう。
ウテメリンを飲んでも張りがおさまらない場合は?
ウテメリンの内服治療を開始してもお腹の張りが解消されない人は、医師に相談のもと薬を飲む頻度を1日3回まで増やし、安静にして様子をみます。
それでも効かない場合は、入院して点滴治療に切り替えるなど治療が変わります。ウテメリン錠を飲んでいても張り返しが気になるときは、医師に相談しましょう。
ウテメリンのジェネリック
ウテメリンには、同じ成分のジェネリック医薬品として「ルテオニン」や「ウテロン」などがあります。
いずれのジェネリックも、ウテメリン先発薬と同等の薬効、剤形、規格です。希望する方は薬剤師に相談してみましょう。
製品名(製造会社) |
薬価(円) |
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先発薬 | ウテメリン錠5mg(キッセイ) | 106.90 |
ジェネリック | ルテオニン錠5mg(あすか製薬) | 68.20 |
ジェネリック |
ウテロン錠5mg(サンド) |
15.50 |
※2017年8月現在の薬価
おわりに
切迫流産や早産の治療中は、母体に負担をかけないよう安静に過ごす必要があります。たとえ切迫流産と診断されても、その後元気な赤ちゃんを産んだ人が多くいます。
妊娠中は不安が大きくなりがちですが、パートナーや周囲の人に協力してもらいながら過ごしましょう。
出典:独立行政法人医薬品医療機器総合機構